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『バイアグラ:シルデナフィルで頭が良くなる事に関して記載がされた文献を新宿ライフクリニックの日本性機能学会専門医からご紹介』

【専門医解説:バイアグラ/シルデナフィルで頭が良くなるの?】


バイアグラ/シルデナフィルで頭が良くなるの?

マウスによる実験でバイアグラ:シルデナフィルは用量依存的にマウスの学習能力・記憶力を改善し、 マウスの『頭を良くする』事が確認されたと報告されております。 こうしたバイアグラ:シルデナフィルによる頭を良くする作用は、バイアグラ:シルデナフィルがグルタミン酸作動性シナプスにおける逆行性NOシグナル伝達を介して、 シナプス可塑性を高め、脳由来神経栄養因子:BDNFのレベルを上昇させる作用によるものと推察がされております。



『頭が良い』という状態は、様々な尺度があるものなので、なかなか一概には語りきれないものかとは思われますが、 学習能力が高い事、記憶力が高い事、これらは『頭が良い』という評価の中心にあるものと思われます。


こうした『頭が良い』という状態を、ED治療薬:勃起不全治療薬であるバイアグラ:シルデナフィルが引き起こしてくれるとしたら、いかがでしょうか?
これが本当ならバイアグラ:シルデナフィルの運用方法が一変してしまう可能性もあります。 しかし、実は、バイアグラ:シルデナフィルで『頭が良くなるかも知れない』と言う可能性は以前より真面目に研究されているテーマの一つでもあるのです。


バイアグラ:シルデナフィルの有効成分である『シルデナフィルクエン酸塩』は、 勃起不全の治療に広く用いられており、この主な作用は、 陰茎海綿体における環状グアノシン一リン酸(cGMP)の特異的ホスホジエステラーゼ(PDE)5型を選択的に阻害する事によって引き起こされております。 いくつかの研究では、このシルデナフィルクエン酸塩が動物の認知機能を向上させる事、 またラットの物体認識記憶を改善させる事などが報告されております。


こうした効果は、主にシルデナフィルクエン酸塩が『酸化ストレスへの保護作用』を有することによって引き起こされていると考えられております。 脳内の酸化ストレスは、神経細胞の損傷とそれに続く学習および記憶障害にも関連しております。 さらに、脳の酸化ストレスの増加は、加齢や神経変性疾患によって引き起こされる認知機能障害にも関わっているとされております。 そのため、こうした酸化を防ぐ作用をもつ薬剤は、神経に対してのこれらの障害を改善し 『頭を良くしてくれる』 という可能性が見込めます。


『バイアグラ、シルデナフィル、頭が良くなる』と言ったクエリの取り合わせの検索が増加しているのは、 こうした研究がかなり以前より行われている事もその影響の一つとしてあるのではないかと思われます。


そうした状況を受け、こちらのページでは『バイアグラ:シルデナフィルで頭が良くなる』というテーマを中心に、 文献1.では実際にマウスの実験において、バイアグラ:シルデナフィルによって学習能力と記憶力の改善が見られた、つまりマウスの頭がバイアグラ:シルデナフィルで良くなった、 事を確認している実験に関して、 続いての文献2.では人工的にマウスにストレス環境を設定し、それが認知機能障害の発生に関わるのか、またその認知機能障害をバイアグラ:シルデナフィルがどのように改善し、 ストレス下にあるマウスの頭を良くしてくれるのか? こうした内容を検証した実験に関して、 それぞれ新宿ライフクリニックの日本性機能学会専門医から、それに私見を添え、わかりやすく解説をさせて頂いております。
宜しければご一読くださいませ。


1.【文献1.シルデナフィル:バイアグラがマウスの学習能力および記憶力を改善させ頭を良くしたという研究】

シルデナフィル:バイアグラがマウスの学習および記憶を改善させ頭を良くしたという研究

シルデナフィル:バイアグラはED:勃起不全症の薬ですが、その作用は、性機能障害の改善だけではなく、多面的なものがあり、 『頭を良くしてくれる』 といった可能性は、そうした数多ある側面の一つとして、以前より研究がされているものになります。


