プロぺシアと低用量アボルブの併用は有効なAGA治療法となりえるのか



プロぺシアと低用量アボルブの併用により著名な発毛効果を認めた例

Combination therapy with finasteride and low-dose dutasteride in the treatment of androgenetic alopeciaajd_909 1..3
Australas J Dermatol. 2012 Jun 12.


新宿ライフクリニックでは、男性型脱毛AGA治療に力を入れております。
その中心的な薬剤はプロペシアです。
しかし、残念ながら、全てのAGA患者さまにプロペシアが、満足できる効果を示しているわけではございません。
プロペシアが効かない、効果が無い、効果が無くなった、と感じる方は、是非、一読して下さい。
このケースレポートは、プロペシアの効果が認められなかった患者さまにも、 期待の持てる結果となっております。
オーストラリアからの報告です。


47歳男性。
プロペシアにて男性型脱毛症の治療を4年間行っていたが、最近2年間は、 発毛効果が認められておりませんでした。
そこで、プロペシアの服用を継続とし、アボルブ(デュタステリド)を0.5mg/週の追加投与を行ったところ、 劇的な発毛効果が認められたため、ここに報告いたします。

男性型脱毛症AGAは、前頭部から頭頂部にかけて、頭髪が進行性に軟毛化し、 最終的には抜け落ちてしまう、遺伝的な要素のある脱毛症です。
男性型脱毛症の中心的な原因物質は、5α還元酵素です。
これは、テストステロンからジヒドロテストステロンDHTに変換する酵素で、 この変換され生じたジヒドロテストステロンDHTは、強力に脱毛AGAを引き起こします。
プロぺシア(フィナステリド)やアボルブ(デュタステリド)による5α還元酵素の阻害は、 AGA治療に効果的です。

プロペシアは、2型5α還元酵素阻害剤で、AGA治療に承認されております。
プロペシアの効果は、多くの第Ⅲ相無作為臨床試験で証明されております。
発毛の最大限の効果は、服薬開始2年内位に認められることが多く、その後は減弱することもあります。 プロペシアを服薬しなかった場合は脱毛が進行しますが、5年間のプロペシアの服用した場合でみると、 いずれの時点でも、服用していた方が有意に増毛を見とめておりますが、 最も頭髪の密度が高いのは2年経過した時点であり、その後は、頭髪の密度が低下するとの報告もあります。
当初プロペシアが効果的であった場合で、後に脱毛症が再度進行してしまった男性に対し、

付加的な治療を示すことが可能かもしれません。 アボルブ(デュタステリド)は、1型、2型5α還元酵素の両方を阻害し、 男性型脱毛症AGAにより効果的な可能性がございます。

47歳男性。
2年前から脱毛を、特に頭頂部の脱毛を自覚。臨床的には男性型脱毛AGAと診断されています。
患者の既往歴には、気管支喘息があります。
常用薬はございません。
患者は、1日1mgのプロペシアの服用を開始、6ヶ月後には、開始前と比較し、患者本人の評価、 医師の評価ともに、良好な発毛効果を得ておりました。
特に副作用も認めておりません。
4年間に渡り、医師の評価、患者自身の評価、写真の評価ともに良好で、プロペシアの服薬を継続しておりました。 しかし、4年が経過したところで、プロペシアの効果が減弱し、患者の頭髪の密度は減少してきました。
そこで、プロペシアの服用は継続した上で、 アボルブ(デュタステリド)0.5mg/週の追加投与を開始しました。
この併用療法により副作用の出現は認めておりません。
3ヶ月後、劇的な頭髪の増加が得られております。

頭髪の育毛はの大部分は、ジヒドロテストステロンDHTにて規定されています。
ジヒドロテストステロンDHTは、5α還元酵素によりテストステロンから変換合成されます。
5α還元酵素には、3つのアイソザイムが知られております。 また、これらは、遺伝子的に分かれた場所に記憶されており、組織や部位によってその発現量が異なります。
皮膚では、主に1型5α還元酵素が皮脂腺と汗腺に発現しております。
2型は、生殖器の皮膚や、顎髭や頭髪の毛包に優位に存在します。
毛包において、2型5α還元酵素は、外毛根鞘と内毛根鞘(特に外毛根鞘)に存在し、 真皮や皮脂腺には存在しません。
3型5α還元酵素は、真皮と表皮に一様に、さらに、1型、2型5α還元酵素よりも非常に多く発現しております。

