『怪我によるED.交通事故やスポーツ事故による勃起不全を専門医が解説』

交通事故による怪我もEDの原因になる事が有ります

交通事故やスポーツ外傷などによる大きなケガは様々な後遺症を発生させ、 そうした後遺症の中にはEDも有ります。 また外傷による、部分的な動脈や神経の損傷もインポテンツの原因になる事が有り、 大きな事故でなくとも、勃起不全が発生するケースは少なくは有りません。


こうしたインポテンツの本質的な問題は、改善が難しい事です。 バイアグラなどのPDE5阻害薬があまり効果を示さないケースも多く、 性機能的観点から見ても、怪我によるEDは予防的対策がとても重要です。


本稿ではこうした怪我によるEDに関して日本性機能学会専門医が解説をしております。


<当ページのもくじ>

  1. 【EDはどんな事故で発生するの?】
  2. 【勃起不全を起こすのはどんな怪我?】
  3. 【動脈の部分的な損傷はどう影響する?】
  4. 【なにより予防策が大切です】

1.【EDはどんな事故で発生するの?】

『事故の怪我から発生するED』 と聞くと不思議に思われる方もいるかも知れません。 このお病気はイメージとしては加齢現象、 つまり年齢を重ねる事で発症するという印象が強いのではないかと思われます。


あとは糖尿病や高血圧など生活習慣病の合併症として発症するという印象も有るのではないかと思われ、 これは、糖尿病や高血圧の患者人口が多いために、 そうしたインフォメーションを受ける機会が多いからだと思われます。


しかし勃起不全は事故による怪我でも発症する事が有ります。 こうした状態は 『外傷』 として日本性機能学会が指定するリスクファクターにも内包されています。


こうしたケガの原因になるアクシデントの例を挙げますと、 まず筆頭としては 『交通事故』 が有ります。 交通事故は多発外傷と言って、全身に広範なケガを引き起こす事が多く、 その結果として引き起こされる体の機能障害にはインポテンツが含まれる事が有ります。


特に自転車やオートバイなどの運転手は、 車の運転手と違い肉体を守るもの (車のフレーム、エアバック、シートベルトなど) が少ないので、より重症な機能障害が危惧されます。


また他のアクシデントの例としては 『スポーツ』 によるものが比較的多いです。 特にラグビーなど、選手同士の接触が前提で、かつ防具が少ないものは、 受傷契機が多いと言えます。


後は 『高所作業』 を前提とした建築関係などの業務は転落などのアクシデントが危惧され、 こうした受傷の際も、多発する後遺症の中にインポテンツが含まれる事が有ります。


こうした事故に伴う損傷から発生するEDには大きな問題があり、 これらは前提として改善が難しい傾向が有ります。 怪我による物理的な損傷で発生した場合、 加齢などを原因として発生したケースなどに比較すると、 シルデナフィルなどのPDE5阻害薬が効きにくい傾向は否めません。


しかし後述しておりますが、同じ勃起不全の原因であっても 『加齢』 を避ける事は誰しも出来ませんが、 その一方、交通事故やスポーツなどによる 『怪我』 の場合は様々な予防策を取る事ができます。 これはとても大きく、かつ大切な違いです。


2.【勃起不全を起こすのはどんな怪我?】

交通事故やスポーツ外傷、高所作業における転落など、 後遺症としてインポテンツを伴いうるアクシデントに関して記載させて頂きましたが、 こうした事故の内、どのようなケガがEDの発症に影響するのでしょう?


