心臓に良くない?

バイアグラによる悪影響があるのかを多角的に検討



バイアグラの誤解」

直接的に心臓に良くないというのは誤解もあります


<当ページの項目リスト>

  1. 【バイアグラは心臓に良くない?】
  2. 【外国市販後有害事象】
  3. 【性行為自体が不適当な場合】
  4. 【硝酸剤・一酸化窒素供与剤との併用】
  5. 【抗不整脈薬との併用】
  6. 【バイアグラは本当に心臓に良くないのか?】

1.【バイアグラは心臓に良くない?】

「バイアグラは心臓に良くない?」 本剤は実は心臓に対する直接的な悪い影響があるというよりも、 心臓系疾患に対する薬剤との飲み合わせが悪かったり、 もともとの心機能が性行為に耐え切れない状態において使用が出来無いといった 間接的に心臓に良くないという話が主体で、 処方箋医薬品の中でも、さほど心臓に負担がある薬剤と言えるほどの影響力は無いように思われます。 その一方でバイアグラが持つ血管内皮機能障害に対する改善機能は、 心臓を中心とした循環動態にプラスの側面がある可能性も示唆されています。 つまり本剤には「心臓に良くない」だけでなくポジティブな要素もあるようです。


バイアグラというキーワードはすでにED改善薬と同義ともいえる非常に一般的な言葉ですが、 この言葉を聞いて連想するものは、人によって千差万別です。 ただそうした連想の中で「危険な薬」「副作用が多く体に良くない」といったネガティブなイメージは、 バイアグラが本邦で発売になって18年経過した今も濃厚です。 こうしたネガティブなイメージの中で一つ非常に具体性があるものが在り、 それは「バイアグラは心臓に良くない」という印象です。 当新宿ライフクリニックにいらっしゃる初診患者様の中にも、 本剤が心臓に負担があるのかを心配されている方が少なからずいらっしゃいます。


漠然としたバイアグラのネガティブなイメージの中で、 具体的な臓器名が出てくるのは心臓くらいだと思います。 基本、薬剤の代謝は人間の体の中では腎臓と肝臓が主体となって行っており、 薬剤に付随する添付文書を拝見すると、多くの薬剤に腎機能障害・肝機能障害に関連した文言が乗っており、 本剤も重度肝機能障害者にはその使用は禁忌指定という記載がありますが、 患者様からお伺いする本剤へのご心配の中で 「バイアグラは肝臓に良くないんですよね?」といった内容を実は全く聞いた無いです。


ただ医師として、バイアグラを客観的に検討すると、 さほど心臓に直接的な「良くない」影響を及ぼす薬剤とも思えず、 つまり生来健康な方がバイアグラの服用だけで心臓に悪い影響が及び、 結果として障害が残ると言った、 本質的な心臓への良くない影響を持つ薬剤とは考えにくいと思われます。
それでは何ゆえに、「バイアグラは心臓に良くない」 という直接的なイメージが一般のユーザーについたのでしょうか? そこには本剤と心臓との二次的な問題が主に影響している可能性があります。 本稿ではこうした「バイアグラは心臓に良くない?」をメインテーマに、 本剤とこの心臓の関わりに関して項目を細分化し多角的に検討しております。 どうぞご参照くださいませ。


2.【外国市販後有害事象】

「バイアグラは心臓に良くない?」というテーマに関連した外国市販後有害事象があります。 実は本剤が心臓に悪いという印象が大きく拡散したのは、 この外国市販後有害事象が端緒なのかとも思われるインパクトのある内容です。
この外国市販後有害事象は外国におけるバイアグラ市販後の自発報告に関してのものです。 なにせ自発報告になるので、 その出来事と本剤に関しての因果関係は不明なものも内包されているようです。
具体的な内容を一部抜粋すると「心原性突然死、心筋梗塞、心室性不整脈、脳出血、一過性脳虚血発作、 高血圧などの重篤な心血管系障害が本剤投与後に発現している。 そしてこれらの多くが心血管系のリスクファクターをすでに有している患者であった。」 と外国市販後有害事象に報告されています。
これは非常にインパクトのある内容と思われ、これを読んでから 「さあ、バイアグラを使ってみるか!」というポジティブな気持ちになれる方は希少と思われます。 まるでこれを読んでいるとバイアグラによって忽然と心筋梗塞や心室性不整脈が出現したように感じられます。 つまりこの報告は読んだ人に「バイアグラは直接的に心臓に良くない」という印象を与えます。