アボルブ(デュタステリド)は、1型、2型5α還元酵素をともに阻害します。
Australian Therapeutic Goods Administration(TGA)(日本における厚生労働省とお考えください)により、 前立腺肥大症治療薬として、2002年に認可されております。
また、プロペシア(フィナステリド)より、よりいっそうの5α還元酵素を阻害する能力があり、 2型5α還元酵素については3倍、1型5α還元酵素については100倍の阻害作用を有します。
プロペシアが血中のジヒドロテストステロンDHTを73%減少するのに対し、アボルブは92%減少させます。
また、アボルブは、前立腺組織内のジヒドロテストステロンDHTを、実に99%減少させます。
ほぼ最大限の前立腺内のジヒドロテストステロンDHTを抑制する事を示しており、 前立腺肥大症に対しては、1型~3型5α還元酵素の3種の5α還元酵素のトリプルブロックは必要なさそうである事 を示しています。

男性型脱毛症AGAでは、頭皮のジヒドロテストステロンDHTが重要です。
頭皮のジヒドロテストステロンDHTは、プロペシアでは41%抑制され、アボルブでは51%抑制できます。
このことから、1型~3型の5α還元酵素すべてを阻害する事が有効そうです。
興味あることは、プロペシアは3型5α還元酵素阻害作用も持ち合わせております。
プロペシアが、3型5α還元酵素を半減させるのに必要な血中濃度は、 2型5α還元酵素を半減させるのと比較し1/4で済みます。

今回経験した患者では、プロペシアと低用量のアボルブの併用療法が、 プロぺシア単独療法より発毛効果を認めました。
低用量アボルブの使用のため、アボルブにより、 プロペシアの持つ2型、3型5α還元酵素の阻害作用が増強されたというよりも、 1型5α還元酵素を阻害したためと思われます。

この施設では、認容性があり、副作用が無く、発毛効果が認められる間は、プロぺシアによる治療を基本とし、 1型5α還元酵素の阻害を追加する時に、アボルブの追加投与を選択するようにしているとの事です。

アボルブも薬理学的に長い半減期から、間歇的な投与としています。
アボルブは、最終排泄相の半減期が5週間と長く、加えて、5α還元酵素に非可逆的に結合し、 極めて長い生物学的な半減期を有します。
0.5mg/週のアボルブの使用は、一日あたり0.1mgを下回る用量です。
割愛いたしますが、この用量のアボルブでも、ジヒドロテストステロンDHTの抑制効果は認められております。
アボルブは、FDA(アメリカ食品衛生局)とTAG(オーストラリアの厚労省にあたる組織)は、 前立腺肥大用治療薬として承認をしております。
AGA治療における第Ⅲ相臨床試験が行われております。
アボルブの副作用で主に関心が寄せられるのは、EDなど性機能に関する事柄です。
前立腺肥大症を対象にした、4年間の追跡調査では、1日0.5mgのアボルブの服用は、良好な認容性があり、 性機能に関連する副作用は少なく、経過とともに減少する傾向にありました。

ステロイド減量中に認められる、皮膚の3型5α還元酵素の機能的な役割は、 いまだにはっきりしておりません。
今回経験した患者における発毛効果の増強が、 1型~3型5α還元酵素のトリプルブロックであると推測する事は興味のあるところですが、 実際に頭皮のジヒドロテストステロンDHTを測定してるわけではないので、断定はできません。
単純にプロペシアを中断し、アボルブ単独で服用した場合でも、同様の効果が得られたかもしれません。
長期にわたりプロペシアで治療されている患者の一部で、治療効果が減弱する現象が見受けられます。
プロペシアを継続しつつ、間歇的な低用量のアボルブの併用する事により、 発毛を増加させる事が可能かもしれません。

AGA治療は、そろそろ次の展開に移ろうとしているのかもしれません。
5α還元酵素のトリプルブロックが効果的ではありそうですが、今後の知見の積み重ねに期待です。
アボルブ単独でも、プロペシアを上回る効果を示した試験はございますが、この併用療法は、 プロペシアの3型5α還元酵素阻害作用を生かした治療法になります。
必ずしも効果があるわけではないのでしょうけれども、有効な治療オプションになりそうです。


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