こちら文献1.でご紹介させて頂いている研究は、そうした研究の嚆矢となっているものの一つで、 2003年に行われた実験についてのものになります。


こちらの研究では、高架式十字迷路(Elevated Plus Maze)を用いて、 マウスにおける学習および記憶に関するバイアグラ:シルデナフィルの影響を調べる事を目的として実施されております。


こちらの研究では合計15群のマウスが用意され、バイアグラ:シルデナフィル以外にも、 記憶増強作用を持つ薬剤として抗コリンエステラーゼ薬であるフィゾスチグミン(0.5 mg、1.0 mg/kg、腹腔内投与)、 記憶障害を引き起こす薬剤としてベンゾジアゼピン受容体作動薬であるアルプラゾラム、 確立された精神刺激薬としてカフェイン(5 mg、10 mg、20 mg/kg、腹腔内投与)、 これらもまた、マウスの認知機能に影響するのかどうかの検討に一緒に加えられたとの事でした。


この実験の結果として、ベンゾジアゼピン受容体作動薬であるアルプラゾラムは複数のマウス群において、 前向性健忘(0.5 mg/kg、腹腔内投与)および逆向性健忘(0.25 mg、0.5 mg、0.75 mg/kg、腹腔内投与)を引き起こし、 マウスの頭を悪くする事が分かり、 睡眠薬や抗不安薬のユーザーには恐ろしい結果が示される事となりました。


また皆さんも業務や学習中などでもお世話になっている、確立された精神刺激薬であるカフェインは、 驚くべき事にマウスの学習および記憶には有意な変化を全く示さなかったとの事で、 コーヒーのヘビーユーザーを戸惑わせる結果が示されました。


そしてED治療薬である、バイアグラ:シルデナフィルは初日の訓練の『30分前』に投与した場合はわずかな学習・記憶の改善を、 初日の訓練の『直後』に投与した場合、用量依存的に学習・記憶に対して有意な改善を示し、 見事バイアグラ:シルデナフィルはマウスの『頭を良くする』事が提示される結果となったとの事でした。


しかしながら、こちらの実験では、多数の薬剤の認知機能への関わりを示す事ができたものの、 バイアグラ:シルデナフィルがマウスの頭を良くする、そのメカニズムに関しては明確な答えを用意する事が出来ず、 そして、まさにそのメカニズムに関して詳しく研究をしているのが、以下、文献2.でご紹介させて頂いている研究になります。


2.【文献2.シルデナフィル:バイアグラが頭を良くする効果、そのメカニズムに関しての研究】

シルデナフィル:バイアグラが頭を良くする効果のメカニズムに関しての研究

こちら文献2.ではストレスによりマウスに短期記憶障害を発生させた上で、バイアグラ:シルデナフィルがその状態を改善できるのかどうか、 そして改善できる場合、それはどのようなメカニズムなのか?これらを検討した研究に関してご紹介をさせて頂いております。 文献1.と大きく違う点としては、バイアグラ:シルデナフィルがマウスの頭を良くするメカニズムにまで検討を掘り下げている所になるかと存じます。


ストレスの無い社会は存在しないと言えるのではないかと思われます。 こうした心理社会的ストレスは現代社会においてごく一般的に見受けられ、またこうしたストレスは認知機能を低下させてしまう事が知られております。 慢性的なストレスが、動物モデルおよびヒトにおいて、学習と記憶を損なってしまう、つまり頭を悪くする、 そのメカニズムはストレス時に分泌されるグルココルチコイドなどのホルモンや、興奮性アミノ酸の増加が、 興奮毒性と海馬萎縮を引き起こす事がその原因と考えられております。 また、脳由来神経栄養因子(BDNF)も慢性ストレス状況下で低下するとされており、 これも学習や記憶に対するストレスの悪影響に関連している可能性があるとされております。


※脳由来神経栄養因子:brain-derived neurotrophic factor:BDNFとは、代表的な神経栄養因子の一つで、大脳皮質や海馬,GABA作動性ニューロン,運動ニューロン, 小脳顆粒細胞などに作用し,分化促進,機能の維持,神経伝達やシナプス機能の亢進に関わるとされております。 このBDNFはシナプス可塑性の調節と神経細胞の生存維持に必要不可欠な因子で、学習と記憶を担う神経プロセスを促進する上でも重要な役割を果たしているとされており、 その発現を減少すると空間学習と記憶に困難が生じる、つまり頭が悪くなると言われております。


