女性パートナーによる不倫などの不貞行為は、男性に深い心の傷を与える事によって、 男性側の心因性のED:勃起不全症の発症契機となってしまう可能性が有ります。 こうした不倫などの不貞行為により傷ついた心のセラピーとしては、 カップルでのセラピー、またはグループでのサラピーがそれぞれ有り、 報告上ではどちらにも一定の効果が認められております。
当新宿ライフクリニックは日本性機能学会専門医が主催するED:勃起不全症の専門クリニックであり、 日毎にEDの患者さんに対してバイアグラ:シルデナフィルなどのED薬を処方させて頂いております。
そうしたEDの患者さんの中においては、当院の自験例としても、女性パートナー側の不倫によって、 深く心が傷ついた事によって発症したと思われる心因性のED:勃起不全症の方が散見されております。
近年、そうした方が増加している傾向が有るのか 「不倫 セラピー 勃起不全」と言ったクエリの取り合わせによるインターネット検索も折々に見受けられているようです。
こうしたED男性患者さんの傷ついた心へのセラピーは、 パートナー女性なども交えての心理療法士によるものが主体となるので、 男性専門のEDクリニックである当新宿ライフクリニックではこれを行う事は出来ないのですが、 こうしたセラピーについての質問をクリニックにて折々に頂く事がございますので、 こちらのページでは、そちらを踏まえ、不倫などの不貞行為によって傷ついた心のセラピーに関して記載がされている文献を、 新宿ライフクリニックの日本性機能学会専門医からご紹介をさせて頂いている次第です。
こうしたセラピーは基本的にはカップル単位で行われるものが主体のようですが、
グループ単位で行われているものも有るようですので、
以下、それぞれの内容に関して解説をしている文献をセレクトさせて頂きました。
宜しければご一読くださいませ。
こちら文献1.では不倫などの不貞行為によって傷ついてしまった心に対する『カップルセラピー』に関して、ご紹介をさせて頂いております。 カップルセラピーとは、この場合、不倫をした人と不倫をされた人のカップルで受ける心理療法の事になります。
実は不倫や浮気などの不貞が関与するケースにおけるセラピーの治療転帰について検討をした研究はとても限定的で、 こちらでご紹介する研究は現在からだいぶ遡って2010年の報告内容となっております。 ただ、不倫に至る環境や文化的背景は本ページ執筆時点の2026年とこの2010年とで大きな差異があるとも思われません。
こちらの研究は、ドイツおよびオーストリアにおけるカップルセラピーを対象としたサンプルの二次解析に関するもので、 その内容としては、カップルの関係性において不倫や浮気などの不貞行為の問題があると報告がされた145組のカップルと、 不貞行為以外の理由でセラピーを受ける事になった385組のカップルとを統計的に比較した内容となっております。
これらのグループに対して、それぞれ階層線形モデリングに基づく統計解析を行った結果、
カップルセラピーによる治療開始時点では、パートナーによる不倫や浮気など不貞を経験したカップルでは、そうした経験が無いカップルに比較して、
有意に高い心理的苦痛が存在し、抑うつ症状も多く報告されている事が明らかだったとの事でした。
しかし、不倫や浮気などの不貞を経験したカップルでは、カップルセラピーの結果、セラピーの終了時点で、心理的苦痛・抑うつ症状は有意な改善が見られ、
また、こうした改善効果は治療終了後の6か月後のフォローアップ時点でも有意に継続がされていたとの事でした。
※階層線形モデリングとは、学校の生徒や企業の従業員などにおいて、
グループ内の個人やチーム・クラス等のグループ間など、異なる階層構造を持つデータを分析するための統計手法の一つになります。
なお性的満足度については、こうした不倫や浮気など、不貞の有無による統計的な差異は認められず、 また欠測データが相当数存在はしていたものの、感度分析の結果、上記の主要な結果にこの欠測データは、ほぼ悪影響を及ぼしていない事が示されたとの事でした。
本研究の結果としては、不倫や浮気などの不貞行為が生じたカップルにおいても、 カップルセラピーは概して前向きな治療転帰が得られる事を示していると帰結しております。
ただ私見では有りますが、カップル単位のセラピーが向いているかどうか、あるいは行えるかどうかは、 当事者達のパーソナリティも関わって来る可能性があると思われ、 そのため、以下 文献2.ではカップル単位ではなく、 グループ単位でのセラピーに関する報告についてご紹介をさせて頂いております。
こちら文献2.では不倫などの不貞行為によって『傷ついた心』に対する、グループでのセラピーの研究に関して、ご紹介をさせて頂いております。 グループセラピーとは上記のカップルセラピーとは違い、この場合は不倫をされた人が集まってグループを形成し、行う心理療法の事になります。
上記文献1.でも申し上げましたが、不倫や浮気などの不貞が関与するケースにおけるセラピーの治療転帰について検討をしている研究はとても限定的で、 上記のカップルセラピーに関する報告が2010年のものになるのですが、 こちらのグループセラピーに関しての報告は2010年からだいぶ飛んで2024年のものになります。
ただ2024年のこの報告がされた段階においても、カップルにおける不貞行為を経験した個人に対してのグループ療法がどの程度有益であるのかについては、 それまで十分に検討はされていない状況のようでした。