しかしここで、検討を挟む余地があります。心筋梗塞はバイアグラによって発現し、 進行するものなのでしょうか?心筋梗塞はほとんどのケースにおいては、 動脈硬化の長期間にわたる進行によって、この臓器を栄養する冠動脈が塞がっていき、 それがほとんどもしくは完全に詰まった状態になって発症するものです。
つまり心筋梗塞は動脈硬化を引き起こす疾患である所の糖尿病・高血圧・肥満などによる長期的な影響が真の原因です。 そして心筋梗塞が発症するに至る最後のひと押しには、 労作すなわち運動的な心負担や自律神経の興奮に伴う血圧・脈拍の上昇が関わる場合が多く、 この労作と自律神経の興奮を伴う日常の中での行為と言えば、代表的には性行為がその一つです。
つまり心筋梗塞のリスクファクターが大きい方が、 性行為を契機として心筋梗塞の発症に至る事が比較的多いという事です。 そしてEDという疾患は実は心筋梗塞を動脈硬化性に発症するその過程で、 心筋梗塞の前に発症しやすい「警告疾患」とも言われています。 つまり動脈硬化が進行されている方は、心筋梗塞などの発症の前にEDを発症している事が多く、 また、それに対してバイアグラが処方されている事も非常に有りうる状況と思われます。


・「仮に糖尿病・高血圧などの生活習慣病のコントロールが悪く、 動脈硬化がどんどん進行されている方がいたとします。 またこの方はEDを発症されたのでバイアグラが処方されていたとします。 動脈硬化が進行し、ほとんど冠動脈が詰まりかけている状態である日、 本剤を飲んで性行為をしました。性行為に対する神経的な興奮、ならび にセックスが持つ労作的影響は彼の血圧・脈拍を上昇させ、 ついには心筋梗塞の発症に至りました。」 この内容をしっかりと聞くと、 バイアグラが心臓に直接的に悪い影響を与えたという印象はかなり薄まります。 その一方でこの内容をダイジェストに濃縮してみると
・「バイアグラを飲んでいるときに心筋梗塞が発症しました。」という表現に出来ます。 このダイジェストだけを聞くと、 バイアグラが心臓に直接的に悪い影響を与えたという印象が強まります。 しかしここでとても重要なのは、 事実として本剤には急速に動脈硬化を進行させると言った作用は確認されては無い事です。


この外国市販後有害事象に関して「バイアグラは心臓に良くない?」を検証するにあたって、 2つの重要なポイントがあります。 一つは本報告におけるバイアグラとそのエピソードには因果関係が不明なものが内包されているという点、 そして、もう一つはこれらのエピソードを発現した患者の多くが心血管系リスクファクター、 つまり心筋梗塞でいう所のコントロールの悪い糖尿病や高血圧などを持っていたという点です。 これらのポイントを中心に検証を進めると「バイアグラは直接的に心臓に良くない」 という意見は確定的なものでは無い可能性が大きくなります。
バイアグラの用途は非常に限定的です。前提として性行為の時にその使用は集中します。 そして性行為自体にはある意味で心臓への影響が元々有ります。 バイアグラの存在が無い古来より「腹上死」という言葉が有りますが、 この「腹上死」は心筋梗塞などの心臓突然死が主体と推察されているものです。
つまりまとめますと、この外国市販後有害事象の内容においては、 性行為自体の心血管障害へのリスクがイメージ的に、 バイアグラのリスクに上乗せされている可能性があり、 それが本剤が「心臓に良くない」という印象を深めている可能性があるのです。


3.【性行為事態が不適当な場合】

「バイアグラは心臓に良くない?」というテーマにおける「性行為自体が不適当な場合」についてですが、 実はバイアグラの禁忌指定項目には、 「心血管障害を有するなど性行為が不適当と考えらえる患者」が含まれており、 すなわちこうした患者さんはバイアグラの使用禁忌として規定されています。