こちらの研究では、ストレスを受けたラットにバイアグラ:シルデナフィルを投与する事で、 慢性的な心理社会的ストレスによって引き起こされる認知機能障害を予防できるのではないかという仮説を検証しております。


ラットへのストレスは、8週間、毎日2匹のラットを一方のケージからもう一方のケージにランダムに交換する事によって誘発されたとの事でした。 このストレスモデルは「侵入者心理社会的ストレス」と呼ばれ、確立された社会的階層を混乱させる事でラットは新しい状況に継続的に適応しなければならず、 ストレスが発生するとの事でした。またラットのストレスは、血清コルチコステロンレベルの上昇および血圧の上昇によって判定がされたとの事でした。


その上でコントロール以外のラットにはシルデナフィルを3 mg/kg/日で腹腔内投与し、すべてのラットに対しての行動実験として、放射状水迷路(radial arm water maze)を用い、 空間学習および記憶力をそれぞれ評価したとの事でした。 その後、解剖下に海馬におけるBDNFレベルおよび複数の抗酸化マーカーを計測したとの事でした。


この実験の結果として、まずラットに与えた慢性的な心理社会的ストレスは短期記憶を有意に障害する事が明らかとなり、 続いてバイアグラ:シルデナフィルの投与によって、この短期記憶障害はその発生を予防する事が確認されたとの事で、 すなわちバイアグラ:シルデナフィルを投与されたラットはそうでない個体に比較して『頭が良い状態』であったとの事でした。


また解剖での確認上、慢性的な心理社会的ストレスが海馬におけるBDNFレベルを有意に低下させている事が明らかとなり(P < 0.05)、 そしてバイアグラ:シルデナフィルの投与によって、このBDNFの低下が正常化される事が確認されたとの事でした。 さらに、慢性的心理社会的ストレスおよびバイアグラ:シルデナフィルのいずれもが、 測定された酸化ストレス関連パラメータに対して有意な変化をもたらさなかった事もあり(P > 0.05)、 ストレス負荷ラットにおけるバイアグラ:シルデナフィルの保護効果、すなわち頭を良くする作用は、 抗酸化作用よりも、海馬のBDNFレベルの正常化の方が主体となって関連している可能性が高いと推察され、 また、このBDNFレベルの正常化はバイアグラ:シルデナフィルがグルタミン酸作動性シナプスにおける逆行性NOシグナル伝達を介してシナプス可塑性を高め、 BDNFレベルを上昇させる作用によって発生している可能性が高い事が推察されております。


3.【総合まとめ.シルデナフィル:バイアグラによる頭を良くする効果】

  • ―文献1.合計15群のマウスによる実験で、バイアグラ:シルデナフィルは訓練の『30分前』に投与した場合はわずかな学習・記憶の改善を、 訓練の『直後』に投与した場合は用量依存的に学習・記憶を改善し、バイアグラ:シルデナフィルはマウスの『頭を良くする』事が示されたとの事でした。

  • ―文献2.合計60匹のマウスによる実験では、慢性的な心理社会的ストレスがラットの短期記憶を有意に障害することが示され、 またバイアグラ:シルデナフィルの投与によって、その短期記憶障害の発生が予防される事が示されたとの事でした。 すなわちバイアグラ:シルデナフィルを投与されたラットはそうでない個体に比較して『頭が良い状態』であったとの事です。 このストレス負荷ラットにおけるバイアグラ:シルデナフィルの保護効果、すなわち頭を良くする作用は、 こちらの研究ではバイアグラ:シルデナフィルによると思われる海馬の脳由来神経栄養因子:BDNFレベルの正常化と関連している可能性が高いとの事でした。

