『前立腺肥大症の人はED治療を希望しない? 前立腺肥大に伴う勃起不全に治療希望が少ない、その三つの理由を日本性機能学会専門医が解説』

前立腺肥大症の人はED治療をあまり希望しない

  • 前立腺肥大症の人はあまりED治療を希望しない傾向が有ります。
  • その理由は三つあります
  • 一つは前立腺肥大症には高齢者が多い事、
  • 二つ目は前立腺肥大症には腎後性腎不全の影響がある事、
  • 三つ目は前立腺肥大症の薬剤副作用の影響がある事です。
  • これらはいずれも性欲減退を引き起こし、勃起不全治療の希望を減少させてしまいます。

前立腺肥大症の人はED治療をあまり希望しない傾向があります。 それは 『高齢者が多い事』 『腎後性腎不全の影響がある事』 『薬剤副作用の影響がある事』  以上の三つの理由から、性欲が減退する事が影響していると考えられます。



前立腺肥大は元々、勃起不全のリスクファクターの一つで、EDを引き起こしやすいお病気です。 前立腺肥大に伴う下部尿路症状つまり排尿の障害が、勃起不全症を引き起こす直接の原因になります。


この前立腺肥大症の男性261名を調査した、ある研究では、 内75.4%の方が性機能が不十分だと回答しているのですが、 EDの治療希望はこの内のたった18.4%に過ぎず、 しかも実際にEDの治療を受けた方は、 さらに減って全体のたった3%に過ぎなかったと報告しております。


なぜに、こうした 『前立腺肥大に伴う勃起不全には治療希望が少ない』 という傾向がうまれるのでしょうか?


本稿では日本性機能学会専門医が、こうした前立腺肥大症の人があまりED治療を希望しない理由に関して、 三項目に分けて分りやすく解説しております。 宜しければご一読下さいませ。


<当ページのもくじ>

  1. 【高齢者が多い事】
  2. 【腎後性腎不全の影響がある事】
  3. 【薬剤副作用の影響が有る事】

1.【高齢者が多い事】

前立腺肥大症には高齢者が多いため

前立腺肥大症の人があまりED治療を希望しない三つの理由、まず最初は 『高齢者が多い事』 について解説させて頂きます。


前立腺肥大は加齢性に増加する疾患です。男性は年齢を重ねて行くと男性ホルモンの代謝物の異常蓄積などが原因となって、 前立腺の尿道側にある内腺が段々と大きくなって行き、前立腺肥大を引き起こします。 これによって尿の通り道が圧迫されるようになると、EDの原因となる下部尿路障害、つまり排尿の障害が出現します。 この内腺は40歳くらいから段々と大きくなり始め、 70歳くらいでは、ほぼ全例の男性に前立腺肥大症が見られると報告されています。


一方、男性ホルモンは加齢性に減少していきます。男性ホルモンは一般的に20歳代くらいから年令が重なるにつれて自然に分泌が低下して行き、 この男性ホルモンの分泌量が性機能の維持に足りないレベルまで減少してしまうと、 今度は性欲がだんだんと減退していってしまいます。


つまり基本的に前立腺肥大症は高齢者に多く、 そして高齢者には男性ホルモンの低下によって性欲が減退している方が多いという事なのです。 むろん性欲が減退している人ではEDの治療希望は少なくなります。


前立腺肥大症に伴う勃起不全において、その治療希望が少ない理由の一つとしては、 このように前立腺肥大の患者グループには高齢者が多いために、 性欲の減退をともなうEDが多い事が上げられます。


2.【腎後性腎不全の影響がある事】

腎後性腎不全の影響があるため

前立腺肥大症の人があまりED治療を希望しない三つの理由、続いては 『腎後性腎不全の影響がある事』 について解説させて頂きます。


前立腺肥大は進行すると、排尿障害がどんどん悪化して、常に膀胱に尿がたまり気味になってしまいます。 慢性的に膀胱に尿がたまるようになると、今度は腎臓の機能にも悪影響が及ぶようになってきます。 こうした腎機能障害を 『腎後性腎不全』 と言います。


ちなみに勃起不全症の重症度と排尿障害の重症度とは、用量的な相関関係にあるので 腎後性腎不全を起こすレベルの排尿障害では、勃起不全も重症レベルになっている可能性が高いです。 この相関関係には交感神経系の過剰活動、NOS/NO比の低下、膀胱周囲の血行不良など複数の因子が関連しています。


排尿障害が進行して 『腎後性腎不全』 になってしまうと、今後は内分泌への悪影響が出現し始め、 血液中のプロラクチンというホルモンの増加、また脳の下垂体の機能障害から、最終的に男性ホルモンの分泌量が減っていってしまいます。 男性ホルモンの分泌量が減少していくと、当然、性欲も減退していきますので、 たとえEDが重症化していたとしても、EDへの治療希望は少なくなってしまいます。


前立腺肥大症に伴う勃起不全において治療希望が少ない理由の一つとしては、 このように前立腺肥大に伴う腎後性腎不全の影響で、 男性ホルモン分泌減少による性欲の減退が発生している事が上げられます。


3.【薬剤副作用の影響が有る事】

薬剤副作用の影響があるため

前立腺肥大症の人があまりED治療を希望しない三つの理由、最後は 『薬剤副作用の影響がある事』 について解説します。


前立腺肥大のコントロールには様々な薬剤が使用されていますが、 その中には薬剤副作用として性欲の低下を引き起こしてしまうモノも有ります。 こうした薬剤の代表としては 『デュタステリド』 そして 『クロルマジノン酢酸エステル』 が有ります。


5α還元酵素阻害薬と呼ばれる系統の薬剤で主成分が 『デュタステリド』 と呼ばれる薬剤は、 リビドーの減退、つまり性欲の低下が副作用として報告されています。


一方、抗アンドロゲン剤という系統の薬剤で主成分が 『クロルマジノン酢酸エステル』 と呼ばれる薬剤も、 薬剤副作用としての性欲低下が報告されています。


全てでは無いですが、こうした一部の前立腺肥大症用の薬剤が性欲の低下を引き起こす事があり、 こうした薬剤性の性欲低下が出現すれば、当然ED治療を希望する気持ちも減少してしまいます。


前立腺肥大症に伴う勃起不全において治療希望が少ない理由の一つには、 こうした前立腺肥大症の薬剤による副作用で性欲が低下してしまう事も上げられます。



以上、前立腺肥大症の人があまりED治療を希望しない、その三つの理由に関して日本性機能学会専門医が解説させて頂きました。


ちなみにED治療に使用されるバイアグラなどのPDE5阻害薬は、 前立腺肥大症の改善に関してはどちらかと言うと良い効果をもたらすと報告されています。 実際にバイアグラと同じPDE阻害薬という系統の薬剤で、 前立腺肥大症に伴う排尿障害に対して、日本国内での保険適応が認められているものも有ります。

(記載:新宿ライフクリニック-日本性機能学会専門医:須田隆興、最終確認日:2021-05-25)

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