「心血管障害があって性行為が不適当」とはどういった意味なのでしょうか? これは前項の【外国市販後有害事象】の内容と重複しますが、 セックスは実は心臓にある程度の負担を与える行為でもあり、ある意味で心臓に良くない側面もあります。 このセックスによる心臓への負担とは、セックスの運動的側面と自律神経自体の興奮による、 脈拍や血圧の上昇です。 心血管障害つまり心筋梗塞や狭心症の素因が濃厚な方は、 こうした脈拍や血圧の上昇が最終的なこれら疾患の発症契機になる場合があるので、 「性行為が不適当」つまり心臓に良くないという事になるのです。
解釈の仕方は色々ありますが、この禁忌指定項目の 「心血管障害を有するなど性行為が不適当と考えらえる患者」 は、性行為が心筋梗塞や狭心症発症の契機になりうるので、 性行為の禁止を指導されている患者さんであり、 バイアグラがセックスにのみ使用される薬剤であるという前提においては、 性行為の禁止という話に連動してバイアグラが禁忌指定になっているとも理解できます。 つまり「元々ある程度以上、心臓が悪い方はセックスおよびバイアグラを使用はできません」 という指示とも解釈できます。


4.【硝酸剤・一酸化窒素供与剤との併用】

「バイアグラは心臓に良くない?」というテーマにおける、 硝酸剤・一酸化窒素供与剤(いわゆる「ニトロ」)と本剤の併用についてですが、 実はこの硝酸剤・一酸化窒素供与剤との併用もまたバイアグラの代表的な禁忌指定項目の一つです。


この硝酸剤・一酸化窒素供与剤とはいったい何でしょうか? これは心臓を栄養する重要な血管である冠動脈を広げる事を主務とした血管拡張薬のシリーズの事です。 よく通称「ニトロ」と呼ばれている薬なのですが、これは主に狭心症・心筋梗塞などの「心臓の良くない人」 に使用されます。 「狭心症や心筋梗塞に使用される薬とバイアグラは相性が良くない=すなわちバイアグラは心臓に良くない」 と推察されがちですが、実はこの硝酸剤とバイアグラは遠い親戚のようなものなので、 これらはcGMPという物質を介して血管拡張に働く薬剤どうしなのです。 問題はこれらを併用すると血管拡張効果が行き過ぎて血圧が異常に低下してしまう所にあり、 硝酸剤を使用する状況は主に狭心症や心筋梗塞のコントロールが主体なので、 バイアグラと硝酸剤との併用によって血圧が下がりすぎてしまうと、 さらに冠動脈をめぐる血液量が減少し、これらの疾患の悪化を招いてしまう事が想定されます。
それがゆえに狭心症や心筋梗塞に対する薬剤である、 硝酸剤・一酸化窒素供与剤とバイアグラは絶対に併用が出来無い関係なのです。 この併用禁忌に関してはバイアグラが心臓に良くないというより、 純粋に硝酸剤とバイアグラの相性が決定的に良くないという問題が実は主体です。


5.【抗不整脈薬との併用】

「バイアグラ 心臓に良くない?」というテーマにおける、 抗不整脈と本剤との併用に関してですが、 実はバイアグラの禁忌指定項目には抗不整脈薬である塩酸アミオダロンとの併用も指定されています。 抗不整脈薬は心臓の薬と言えますので、これと併用が出来無いという事は、 バイアグラは心臓(不整脈)に良くないのだろうか?という連想が働きやすいと思われますが、 実はこれも【硝酸剤・一酸化窒素供与剤との併用】 に上述させて頂いた状況と同様に、純粋に薬どうしの相性に主要な問題があるのです。 この抗不整脈薬とバイアグラとの併用が相性が良くない理由は、 これらの併用による薬理的な相乗効果が主因であって、 本剤が直接的に心臓に良くないからという理由ではありません。


