正式に処方されたバイアグラ:シルデナフィルをED:勃起不全症の患者さんが使用するのではなく、 『ED:勃起不全症ではない、比較的若年の男性』が違法な手段で入手したバイアグラ:シルデナフィルを『遊び目的』で使用する状況が、アメリカを中心とした海外で見受けられ、 性行為感染症の増加、違法薬物との併用など、副次的に様々な社会的問題を生み出しております。
バイアグラ:シルデナフィルは、ED:勃起不全症用の陰茎局所の血管拡張薬になり、 全世界中で2,500万人以上の男性に処方されていると推測されております。 本剤はイギリスなどでは既に薬局での購入ができるようになっており、 一方の日本ではバイアグラ:シルデナフィルでは無いのですが、 シアリス:タダラフィルが現在、薬局での販売が検討され始めている所でも有ります(2026年6月現在)。 しかし、こうしたPDE5阻害薬:勃起不全症改善薬の入手が簡便になる事は、むしろ社会的な危険性を招いてしまうリスクも有ります。
実はアメリカを中心にED:勃起不全症ではない、比較的若年の男性がバイアグラ:シルデナフィルを遊び目的で使用する状況が多々見受けられ、 これが今、社会的な問題となっているとの事です。 どのような社会的問題かと言うと、 バイアグラ・シルデナフィルの遊び目的での乱用が、違法薬物との併用や売買春での運用、そしてHIVや性行為感染症の増加に繋がっている可能性が有るといった問題です。
バイアグラ:シルデナフィルの入手がさらに簡便になると、こうした状況はより悪化してしまう可能性が有ります。 特に違法薬物の場合は、違法薬物の使用が薬剤性のED:勃起不全症を引き起こしやすいので、 違法薬物にバイアグラ:シルデナフィルの遊び目的での利用が伴いやすい傾向が前提として有り、 そのためバイアグラ:シルデナフィルの入手がさらに簡便になると、 違法薬物による社会の薬物汚染が一緒に進行してしまう可能生が危惧されています。
日本においてもこれは全く他人ごとではなく、不正薬物の摘発件数は本邦においても年々増加しており、 一方、日本の比較的若年層においては薬物乱用を目的としたオーバードーズの問題がすでに表出している事態となります。
こうした状況における日本でのシアリス:タダラフィルの入手の簡略化、つまり薬局での処方開始は、 先行してバイアグラ:シルデナフィルの遊び目的の利用が問題化している欧米各国の状況から見ると、 時流に逆行しているようにも思われます。
そうした状況を受けてか、インターネットにおいても、「バイアグラ シルデナフィル 遊び目的での使用」 といったクエリでの検索が散見されるようになってきました。
こちらのページではこうした状況を受けて、
バイアグラ:シルデナフィルの遊び目的での利用に関する海外の研究文献ならびにレビュー論文のご紹介をさせて頂いております。
宜しければご一読下さいませ。
こちらでご紹介する文献1.ではアメリカのロサンゼルスにおける、 遊び目的のバイアグラ:シルデナフィルの使用に関してのリスクについて研究した内容が記載されております。
近年、CDC(米国疾病予防管理センター)の調査では、50歳以上のHIVの新規診断数は安定しているという、その一方で、 比較的若年の薬物乱用集団においては、HIVのリスク指標の上昇傾向が確認されており、そうした集団の中には治療目的で処方された方ではなく、 遊び目的でバイアグラ:シルデナフィルを使用している人達が加わり始めている兆候が見受けられるとの事でした。
そうした状況を鑑みて、こちらの研究では、遊び目的でバイアグラ:シルデナフィルを使用している男性を対象として、 性的なリスク行動に関しての分析を行っております。
この報告の対象者はカリフォルニア州立大学ロングビーチ校の行動研究サービスセンター(CBRS)が運営する3つのロサンゼルス郡内のHIV予防プログラムから募集された、 『遊び目的でバイアグラ:シルデナフィルを使用した』 640人の男性になり、その平均年齢は43.97歳(18.7~70.3歳)で、 その約75%が50歳未満であったとの事でした。この分析に使用されたデータはすべて男性参加者のものであり、 これは女性参加者がバイアグラの使用を報告する頻度が非常に少なかったためとの事でした。
研究参加者の33.3%が高校卒業未満の学歴であり、またサンプルのうち結婚しているのはわずか6.4%で、全体の51.73%がホームレスの自覚があるとの事で、 低教育・低所得層においてバイアグラの遊び目的の利用が顕著であるという傾向が見られたとの事でした。
またこちらの報告ではNIDA(米国国立薬物乱用研究所)のリスク行動評価票および違法薬物・バイアグラに関する追加質問票を用いて、 社会人口学的情報や性的リスクに関するデータも収集され、 その解析には、カイ二乗検定、t検定のほか、複数のロジスティック回帰モデルが用いられたとの事でした。
その解析の結果ですが、 まず白人である事が主要なリスク因子として同定され、 また異性愛者のバイアグラ:シルデナフィルの使用者のうち、女性との売買春をしている者では、肛門性交が有意な関連因子となり、 また全体サンプルにおいて違法薬物はバイアグラ使用の有意な関連因子である事が示されたとの事でした。 違法薬物の中でも特にアンフェタミン:覚醒剤は、バイアグラ使用との間に、一貫した正の関連性も認められたとの事でした(χ 2 (1, N = 328) = 12.2、p = .0005)。
