眼圧に対するED治療薬の安全性



緑内障とバイアグラ・レビトラ・シアリス

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緑内障glaucomaは、本邦における中途失明(生後に発生した失明)の最大の原因疾患です。
有効なED治療薬であるバイアグラ・レビトラシアリス の使用が、本疾患患者において安全なのか、御心配されている方も多いかと存じます。 こちらでは、バイアグラ・レビトラ・シアリスなどのED治療薬と、緑内障と眼圧の関係について、私見を交え、 報告されているものを纏めました。
緑内障に罹患されている方でバイアグラ・レビトラ・シアリスの使用を検討されている方、 もしくは、現在使用中の方は是非ご参考下さい。


【緑内障患者におけるバイアグラ・レビトラ・シアリス使用】
緑内障は、上述したように、本邦最大の失明原因疾患であり、 大規模疫学報告である”多治見スタディ”によると、40歳以上の20人に1人が罹患しているとされています。
2000年の統計調査上では、緑内障の潜在的患者数は400万人とも言われており、 これは、日本の総人口の、おおよそ30人に1人が緑内障という計算になります。
緑内障は、その膨大な患者数から国民病とも言えます。 さらに、EDを併発されている方も多数含んでいると思われます。


緑内障は、近年、国際的な同意のもとに、その疾患概念が大きく変わりました。
それは、純粋な一つの疾患単位と言うよりも、特異的な機能や構造などの種々の異常を背景に発症・伸展する、 視神経症を有する症候群とも言うべき眼疾患であるという認識です。
緑内障には、幾つもの病型がございますが、共通した特徴として、

  • ・視神経乳頭の陥凹と、それに一致した視野の欠損がある
  • ・大規模臨床試験により十分な科学的根拠を示されている治療が眼圧の下降のみである

事があげられます。

緑内障の治療は、眼圧のコントロールが非常に重要になります。
本疾患の患者が、バイアグラ・シアリス・レビトラなどのED治療薬を使用する場合は、 それらの薬剤の副作用に、眼圧の上昇があるかどうかが、非常に重要です。


バイアグラ・レビトラ・シアリスに関して、それぞれの薬剤と眼圧・緑内障との関係に関して各論的に申し上げます。

【バイアグラ】ファイザー社

ファイザー社の発行する添付文章上では、眼圧の上昇が記載されていますが、頻度不明(低頻度)とされています。 一方、副作用報告 には、緑内障発症の記載が有りません。
動物実験においてバイアグラによる眼圧の上昇が指摘されていますが、 人間を対象とした、二重盲検法試験では、統計学的な有意な眼圧の上昇は確認されていないようです。
バイアグラは、ごく低頻度ながら眼圧の上昇を引き起こす可能性はございますが、 バイアグラ使用に関連した、因果関係が明らかな緑内障の発生は認められないと、解釈されています。

【レビトラ】バイエル社

バイエル社の発行する添付文書では、バイアグラとは逆に、眼圧の上昇に関しては記載は有りませんが、 0.01~0.1%未満の頻度で緑内障の発症があったと、副作用報告に記載されています。
健常男性25名を動員した臨床試験の統計解析上は、 レビトラによる明らかな眼圧の上昇は確認されなかったとの事です。
レビトラが、”確実”に眼圧を上昇させるという指摘はなく、生理学的関係性も明らかではありません。
あくまで可能性として、レビトラによって緑内障が低頻度に発生する可能性があると解釈されている様です。

【シアリス】イーライリリー社(日本新薬販売)

最後にシアリスですが、 バイアグラ・レビトラ・シアリスの3製剤の中で、唯一、添付文書上で眼圧の上昇・緑内障の発症の記載が有りません。 シアリスは、長期薬効製剤の性格上、安全マージンを広めに確保している薬剤なので、 眼圧・緑内障に関しても安全性が高い可能性が有ります。

総合的に解釈すると、緑内障の患者様において、上記の勃起不全治療薬は、100%安全な薬剤とは言えませんが、 本疾患ならびに眼圧に関しての有害事象の発生は、非常に稀であると言えます。
いずれの薬剤にも当てはまりますが、 緑内障患者様における薬剤の服用が、禁忌とされている訳ではありません。
実際の使用に当っては、眼圧の上昇や緑内障の発生が、ともに指摘されていないシアリスの使用が宜しいとも思われ、 緑内障をコントロールしている眼科主治医の了承の元に、 これらの薬剤を使用する事が大切と思われます。


ちなみに、腹臥位の性行為は、ある種の緑内障(狭隅角緑内障)の眼圧を上昇させ、 緑内障発作を来す事があります。
これを、 マーコヴィッツ症候群 と呼びます。
薬剤との関連でなく、潜在的に罹患していた緑内障が、性交体位によって顕在化した可能性も考慮する必要がございます。

緑内障発作時には、霧視や光のにじみを自覚することもございますが、バイアグラの眼合併症である 彩視症 とは異なるものです。


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