それでは何故にバイアグラと塩酸アミオダロンは併用が禁止されているのでしょうか? それはこのバイアグラと塩酸アミオダロンを併用した場合に、 心電図上で補正QT時間の延長が発生し得るからなのです。 この補正QT時間とは心電図波形の一部の時間的長さを補正して表現したものなのですが、 これが延長すると多形性心室頻拍と呼ばれる危険な不整脈を発症する可能性があるのです。
しかし実の所、塩酸アミオダロン自体にもともと補正QT時間延長の副作用があるので、 この状況を発現し得る主役はバイアグラというよりも塩酸アミオダロンの方であり、 バイアグラが直接的に心臓に良くないからこうした状況が発生する訳では無いのです。


6.【バイアグラは本当に心臓に良くないのか?】

以上 「バイアグラは心臓に良くない?」というテーマで4項目にわたり、 本当にバイアグラが心臓に直接的に良くないのかを多角的に検討してみました。 いずれも解釈してみると、 バイアグラが直接的に心臓に良くない作用をもって心臓を負担を与えるというよりも、 二次的な、つまり心疾患用の薬剤との併用が良くないという状況であったり、 もともと心臓に問題があるがゆえに性行為を禁じられているので本剤を使用できなかったり、 動脈硬化のリスクファクターがもともと高い方において性行為時に心臓血管病変が発症したなど、 間接的に心臓に良くないという内容が主体です。 つまり、「心臓に良くない」というより、 「心臓に関わるものに関して良くない事が多い」と言う方が正確と思われます。 しかし世間の認識としては、 直接的に本剤が心臓に良くない作用を持っているというニュアンスが主体です。 それはあたかも「健康な人がバイアグラだけを理由に心臓を害する事がある」と言った感じです。 こうしたある意味での誤解は、 上記のような間接的にバイアグラが心臓に良くないというテーマの多さ自体が、 要因になっているとも思われます。


バイアグラの禁忌指定項目内には心臓系の2系統の薬剤との併用、 ならびに性行為が禁じられている心血管障害罹病者など、 複数の心臓がらみのカテゴリーが入っているので、 これを見た場合のざっくりとした印象として「バイアグラは心臓に良くないんだなあ」 という印象を受けても仕方が無いとも思われます。 ただこれらを一つ一つをじっくりと検証すると、 少なくとも元々健康な男性がバイアグラを使用する事によって、 それのみを理由に心臓を害するような事は無いように思われ、 もともとの素因や飲んでいる薬など複合的要因の中で本剤が心臓に関わって来る事がわかります。


みなさまもバイアグラ処方の際は、主治医にこうした複合的要因をよく検証してもらい、 ED専門クリニックにて 正規品のバイアグラ を処方してもらってください。 こうした要因の検証をしないでバイアグラを飲む事自体が最も危険とも思われます。
ちなみにバイアグラは、「心臓に良くない?」という話だけでなく「心臓に良い」 という作用の検証もされています。 バイアグラのようなPDE5阻害薬は血管内皮機能障害という動脈硬化の原初にして、 増悪要因たる血管の機能低下を改善させる作用があると報告されています。 ゆえにこれらの連用は動脈硬化の改善や予防に働く可能性があり、 現在バイアグラのこうした側面に関しての研究も進められています。 当然、動脈硬化は「心臓に良くない」のでこれをもし改善できたとしたら、 それは本剤の心臓へのポジティブな効果として認識する事ができるものです。
また最近の報告によるとインスリン抵抗性という糖尿病の発症・増悪因子の一つに関して、 バイアグラなどのPDE5阻害薬が、それを改善させる可能性が確認されたとの事です。 糖尿病は当然心臓に良くない影響を動脈硬化を介して及ぼしますので、 これのコントロールの改善も心臓へのポジティブな効果として認識する事ができます。
こうした「心臓に良くない?」という検証の話だけでなく、 ポジティブな内容の検証がどんどん増加し、 さらに一般性を持つようになれば、 世間における「バイアグラが心臓に良くない」という一方的な認識を是正できるようになるかもしれません。


新宿ライフクリニック はこうした本剤が心臓に良くないのか?など様々な患者様の疑問に回答しております。 ぜひとも当院にご来院頂いて「バイアグラは心臓に良くないの?」 と言った疑問をぶつけてください!