このようにアメリカ ロサンゼルスにおける『バイアグラの遊び目的での使用』は、 そのほとんどが50歳未満の男性によるものであり、 アメリカであってもほぼ全土で違法となる売買春、 また違法な薬物利用との関連性が示唆され、 バイアグラの遊び目的での使用によって、 社会的な問題が誘発される可能性が高いという問題提起がされる結果となりました。
上記、文献1.ではアメリカのロサンゼルスにおける、年齢制限を設けていない、バイアグラ:シルデナフィルを遊び目的で使用している男性における、 様々なリスクに関して報告について解説をさせて頂いており、その平均年齢は43.97歳で、低学歴・低所得な方が主体との事でしたが、 こちらでご紹介する文献2.では『高学歴な若者』つまり、男子大学生における『遊び目的でのバイアグラ:シルデナフィルなど勃起改善薬を使用した人』における、 リスクに関して検討をした内容について記載がされております。
こちらの研究の目的は、若年で健康な男子大学生における、遊び目的でのバイアグラ:シルデナフィルなどの勃起改善薬の利用における、 その特徴および関連するリスク因子を明らかにする事であり、 2006年1月から2007年5月にかけて、米国全土497の大学・学部教育機関から1,944人の男子大学生を対象として、 勃起改善薬の使用パターン、人口統計学的特性、性的行動に関する情報、このそれぞれが評価されたとの事でした。 また、大学生における勃起不全治療薬の使用状況の調査としてはこの研究が米国で初のものとの事でした。
これら男子大学生の主なバイアグラ:シルデナフィルなど勃起改善薬の入手源については、 大多数(67%)の男性が友人から入手したと回答をしており、その内50%が入手が容易であったと回答しているとの事でした。 また遊び目的で勃起改善薬を使用した男子大学生は、HIV感染状況が不明な相手との無防備な性交の割合が高かったとの事でした。
こちらのデータの解析の結果、参加者全体の4%が遊び目的でバイアグラ:シルデナフィルなどの勃起改善薬を使用した経験があり、 1.4%がなお現在もこれを遊び目的で使用していると回答しているとの事でした。 そして遊び目的で勃起改善薬を使用している男子大学生の大多数は、違法薬物とこれら勃起改善薬を併用して運用しており、 特にリスクの高い性行為での併用に関して回答をしているとの事でした。 また遊び目的でのバイアグラ:シルデナフィルなどの勃起改善薬の使用は、 薬物乱用、性的パートナー数、「一夜限りの関係」の回数、このそれぞれと独立して関連しているとの事でした。
本研究では、男子大学生であっても、遊び目的でのバイアグラ:シルデナフィルなど勃起改善薬の利用は、違法薬物などの薬物乱用と有意に関連をしているという結果を報告しており、 これは上記文献1.と大きく変わらない結論となります。 また、遊び目的でバイアグラ:シルデナフィルなどの勃起改善薬の使用をしている男子大学生は、全体から見ると少数ではあり、 これは文献1.において遊び目的でのバイアグラ:シルデナフィルを使用している人口層が低学歴の方が主体であった事とほぼ合致した内容とも思われました。
こちらの研究における最大の懸念点としては、 サンプルのかなりの割合(15%)において『ポッパー』と呼ばれる違法薬物がバイアグラ:シルデナフィルなどの勃起改善薬と併用がされている点で、 このポッパーは薬物的高揚感を目的に違法使用される事が多い成分との事ですが、内容自体は『アルキル亜硝酸塩』であり、 バイアグラ:シルデナフィルなどのPDE5阻害薬とは併用禁忌指定の成分で、 この併用は致命的な心血管合併症のリスクを高めてしまう可能生が危惧されています。
上記文献1.では年齢が制限されないアメリカ人男性におけるバイアグラ:シルデナフィルの遊び目的の使用のリスクについて、 また文献2.ではアメリカの男子大学生におけるバイアグラ:シルデナフィルなど勃起改善薬の遊び目的の使用のリスクについて、 それぞれ、その内容について解説をさせて頂きました。 こちら文献3.でご紹介させて頂きますのは、 こうしたバイアグラ:シルデナフィルの遊び目的の利用の 『規制の必要性』 について解説をしているレビュー論文になります。
こちらのレビュー論文では、 複数の研究にて、特に若年男性において、EDの治療目的ではなく、パートナーを満足させる目的でバイアグラ:シルデナフィルを使用する『遊び目的での利用』が増加を示している事がご紹介されていて、 こうした誤用はED:勃起不全症に対するスティグマ(社会的偏見)が一つの要因となっている事、 またバイアグラ:シルデナフィルが比較的安価にかつ比較的容易に入手可能である事、 特に近年では、クラブなどで違法薬物とともにバイアグラ:シルデナフィルを使用するケースが増加している事、このそれぞれに関して解説がされております。
その中で、Atsbehaらによる研究がご紹介されており、こちらの研究では65人の男性を対象とした調査がベースとなっており、 バイアグラ:シルデナフィルの遊び目的での利用はその内の66.2%、一方、きちんとした医療目的での使用は33.8%であった事から、 筆者らは、同じアメリカでも、地域によっては、すでに遊び目的のバイアグラ:シルデナフィルの利用が医療目的での利用を大きく上回ってしまっているという現状を指摘しており、 また、こうした誤用と、HIV/性感染症(STD)増加との複雑な関連性が、違法薬物との併用と共にアメリカ内の社会的な問題としてすでに顕在化している事に対して深刻な警鐘を鳴らしております。
