副作用?シアリスとリポバスの併用により筋痛



ケースレポート:シアリスとリポバス服用中に筋痛を生じた例

新宿でシアリス処方なら新宿ライフクリニック


ED勃起不全は、ある意味では動脈硬化性疾患ということができます。
つまり、心筋梗塞や脳梗塞と同様に、高血圧や脂質異常症、糖尿病、喫煙等が原因となり、発症する事が多くございます。 当院に来院される患者様においても、これら疾患治療のため、すでに何らかの薬剤を服用していることもございます。
シアリス、バイアグラレビトラなどのPDE5阻害剤は、 血管内皮機能を改善する可能性なども指摘されているため、 動脈硬化性疾患のリスクのある方においても、処方されるケースが増加してきています。 特に禁止する必要もなく、その事に関しては、問題がないと考えます。 多くの場合、ニトログリセリン系薬剤や一部の抗不整脈薬を除けば、ED治療薬との併用は可能である場合がほとんどです。
しかし、薬の代謝を考えた場合、併用に注意を要す場合もあります。

スタチンと呼ばれる脂質異常症治療薬のグループは、全世界的に使用されており、その効果も、様々な大規模臨床試験で指摘されています。
リポバス®(シンバスタチン)もこのスタチンに属します。

今回のケースレポートは、脂質異常症治療薬のリポバス®(シンバスタチン)とシアリスを併用したところ、 筋肉痛が発症したとするものです。

シアリスもリポバスも、ともに肝臓で代謝されるため、何らかの相互作用を来たす可能性がございます。 この代謝にかかわる酵素をチトクロームP450(以下CYP)と言います。 この酵素のサブファミリーである、チトクロームP450-3A(以下CYP3A)が肝臓における薬剤代謝の中心を担っています。 シアリスとリポバスの代謝もやはり、このCYP3Aに依存しております。
シンバスタチンの代謝は、肝臓のミクロソームで、CYP3A4/5で80%以上代謝されるされており、残りが、CYP2C8などで代謝されます。
シアリスは、代謝過程において、代謝産物が、酵素の活性部位に不可逆的に結合し、半永久的に不活化します。 この不活化された酵素が再活性化するには、新たに産生された酵素によって置き換わる必要があります。


48歳男性。
脂質異常症の既往があり、シンバスタチンを20mg/日を8日間服用中。
そこに、勃起不全EDに対してシアリスを服用したところ、筋肉痛の発症増加を認めたため、病院を受診しています。
シアリス服用後、およそ3時間で筋肉の疼くような痛み(特に下肢)が出現、徐々に増悪、筋力の低下も認めています。
勃起は、5日間持続しています。
来院時所見として、体温37℃、心拍数87/分、血圧125/75mmHg。
臨床経過から、シアリスとシンバスタチンの相互作用、副作用が疑われたため、その服用を中断したところ、 5日後には、著名な改善を認めています。
問診からは、ウイルス感染や、違法な精神薬、外傷、筋肉内注射、冠動脈疾患など、筋肉痛に関するであろう解答は、得られておりません。
筋肉痛は、恐らくは薬剤性だろうとの判断になっております。

スタチンと呼ばれる脂質異常症治療薬は、95%の患者に認容性があり、服薬可能とされるほど、安全性の確立した薬剤です。
シアリスは、ご存知と思いますが、ED治療薬として、確固たる地位を確立しています。 もちろん、そうなるには安全性であったり、しっかりとした効果があるからです。
今回は、シアリスとシンバスタチンの併用が、筋肉痛を引き起こしたと推測されています。

その理由は、先に記述しましたが、肝臓に存在する薬剤の代謝酵素である、CYP3Aが関与している可能性があります。
多くの薬剤が、CYP3Aで代謝されるのですが、様々な薬剤を服用している場合、薬同士が競合し、代謝が阻害遅延する場合や、 代謝酵素が合成抑制されたり、逆に促進され場合があります。
簡単に申しますと、場合によっては、代謝が遅延する事により作用が極端に増大したり、代謝が促進する事により、 期待通りの効果が得られないケースが存在しうります。

シアリスは、生体外の実験として、培養された肝細胞を使用し、代謝に変化がないか、 肝臓ミクロソームの代謝経路を抑制しないか等の確認作業が行われております。
加えて、シアリスの中間代謝物が影響を与えないかも調べられております。
実際には、この中間産物が代謝酵素の活性化部位に結合し、不可逆性に不活化する事が分かっております。
再活性化には、この不活化された酵素が置き換わる必要があるため、時間を要します。
実験室内でのデータでは、シンバスタチンと同効薬であるCYP3Aで代謝されるロバスタチンとシアリスの併用は、 筋肉痛が出現する可能性が高まる可能性が指摘されています。

今回の例では、因果関係を確定できてはいませんが、シアリスによる筋障害と考えられます。
筋障害は、スタチンの副作用でも生じえますし、PDE5阻害剤の副作用としても生じえます。
その為、シアリスとスタチンの併用は、この筋毒性を増加させるのかもしれません。
もし、筋痛などの副作用が生じるようであれば、CYPと関係のないところで代謝されるロスバスタチン(クレストール®)に変更するのも、 改善策かも知れませんと結んでいます。


この報告はケースレポートです。
全員の方に当てはまるわけではなく、実際に、当院にも同薬を服用している患者様がいらっしゃいますが、この様な訴えは経験していません。
しかし、可能性はゼロではないため、私たち医師側も注意すべきです。
ここでは紹介していませんが、文献中には簡単な血液データが掲載されています。
それを見ると、筋逸脱因酵素の上昇があるため、筋障害があったことは確実と思われます。
果関係を精査するために、シアリスの血中濃度などを測定しておいていただけると、より確実であったと思われます。


参考文献
Myopathy with Concurrent Tadalafil and Simvastatin.
Case Report in Medicine 2009;2009:378287


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