バイアグラが痛風発作の誘因として考えられたケースレポート



バイアグラと痛風発作の関係が疑われた例

新宿でバイアグラをすぐ処方.新宿ライフクリニック


まず前置きとして、これはあくまでもケースレポートですので、痛風の方、全員に当てはまるものではありません。
痛風は、成人男性に多く見受けられる疾患です。
痛風の有病者数を考えて、発症頻度としては極わずかであっても、相当数に上る可能性があります。 バイアグラ(シルデナフィル)で痛風発作が生じる可能性が指摘されたため、ここに紹介しようと思います。

痛風は、先進国の成人男性の1%程度に認められる、一般的な疾患です。 40歳以上の方の炎症性関節炎の最も一般的な原因疾患です。
尿酸ナトリウム水和物の結晶の関節と軟部組織への沈着が原因となり、血清尿酸値と、この尿酸の結晶化の間には、相関関係が認められます。
実際には、痛風発作のきっかけは、はっきり解明されていないのですが、痛風発作の予測因子は、同定されています。 血清尿酸値、アルコール消費量、高血圧、降圧薬の服用歴、BMI、痛風の家族歴です。
痛風は、急性関節炎にも痛風結節とも呼ばれる慢性の関節症の、両方を呈す事があります。 痛風性関節炎は、中足指節に最も多く認められます。

バイアグラシルデナフィル)は、勃起薬として使用される、 選択的フォスフォジエステラーゼ5阻害剤ですが、稀に、痛風性関節炎の原因となる可能性が指摘されています。
このケースレポートは、第一趾節間に認められた、痛風結節の報告で、バイアグラ(シルデナフィル)の使用により発症したことが疑われます。

58歳男性。
2か月前に、右中足指節の腫脹、疼痛を自覚し来院となっています。
痛みは、不釣り合いなほど強く、ED治療薬を服用した晩から生じています。 プライマリーケアを行う内科医の診察を2度受け、鎮痛薬の処方を受けています。
この患者の既往歴として、2年前と4年前に、第一関趾節間の痛風発作があります。
8年前に、高血圧、冠動脈疾患に罹患しています。
常用薬は、ペリンドプリル(降圧剤)、ヒドロクロロサイアザイド(降圧利尿薬)、サリチル酸、 アロプリノール(痛風治療薬)、コルヒチン(痛風発作予防薬)です。
嗜好は、喫煙歴はなく、週末に時々飲酒を楽しむ程度です。
食生活の偏りも認めていません。
家族歴やアレルギーに特筆すべきことはありません。
2か月ほど前から、ED治療のために、バイアグラ(シルデナフィル)100mgの服用を行っており、来院前夜にも、バイアグラ(シルデナフィル)を服用していました。

身体検査にて、右第一趾節間背側に3*2cmの蜂窩織炎や潰瘍形成を伴わない腫脹を認めています。
関節の可動範囲は、痛みと腫脹のため著しく制限されていました。
今回は外科的減圧術が選択されています。 デブリードメントを十分に行い、関節内にメチルプレドニゾロン20mgを注入し終了しています。 術後にインドメタシンを処方し、10日間服用を行うことにより改善しています。 切除された部位より、尿酸ナトリウム水和物の結晶が証明され、痛風発作である事が確定しております。 この患者の体格は標準的で、BMI27.4です。 その他の関節や、耳介部に痛風結節は認められていません。

痛風は、急性または慢性の関節炎を呈する代謝性疾患にであり、軟部組織や腎臓に尿酸ナトリウム水和物の結晶の沈着を生じます。 痛風結節は、一般的には、関節や軟骨組織に認められます。 滑膜、腱や腱鞘、その周囲、骨端や皮下にも認められます。 痛風結節は、血流が悪く、体温の低い場所に生じやすく、耳介部や第一関趾節間が好発部位に挙げられます。 結節は、黄色みがかった白色で、圧痛はなく、1mm程度から7cm程度のサイズになります。 ここから、白亜質の物質が吸引可能であり、顕微鏡的に観察すると、針のような結晶である事が分かります。 全ての痛風患者は、ある時点では、必ず高尿酸血症を呈しており、高尿酸血症は、腎からの尿酸の排泄低下(90%以上の痛風患者は、これに当たります)、 または、尿酸産生増大が原因になります。
痛風や高尿酸血症を来たしやすい薬剤として、降圧利尿薬やサイクロスポリン、低用量アスピリン、エタンブトール、ピリジナミド、ニコチン酸などが挙げられます。

バイアグラ(シルデナフィル)は、選択的PDE5阻害剤ですが、市販前の3700名を対象にした治験では、稀に生じる副作用として、関節炎、痛風発作が挙げられています。
バイアグラ(シルデナフィル)が痛風発作を引き起こすメカニズムは不明ではありますが、PDE5は、陰茎海綿体以外にも、 血小板や、血管、毛細血管の平滑筋、骨格筋にも発現していることが知られており、バイアグラ(シルデナフィル)によりPDE5を阻害する事は、 一酸化窒素による抗凝集作用や末梢血管拡張作用を増加させ、それが関係しているのかもしれません。

この報告以外にも、バイアグラ(シルデナフィル)による痛風発作の報告があり、バイアグラ(シルデナフィル)を服用したときのみ痛風発作が生じたとしています。
今回の報告の場合、痛風発作を体験したのは2年以上前であり、発作が日常化しているわけでなく、痛風発作とバイアグラ(シルデナフィル)の服用との因果関係を考えます。
その上に、発作が生じた関節が、第一趾節間という、痛風発作としては、珍しい部位に当たることも、やはり、バイアグラ(シルデナフィル)と痛風発作の関連を考えさせます。

バイアグラ(シルデナフィル)は、一般的に処方される医薬品ですが、処方に当たり、骨格-筋疾患を有する患者に処方を受ける場合は、若干の注意が必要です。
降圧利尿薬が高尿酸血症を生じうることはよく知られているのですが、バイアグラ(シルデナフィル)などのPDE5阻害剤が、 痛風発作の引き金になりうることも、知っておく必要があります。


参考文献
Gouty arthritis at interphalangeal joint of foot after sildenafil use:A case report.
a report of two cases.
International journal of surgery case reports. 2012 Sep 28;4(1);11-14.


用語集文献の閲覧、新着情報、 定番をご紹介いたします。


違い 詳細

  • 青錠
  • 橙錠
  • 黄錠