ED薬が効きにくい病気が有ります。 EDは様々な原因で引き起こされますが、その原因疾患の中には勃起改善薬の効果が出にくい病気も有ります。
905例のバイアグラ ・ レビトラ ・ シアリス、いずれかのED薬を使用している患者さんにて、 その改善効果を検討した研究があります。
この研究では905例の内20から30%に勃起改善薬の効果が出なかったと報告しており、 これらED薬が効きにくかった症例は、その原因疾患をおおよそ6つの病態に分類できたとの事です。
その6つの病態とは 『糖尿病』 『高血圧』 『脂質異常症』 『骨盤内手術後』 『うつ病』 『前立腺肥大症』 になります。 本稿ではこれらED薬が効きにくい病気に関して、 その理由などを添えて日本性機能学会専門医が解説させて頂いております。 宜しければご一読下さいませ。
<当ページの項目リスト>
勃起改善薬の効果が出にくい6つの病態、最初の解説は糖尿病に関してです。
糖尿病は元々、他の勃起不全の原因疾患に比べて、ED薬が効きにくいと認識されている病気です。 何故、糖尿病の患者さんにED薬の効果が出にくいのかと言うと、 これはおそらく糖尿病が 『血管内皮機能障害』 と 『自律神経障害』 と二つのED発症システムを持っている事が影響しているものと思われます。
勃起改善薬は血管の拡張薬なので、血管内皮機能障害を改善する力はあっても、 自律神経障害など神経の問題を改善させる力は無いので、 糖尿病による自律神経障害が主体となっているEDに対しては、 ED薬の効果が出にくくなるのだと推察されます。
ちなみに血糖コントロールが良い糖尿病では、バイアグラの有効率が高くなるとも報告されていますので、 現在、糖尿病をお持ちで、ED薬が効きにくい方は、 まずは生活習慣改善による自然な血糖改善を目指されるのが望ましいと思われます。
ED薬が効きにくい6つの病気、次の解説は高血圧に関してです。
高血圧は血管内皮機能障害をベースとしたEDを発症させてしまう病態ですが、 元々、高血圧によるEDは重症化しやすい傾向があり、 ある研究では高血圧にEDを伴う症例の45.2%、つまり約半分が重症のEDだったと報告しています。
血管内皮機能障害を原因とするEDは、勃起改善薬が比較的効果を示しやすい病態と言えますが、 重症のEDの場合は、ED薬の効果がその症状の重さに負けてしまう事があります。
高血圧において、勃起改善薬の効果が出にくいケースが多く見られるのは、 この重症のEDが潜在的に多いからだと推察されます。
勃起改善薬が効きにくい6つの病態、次の解説は脂質異常症に関してです。
脂質異常症もまた、血管内皮機能障害をベースとしたEDを発症させてしまう病気ですが、 脂質異常症自体は一部の遺伝性が濃厚なものを除いて、 その殆どが肥満・運動不足などを原因として発症しています。
本来、血管内皮機能障害を原因とする勃起不全症はED薬が効果を示しやすい病態です。 しかし脂質異常症の場合は、肥満・運動不足など、他の独立したEDリスクファクターを合併してしまう事が多く、 こうした脂質異常症に複数のED原因が重複する 『多重リスク』 状態が、 勃起改善薬の効果が出にくい体の環境を作り上げているものと推察されます。
肥満・運動不足は他の勃起不全症の原因に比べて、生活上の工夫で改善しやすい事から、 この多重リスク状態は比較的是正しやすいと思われ、 こうした脂質異常症をベースとしたEDにて、 勃起改善薬が効きにくい方は、まずは肥満・運動不足の解消をぜひ検討してみて下さい。
ED薬の効果が出にくい6つの病態、次の解説は骨盤内手術に関してです。
前立腺や大腸などに発生したお病気で、骨盤内での手術処置に至ると、 骨盤内という限定された領域で行われる処置によって、 勃起に関わる神経などが障害されてしまう事があり、 その結果、重症のEDが引き起こされてしまう事が有ります。
高血圧や脂質異常症などが上記の通り、血管の機能的問題からEDが引き起こされるのに対して、 手術的な神経の障害などは物理的な勃起システムの損壊を原因としたEDなので、 主作用が血管の機能的改善である勃起改善薬はやはり効きにくいです。
このように骨盤内手術で発生するEDは、 前提としてED薬がかなり効きにくい 『難治性』 のEDになる事があるため、 これらの手術には、特別に勃起に関連した神経を温存する術式なども考慮されます。
勃起改善薬の効果が出にくい6つの病態、次の解説はうつ病に関してです。
うつ病に関しては、気分障害が慢性化する事で脳内の代謝機能の障害が発生し、 これが脳の内側視索前野、また扁桃体などの 『性行動の中枢』 に悪影響を与える事で、 心因性EDの発症に至るものと思われます。
こうした気分障害単独による心因性EDは、勃起改善薬の効果が比較的出やすいものと思われます。 しかし、うつ病の場合は、抗うつ薬など薬剤性EDの原因となり得る精神神経用薬を使用している頻度が高いので、 心因性EDに薬剤性EDを合併している事が多いです。 このような複数のEDが重複する 『多重リスク』 状態が、 うつ病にてED薬の効果が出にくい体の環境を作り上げているものと思われます。
うつ病をベースとしたEDにて勃起改善薬が効きにくい方は、 メンタルヘルスの主治医に、勃起への影響の少ない抗うつ薬などを検討してもらうのも望ましいかと思われます。 ちなみに自己判断による抗うつ薬の服薬中断は大変キケンですので、 決してされませんよう強く御願い申し上げます。
ED薬が効きにくい6つの病気、最後の解説は前立腺肥大症に関してです。
前立腺肥大症は、排尿障害などの下部尿路症状から、交感神経の活動亢進や骨盤内血行の悪化などが発生し勃起不全の発症に至りますが、 元々、前立腺肥大症が加齢性に発症しやすい病気なので、 前立腺肥大症の方は、前立腺肥大と加齢という二つの重複するED原因を所持している人が多く、 こうした複数のEDが重複する 『多重リスク』 状態が、 ED薬が効きにくい体の環境を作り出しているものと推察されます。
加齢は改善出来ませんので、前立腺肥大症に伴うEDにて勃起改善薬の効果が出にくい方は、 前立腺肥大症にともなう下部尿路症状をキチンとコントロールされる事をお勧めいたします。 こうしたご相談は泌尿器科が望ましいでしょう。
以上、ED薬が効きにくい6つの病気に関して、 何故にこれらの病態で勃起改善薬の効果が出にくいのかをそれぞれ解説させて頂きました。
こうした病態の中には生活習慣改善など生活上の工夫で、 勃起改善薬の効果を改善させられるものも有ります。 生活習慣改善はあまり難しく考えず、 ご本人がやりやすいと感じるものからトライして見ましょう。
(記載:新宿ライフクリニック-日本性機能学会専門医:須田隆興、最終確認日:2020-12-02)
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