運動行為です

セックスは医学的にはエクササイズでもあります。



「エクササイズとして見たセックス

 

性交は運動行為と目される側面が有ります。


<当ページの項目リスト>

  1. 【セックスは運動行為】
  2. 【どのくらいの強度なの?】
  3. 【始めての場合や婚外性行の場合は?】
  4. 【運動行為でEDを予防・改善!】
  5. 【セックスの重要性】

セックスは運動行為

医学的にはセックスも運動行為です。


1.【セックスは運動行為】

【要約】 「セックスは運動行為です。」
セックスは生殖活動でもありますが、医学的には運動行為としても認識されています。 長年連れ添ったカップルであれば、 セックスは少し早歩きの歩行(4.8km/h)と同程度の強度の運動行為に相当するとカテゴリーされています。 これが、初めての相手や婚外性行の場合はより強度の高い運動行為に該当する可能性があります。 また適切な運動はセックスの阻害因子であるED/勃起不全の発症予防や改善に繋がる可能性が高いです。 そしてセックスの回数が多い男性はセックスの回数が少ない男性に比べて長寿の傾向があるとも報告されています。



皆さんは定期的な運動をしてますでしょうか? もちろん「適切」であればと言う事でもありますが、運動は糖尿病・高血圧・脂質異常症を改善させ、 また脳と体のアンチエイジングにもなり、下記しておりますが、なんと!EDの改善効果・予防効果もあると報告されており、 総合的に体に良いものです。


この運動ですが、広範なカテゴリーそして広範な種類があり、 どこまでを「運動」という言葉でくくれるのか難しいくらいです。 そんな運動行為の中に、実は我々人間の生殖行動である「セックス」も内包されます。
運動行為に内包されると言ってもセックスは非常にパーソナルな行動なので、 他人と競い合うものでも無ければ、競技会がある訳でも無く、 また学校に部活がある訳でも有りません。
このセックスが運動行為に内包されるというのはあくまで医学的なニュアンスです。


例えば罹病している疾患やその程度によっては、 その罹病者は運動行為自体が制限されてしまう場合が有ります。 それは運動行為によってその疾患が増悪したり、症状が惹起されてしまうようなケースが考えられるからです。 具体的な例としては急性心筋梗塞などの心血管疾患を罹病した方です。 心筋梗塞や狭心症などの疾患は運動による心拍数や血圧の上昇によって、 それらの発症や増悪が引き起こされる場合があり、 これらの疾患を罹患した後は、しかるべきタイミングで 運動負荷つまり歩いたり・走ったり・ペダルをこいだりして貰いつつ心電図をチェックして、 その人が運動しても大丈夫なレベルを特定する必要が有ります。
セックスは、通常の運動同様にその動作や精神的興奮に応じて心拍数や血圧の上昇を伴い、 心筋梗塞や狭心症等の要素がある人においては、 その発症や増悪の原因になってしまう事があります。 故に、医学的にセックスは「運動行為」にカテゴリーする必要が有るのです。
実際の臨床現場においても、狭心症や心筋梗塞等を発症された方は、 その方がセックスをしても大丈夫かどうか、 セックスに相当するレベルの運動負荷を行いつつ心電図を計測し、結果を判定しています。


本稿ではセックスが医学的に運動行為としてどのようなものであるかと言う解説を主軸に、 始めてセックスをする相手や婚外性行の場合等はどうであるかなど、 運動とセックスの関連について多岐にわたって解説しております。 宜しければ、どうぞご参照くださいませ。


2.【どのくらいの強度なの?】

冒頭よりセックスは医学的には生殖活動としてだけでなく運動行為とも目されると記載させて頂いております。 それではセックスは男性において、どのくらいの強度の運動行為に相当するのでしょうか?


ちなみに運動強度は医学的にはMETs(メッツ)という単位が比較上の指標単位です。 METsは単位時間当たりの酸素摂取量を体重(kg)で割ったもので、 安静時の状態がちょうど1METsです。
セックスは報告によれば、男性上位のセックスで平均3.3METsに相当すると言われています。 3.3METsとは他の運動で言うと時速4.8㎞/h(80mを1分で移動するくらいの速さですね)のウォーキング、 つまり少し早歩きの散歩くらいです。


ご参考にセックスに相当する運動強度前後のものをご紹介しますと、 3.0METsくらいでボーリングやゴルフの打ちっぱなしの強度、 3.5MTEsくらいでカートを使用したゴルフやボート漕ぎなどの強度、 4.0METSでバレーボールや乗馬レベルの強度に相当するとの事です。


ちなみにセックスの運動強度は平均値として3.3METsに相当しますが、 実はオルガズム前とオルガズム時ではその強度が変わります。 オルガズム前のセックスは2~3METsに相当する強度で、 オルガズム時のセックスは3~4METsに相当する強度です。 このようにセックスはMETsという指標単位を用いる事で、 他の運動行為の強度と比較する事が可能です。


もちろん運動量としては行っている時間の長さも重要な要素ですが、 こと運動強度だけ見るとセックスの方がボーリングよりもMETsの平均値が高いのは少し面白いですね。
ただし、上記のセックスの運動強度はあくまで長年連れ添ったカップルにおけるデータになります。 それでは長年連れ添ったカップルでない、初めての相手や婚外性行の場合はどうなるのでしょうか?