『ペニス自体』 への損傷以外には、 基本的には勃起に関連する 『神経』 、そして 『血管』 の損傷が、 その発症には関与します。


勃起は脳・脊髄などの中枢神経の指示によって、数多くの自律神経が、 ペニスに関連した無数の血管の動きをコントロールする事で発生します。 この脳からペニスに至るシステムを構成する何れの神経・血管の損傷であっても、 インポテンツの原因になる可能性が有ります。 つまりこれらの神経・血管の損傷を含むものが、 『勃起不全発症に影響する怪我』 と言えます。


特にこうしたものの中で脊髄のケガである 『脊髄損傷』 はEDを引き起こす可能性が非常に高く、 これは脊髄が体の神経のいわば大通りである事に起因してます。


また交通事故や転落などによる多発外傷に伴いやすい 『骨盤骨折』 など 骨盤領域の怪我は、この領域に勃起関連の細かい神経や血管などの多くが含まれる事もあって、 EDを引き起こす可能性が高いです。


むろん勃起不全はこうした大きな外傷でなくとも発症する可能性があり、 例えば競技用自転車の細いサドルが股間から、ペニスに関連した血管や神経を 慢性的に圧迫し続ける事でインポテンツを発症しうると警鐘を鳴らす研究者もいます。


大きな怪我に比べて、こうした 『部分的な動脈の損傷』 は、 潜在化しやすく、原因として見つけにくい傾向が有ります。


3.【動脈の部分的な損傷はどう影響する?】

EDの原因として 『部分的な動脈の損傷』 がやっかいなのは、 一つ潜在化しやすい傾向があるから、と申し上げましたが、 実は、こうした状態には他にも問題があって、 それは、たとえ血管の機能が回復したとしても、 インポテンツ症状が継続しやすい所になります。


ラットによる動物実験にて、部分的な動脈損傷の影響を見たものが有り、 これは部分的に動脈の流れを障害する事で、 勃起不全の主体的な発症ロジックである、血管内皮機能障害を人工的に再現しようとしたものです。


動脈の部分的な障害を人工的に起こす事で、ラットには血管内皮機能障害とEDが発生しました。 そしてそこから時間を置くことで、段々と血管内皮機能障害は改善して行きました。 ところがそれに比例すると思われたEDの改善が思うように進まず、結果としてインポテンツ症状が継続したとの事です。


この事は部分的な動脈の損傷が、血管内皮機能障害や血流障害以外にも、 勃起不全に関連した発症ロジックを持っている可能性を示唆しました。 また逆説的には、こうした部分的な動脈の損傷を伴う怪我の予防は、 EDの発症予防にとって、とても重要である事が印象づけられたのです。


4.【なにより予防策が大切です】

交通事故やスポーツ、転落などによる 『大きな怪我』 にしても、 慢性的な圧迫などによる部分的な動脈の損傷など 『小さな怪我』 にしても、 これらに関連して現われるEDは、改善が難しい事や長期化しやすい傾向がある事などを解説させて頂きました。


つまり端的には事故などの怪我によるEDは 『引き起こしてからの改善』 が難しいという事です。 しかし、他の勃起不全の原因である、 『加齢』 や 『神経疾患』 などに比べれば、 こうしたアクシデントは予防策を取る事ができます。


交通事故に関しては、日頃より交通ルールを遵守しつつ、気をつけて過ごすのは前提として、 現在、警視庁ではオートバイ運転の際には、プロテクターの装着を強く推奨していますが、 こうした防具は、事故の際のダメージを大きく軽減しますので、とても有効な予防策と言えます。


自転車に関してもそうです。股間を圧迫しないタイプの競技用自転車のサドルを利用したり、 また安全性が認められているヘルメットをきちんと装着する事は有効な予防策です。


スポーツに関しては、ヘッドギアやファウルカップなどプロテクターを適切に装着する事、 また高所作業における転落に関しては安全帯の適切な使用などが有効な予防策になります。


ただ、こうした安全性を高めるギアは、平常時には面倒で億劫なものです。 最初はきちんと装着していても、慣れるに従い、 ついつい真面目に使用しなくなる事が有るかと存じます


予防策をとらずに、大きな事故を経験された方は 「あの時にきちんとしていれば・・・」 と必ず後悔します。 安全性を高めるギアを適切に利用する事と同じように大切なのは、 平時の安全策に対する面倒さや億劫な気持ちをどのように制御するか?なのかも知れません。
(記載:新宿ライフクリニック-日本性機能学会専門医:須田隆興、最終確認日:2019-03-20)

日本性機能学会専門医証
※日本性機能学会について詳しくはこちら
新宿ライフクリニック院内看板