こちらの研究では、まずカップル内でパートナーの不貞行為を経験した『個人』を対象とした短期のグループ介入セラピープログラムを開発し、 続いて、その効果を受容性、実施可能性、測定指標の妥当性、および限定的な有効性の検証を、もって評価をしたとの事でした。
最終的な参加者登録者は女性20名、男性4名であり、その平均年齢は29.95歳(SD=12.3)、24名が介入前後の評価を完了し、 そのうち20名がフォローアップ評価にも参加したとの事でした。
参加者には、グループセラピーの介入前、そして介入後、そしてフォローアップの各時点で、 抑うつ、不安、PTSD症状、関係性に関する自己効力感、相手を許す事、などに関する意思決定を含んだ質問紙票に回答をしてもらい、 また、フォローアップ時点ではインタビュー調査も実施されたとの事でした。
本研究で用いられたクローズド形式のグループセラピーは、週1回・90分のセッションを全8回実施するプログラムであり、 グループセラピーのプロセス要素は、解決志向型アプローチに基づいており、心理教育の要素としては、マインドフルネス、個人の価値観への内省、不貞行為に寄与した要因、 そして「相手への許し」が含まれていたとの事でした。
セッション毎の評価得点からは、介入全体、セッションの内容、提示された目標のそれぞれに対して高い受容性が示され、 インタビュー結果においては、「思考や感情への対処」「不貞行為への理解」「相手への許し」が、特に有益な内容として挙げられ、 グループからの支援やグループプロセスそのものも、いずれも肯定的に評価がされていたとの事でした。
統計的解析の結果としては、反復測定による多変量分散分析の結果 『心理的症状』 および 『出来事の重要性』 がセラピーによって有意に低下を示し、
『自己効力感』の有意な向上が示されたとの事でした。また使用された測定尺度はいずれにおいてもグループセラピーに対する十分な信頼性が示され、
これらの結果から、上記文献1.のようなカップルセラピーの実施が困難な状況においては、
不貞行為による心理的影響に対処するための代替的な治療形式として、グループセラピーも有用である可能性が示唆されたとの事でした。
※多変量分散分析:MANOVAとは、1つ以上の独立変数(グループ)が、
2つ以上の従属変数(目的変数)の平均ベクトルに与える影響を同時に解析するための統計手法の事になります。
―Q1.「不倫が原因でED(勃起不全症)になる事はありますか?」
A.はい、あると思われます。
パートナーの不倫によって発生する強いストレスや抑うつ、不安、PTSD症状は、
男性側には心因性ED:勃起不全症の発症やその悪化に影響を与えてしまう事が想定されます。
―Q2.「不倫後のセラピーでEDは改善しますか?」
かならずしもセラピーでEDが改善する訳では有りませんが、
パートナーの不倫によって発生した『強い心因』以外のED:勃起不全の発症原因が無いようであるならば、
セラピーによる心理状態の改善が、EDの改善に繋がって来る可能性は十分にあるかと思われます。
―Q3.「カップルセラピーとグループセラピーはどちらが良いですか?」
A.基本的には不倫をしたパートナーと一緒に受けるカップルセラピーの方が一般的な様ですが、
2010年の研究ではカップルセラピーの有効性が、
そして2025年の研究ではグループセラピーの有効性がそれぞれ報告されており、
もしパートナーがカップルセラピーを受ける事を拒否するなど、
カップルセラピーへの参加が難しいようであれば、
まずは個人で参加するグループセラピーからアプローチしても宜しいのではないか思われます。
―Q4.「ED治療薬(バイアグラなど)とセラピーは併用ができますか?」
A.併用は可能です。
心因性のEDにしてもそれを放置し、失敗の事象を重ねる事によって心因の深化を招いてしまうより、
バイアグラ:シルデナフィルなどのPDE5阻害薬による一過性の改善と並行して、
セラピーによる心因の改善を目指すのは、むしろ望ましい組合わせとも思われます。
1.Outcomes of couples with infidelity in a community-based sample of couple therapy
Journal:J Fam Psychol. 2010 Apr;24(2):212-6. doi: 10.1037/a0018789.
Author:David C Atkins 1, Rebeca A Marín, Tracy T Y Lo, Notker Klann, Kurt Hahlweg
※原著はこちら
2.Dealing with couple infidelity in romantic relationships: A group intervention feasibility study.
Journal:Family process. 2024 Dec;63(4);1907-1925. doi: 10.1111/famp.13029.
Author:Karen Ripoll-Núñez, Kristina Coop Gordon
※原著はこちら
(記載:新宿ライフクリニック-日本性機能学会専門医:須田隆興、最終確認日:2026-04-30)
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