3.【始めての場合や婚外性行の場合は?】

セックスが運動強度で相当するレベルを解説させて頂きました。 ただし上記したのはあくまで長年連れ添ったカップル(夫婦を主体にしたデータです。)から採取されたデータです。


それでは長年連れ添ったカップルではなく、 初めて一緒にセックスをする方や婚外性行、つまり既婚者が自分の妻以外とセックスするような場合はどうなるのでしょうか?
こうした長年連れ添ったパートナー以外とのセックス、特に不安感や後ろめたさ、 大きな興奮を伴う婚外性行のセックスに関しては、 上記した強度以上の運動行為になる可能性が高いです。


始めて一緒にセックスをする方や婚外性行の場合は運動行為自体と言うよりも、 こうした背景における心理状態が心拍数や血圧の上昇をより高度なものにしてしまう可能性が高く、 狭心症や心筋梗塞等の心血管疾患の背景因子を持つ方などにおいては、 予想し難い疾患事故を引き起こしてしまう可能性が有ります。
しかし、初めて一緒にセックスをする場合、また婚外性行の場合などは、 極めて医学的データが取りにくい状況である事もあり、 実の所、こうした状況における統計的に処理された正確なデータはほぼ無いと言っていいと思われます。


しかし心臓突然死を含むセックス中の死亡つまり腹上死において、 婚外性行の割合はなんと75%とかなりの高頻度で報告されており、 こうしたデータからは少なくとも婚外性行の髙い危険性は伝わってきます。 つまりまとめると、 婚外性行などのセックスは過剰な強度の「運動行為」になってしまう恐れが有るという事で、 道義的なものはさておき、心臓血管リスクのある方はこうした婚外性行は避けられた方が賢明と言えるでしょう。


4.【運動行為でEDを予防・改善!】

婚外性行などのセックスは、本人の身体状況によっては危険な強度の運動行為になる可能性に関して記載しました。 しかし、婚外性行などのセックスはさておき、 運動そのものは適切に行う分には身体にとって非常に望ましいものです。


セックスと運動という関連においては、 実は適切な運動はセックスの阻害因子であるED/勃起不全の予防ならびに改善作用があると報告されています。

現在、ED/勃起不全の治療は、勃起改善薬(PDE5阻害薬)が治療のファーストチョイスとして規定されていますが、 これらPDE5阻害薬は副作用が少なく勃起改善効果が高いものであったとしても、 あくまでそのED改善効果は一過性なものです。
それでは継続的なEDの改善を実現するにはどうしたらよろしいのでしょうか?
それは、生活習慣改善が望ましいとされています。


EDのリスクファクターの内には、「加齢」など改善の仕様がないものが存在しますが、 それ以外の「肥満」や「運動不足」などのリスクファクターは生活の中で改善が可能なもの達です。
特に運動行為は2.5時間/週のランニングでEDの発症リスクが30%も低下したり、 また運動と食事療法の実施によりIIEF値の改善、つまりEDの改善がみられるとも報告されており、 運動はセックスの阻害因子であるEDに対して具体的な効果が報告されています。
いわば、EDの患者さんはセックスという「運動」をするために、 持久力「運動」などを定期的にして頂くと良いという所でしょうか。


ちなみにどのような運動行為でもEDの改善や予防に作用するわけではなく、 細いサドルのロードレーサーによるサイクリングなど全く逆効果の運動もあるので、 行う定期的な運動はその種類の選択が大切です。 ウォーキングやランニングは過剰なものでなければ、EDの改善や予防に望ましいものです。 是非、生活の中にこうした運動を取り込んで下さい。


5.【セックスの重要性】

以上、セックスは運動行為であるという医学的視点を中心に、 運動のED予防・改善における重要性など、 セックスと運動に関して多岐にわたって記載させて頂きました。


上記に運動行為による生活習慣病やEDの改善など、再三に渡ってその重要性を説いておりますが、 実はセックス自体も高齢者の健康維持に重要であると報告されています。 実はセックスの回数は男性の長寿つまり「長生き」と有意に相関しているという報告があるのです。 これはつまりセックスの回数が多い男性の方が、 セックスの回数が少ない男性に比較して長生きな傾向があるという事を示しています。
また早くセックスを止めてしまうと死亡リスクが上昇する、 またセックスの回数が少ない男性の方が有意に死亡リスクが高いなど、 セックスが高齢者において長寿や死亡リスクの回避に関連しているという報告は、 実は世界中の複数の国から発信されています。


これはセックスが運動行為として優れているからなのか、 それとも男性ホルモンなどの内分泌を刺激する行為として、 こうした好影響をもたらしているのか、その詳細なロジックは今だ不明ですが、 統計的な資料はこのようにセックスを健康上望ましいものとして肯定的です。
皆さんも疾患背景などで運動行為が規制されていないのであれば、 また社会的に問題が無いパートナーシップであるのならば、 多いにセックスは行うべきです。 それは無論、性行為感染症などに気を付けつつですが。


新宿ライフクリニックは日本性機能学会専門医いわばEDの専門家が主宰するED専門クリニックです。 当院はセックスと運動の関連など、対応できる質問内容は非常に広いと自負しております。 東京は新宿駅近辺にお寄りの際はぜひとも当院にご来院くださいませ。 スタッフ一同皆さまのご来院をお待ち申し上げます。
(記載:日本性機能学会専門医-須田隆興)