くも膜下出血後の脳血管攣縮に対してバイアグラが有効であるとした報告



脳血管攣縮に対するバイアグラ(シルデナフィル)の可能性

Safety and efficacy of sildenafil citrate in reversal of cerebral vasospasm: A feasibility study
Surg Neurol Int. 2012; 3: 3.


動脈瘤が破裂すると、急性期合併症として脳血管攣縮が生じることは、古くから知られています。
脳血管攣縮の原因は、複雑で、全て理解されていません。
脳血管攣縮により生じる、二次性で遅発性の虚血性変化は、後遺症や死亡原因になります。
適切な治療が無ければ、34%の患者に後遺症が出現し、30%の患者が死に至ると言われております。
脳血管攣縮は、動脈瘤が破裂し、クリッピング術を受けた患者にとって、 最も致命的で発症率の高い合併症です。

有症状の脳血管攣縮の治療は、血圧管理(人為的に軽度高血圧にします。hypertension)、 循環血液量を多く維持(hypervolemia)、血液を希釈する(hemodilution)のいわゆる”HHH療法”と、 ニモジピンが基本となっています。
”HHH療法”は、血圧管理(人為的に軽度高血圧にします。hypertension)、 循環血液量を多く維持(hypervolemia)、血液を希釈する(hemodilution)治療を指します。
ニモジピンは、機序の詳細は不明な点もありますが、脳血管攣縮の治療成績を向上させます。

パパベリン、ニモジピン、硫酸マグネシウムは、有用な治療薬でありますが、 これらが、常に満足のゆく結果にはなりません。
バイアグラ(シルデナフィル)は経口の選択的フォスフォジエステラーゼ阻害剤(PDE阻害剤)で、 血管拡張作用を有しており、勃起不全ED治療以外にも、肺高血圧症やレイノー症候群などで、使用されています。 しかし、いまだ脳血管攣縮に対して、バイアグラ(シルデナフィル)は使用されたことがありません。
この研究は、難治性で有症状の血管攣縮患者における、 バイアグラ(シルデナフィル)の経口投与の安全性と可能性について評価する事を目的としています。

動脈瘤によるくも膜下出血でクリッピング手術を行った患者で、 術後に脳血管攣縮に対する基本治療として、いわゆる”HHH療法”とニモジピンの投与を行ったにもかかわらず、 24時間後に経頭蓋的ドップラー法(TCD)で改善が無かった場合に難治性と診断し、 バイアグラ(シルデナフィル)100mgを4時間毎に経口投与されています。
また、体重が70kg以上の患者には、バイアグラ(シルデナフィル)150mgまで増量しています。
4時間おきに投与された理由は、バイアグラ(シルデナフィル)の生物学的利用率と、 その半減期が4時間であることから、決定されています。
経頭蓋的ドップラー法(TCD)で、その反応を評価しています。

8人の患者は、経頭蓋的ドップラー法(TCD)で48時間以上にわたり正常を維持し、 4人の患者は、一時的に血管攣縮を改善しています。4人の患者は、合併症が進行し、治療を中断しています。
バイアグラ(シルデナフィル)は、難治性の有症状の脳血管攣縮に有効である可能性を示しました。

機序については、様々な議論がされておりますが、すべて推測の域を脱していません。
単純に、血管拡張作用によるものなのでしょうか。
それとも、PDEにはアイゾザイムが11知られており、 脳には、PDE5以外にも、PDE1、PDE2、PDE4、PDE10が存在する事がわかっています。 バイアグラ(シルデナフィル)は、やや選択性が甘く、PDE5以外にも、 これらのアイソザイムに作用いたします。
このことが、作用機序を絞りきれない理由かもしれません。
より選択性の高いPDE阻害剤が出現した場合、今回の結果は、また、違ったものになるかもしれません。
この結果について、異論はあるかもしれませんが、様々な事の積み重ねで、医学は進歩してゆきます。
今後の医学の発展に期待します。


バイアグラ処方は新宿ライフクリニック


用語集文献の閲覧、新着情報、 定番をご紹介いたします。


違い 詳細

  • 青錠
  • 橙錠
  • 黄錠