  • ―総合まとめ.バイアグラ:シルデナフィルは人間と同じ哺乳類のラットにて、学習能力・記憶力これらそれぞれの改善を示し、 本剤には『頭を良くする』作用がある可能性が示唆されております。 こうした作用は、バイアグラ:シルデナフィルがグルタミン酸作動性シナプスにおける逆行性NOシグナル伝達を介してシナプス可塑性を高め、 脳由来神経栄養因子:BDNFレベルを上昇させる事によるものと推察がされております。

4.【Q&A.シルデナフィル:バイアグラと頭を良くする効果に関してのよくある質問】


―Q1.「バイアグラで頭が良くなりますか?」
A.はい。その可能性が有ります。マウスによる動物実験ではバイアグラ:シルデナフィルによって記憶力や学習能力が改善し、マウスの頭が良くなったという結果が報告されております。 ただし人間での効果はいまだ未知数です。


―Q2.「なぜバイアグラが脳に影響するのですか?」
A.バイアグラ:シルデナフィルがマウスの頭を良くするという作用は、海馬のおける脳由来神経栄養因子:BDNFレベルの正常化と関連している可能性が高いと推察されており、 これはバイアグラ:シルデナフィルがグルタミン酸作動性シナプスにおける逆行性NOシグナル伝達を介してシナプス可塑性を高め、 BDNFレベルを上昇させる事によるものと推察されております。


―Q3.「バイアグラは認知症に効果がありますか?」
はい。その可能性が有ります。複数の研究のメタ解析にて、バイアグラ:シルデナフィルの使用者はアルツハイマー病の発症リスクを約1/2に低下させたと報告がされております。 こうしたバイアグラ:シルデナフィルがアルツハイマー病の発症リスクを軽減させる、そのロジックとしては、主にアミロイドβ-42と過リン酸化タウの蓄積に対しての抑制的な作用が検討されており、 とくにアルツハイマー病の神経細胞を使用した実験では、本剤による過リン酸化タウの有意な蓄積予防効果が確認されたとの事でした。


―Q4.「健康な人でも頭が良くなりますか?」
A.マウスによる実験では、バイアグラ:シルデナフィルが用量依存的に健康なマウスの学習能力・記憶力を改善し、 『頭を良くする』事が示されましたが、人における効果は現段階ではまだ全くの未知数となります。


―Q5.「記憶力改善の仕組みは?」
A.はい。バイアグラ:シルデナフィルによる学習能力・記憶力の改善に関して想定がされている、その仕組みとしては、 バイアグラ:シルデナフィルがグルタミン酸作動性シナプスにおける逆行性NOシグナル伝達を介して、そのシナプス可塑性を高め、 BDNFレベルを上昇させる能力によるものと推測がされております。


―Q6.「バイアグラを勉強のために飲んでもいいですか?」
A.いいえ。バイアグラが記憶力や学習能力を改善させる、つまり『頭を良くする』という作用が認められているのは、あくまでマウスによる実験においてであり、 人間に対してのこうした効果は全くの未知数になります。一方、バイアグラ:シルデナフィルは全身状態、服薬内容、既往症などに応じて使用が危険な場合、 つまり禁忌指定の項目があり、医師がそうした内容を吟味して服用を許可する処方箋医薬品という立ち位置の薬剤になります。 つまり人間に効果があるか全く分からない上に、服薬にはリスクもあるので、 バイアグラ:シルデナフィルを勉強のために飲むの事は全くおすすめ致しません。


【引用文献】


1.Sildenafil improves acquisition and retention of memory in mice
Journal:Indian J Physiol Pharmacol. 2003 Jul;47(3):318-24.
Author:Nirmal Singh, Milind Parle
※原著はこちら


2.Sildenafil prevents chronic psychosocial stress-induced working memory impairment: Role of brain-derived neurotrophic factor
Journal:Curr Res Pharmacol Drug Discov. 2024 Apr 23;6:100182. doi: 10.1016/j.crphar.2024.100182
Author:Tareq I Jibril, Karem H Alzoubi,Nizar M Mhaida,Omar F Khabour,Mohammad AY Alqudah,Abeer M Rababa,Nasr Alrabadi,Doaa Al-udatt
※原著はこちら


(記載:新宿ライフクリニック-日本性機能学会専門医:須田隆興、最終確認日:2026-09-14)

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