本レビュー論文では、その結論において、 バイアグラ:シルデナフィルの遊び目的の使用などの誤用の増加は、本剤を市場から完全に排除することによって解決ができる問題ではすでになく、 公的機関がバイアグラ:シルデナフィルの使用に対する規制を導入するとともに、適切な医療目的での使用について啓発するための社会的取り組みを行うことが必要であると訴えております。 そうした一環としてバイアグラ:シルデナフィルなどの勃起改善薬がOTCなどの薬局売薬ではなく、処方箋医薬品であり続ける事は、その一助となり得るとも提言をしております。
―Q1.「バイアグラはEDじゃなくても飲んでいいの?」
A.バイアグラ:シルデナフィルは現在、日本国内でもED:勃起不全症以外に対して、その有効成分の適応が拡大されており、
肺高血圧症治療薬としても運用がされております。
しかしED:勃起不全症でも肺高血圧症でもない、
いわゆる「遊び目的での使用」は、先行するアメリカでの報告によると、
違法薬物との併用やHIV・性行為感染症の増加との関連性が高く、社会的な問題ともなっており、
EDではない方のバイアグラ:シルデナフィルの使用は危険性が高いと言って良いかと思われます。
―Q2.「遊び目的で飲むと勃起は良くなる?」
A.バイアグラ:シルデナフィルはED:勃起不全症の方が、
適応を守り、正しい用法で使用した時にその最大のパフォーマンスが発揮されます。
まったく性機能の問題が無い方においては、その効果は希薄かと思われます。
―Q3.「若い人が使うと将来的にEDになりやすい?」
A. 若い時点でバイアグラ:シルデナフィルなどの勃起改善薬を使用する事で、
将来的に器質性のEDが悪化する、あるいは引き起こされるといった明確な根拠は存在しないかと思われます。
―Q4.「お酒やドラッグと一緒に使っても大丈夫?」
A.バイアグラ:シルデナフィルなどの勃起改善薬は、お酒と併用する事でその薬理作用が低下するばかりか、
起立性低血圧などの副作用症状が引き起こされてしまう可能性があるので、本剤はお酒とは併用をされませんようお願い申し上げます。
またドラッグはもちろん違法の薬物なので、そもそもの使用が法的にも医学的にも絶対にダメですが、
違法薬物の中には『アルキル亜硝酸塩』など、バイアグラ:シルデナフィルなどのPDE5阻害薬と併用禁忌指定されている成分もあるので、
その併用はあるいは命の危険に関わってしまうというリスクもあります。何とぞ違法薬物は使用されませんようお願い申し上げます。
―Q5.「遊び目的で使う人が増えている?」
A.アメリカにおける調査では比較的若年で、低学歴また低収入の人口層で、バイアグラ:シルデナフィルを遊び目的で使用する男性が増加しており、
これが性行為感染症の増加や違法薬物との併用の傾向を招いて、顕在化した社会問題となっております。
現在アメリカでは、こうした治療以外の目的でのバイアグラ:シルデナフィルなど勃起改善薬の使用に対して抜本的な規制の必要性が叫ばれております。
1.Recreational Viagra Use and Sexual Risk among Drug Abusing Men
Journal:Am J Infect Dis. 2006;2(2):107–114. doi: 10.3844/ajidsp.2006.107.114
Author:Dennis G Fisher 1, Robert Malow, Rhonda Rosenberg, Grace L Reynolds, Nisha Farrell, Adi Jaffe
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2.Recreational Use of Erectile Dysfunction Medications in Undergraduate Men in the United States: Characteristics and Associated Risk Factors
Journal:Arch Sex Behav. 2010 Apr 1;40(3):597–606. doi: 10.1007/s10508-010-9619-y
Author:Christopher B Harte, Cindy M Meston
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3.Is recreational use of sildenafil a new trend?
Journal:Ann Med Surg (Lond). 2022 Sep 16;82:104659. doi: 10.1016/j.amsu.2022.104659
Author:Muhammad Hashir Nazir, Muhammad Ahmad, Saleha Azeem, Andrea Salonia
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(記載:新宿ライフクリニック-日本性機能学会専門医:須田隆興、最終確認日:2026-06-08)
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