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『お金持ちはED:勃起不全になりにくい事に関して記載がされた文献を新宿ライフクリニックの日本性機能学会専門医からご紹介』

【専門医解説:お金持ちはEDになりにくい?所得と勃起不全との意外な関係性に関する医学研究を解説】


所得と勃起不全との意外な関係性

米国人の8125万5155人を代表するサンプル3679人の調査にて低所得:貧困と認識される方は、高所得:お金持ちと認識される方と比べて、 ED:勃起不全症発症の可能性が有意に高い事が示されたとの事でした。 また、米国の国民健康栄養調査のデータから抜き出された1739名の調査にて、 お金持ちの方は、貧困の方よりも、良好な勃起機能である可能性が高く、 またお金持ちな程、EDの罹患が少ない事が認められたとの事でした。



ED:勃起不全症は男性にとって非常に身近な健康問題であり、 日本人では、なんと1400万人に及ぶED患者さんが存在すると推定されております。 これは日本人の老いも若きも含めた全男性人口5900万人の内の23%、 つまり約5人に1人という非常に高い有病率になります。


このED:勃起不全症を発症する因子、つまりリスクファクターは主に、 糖尿病や高血圧などの生活習慣病、喫煙などの慢性的な嗜好習慣、肥満や高齢などの身体条件、このように様々なものがございますが、 近年の研究では、収入などの社会経済状況(SES:Socioeconomic Status)もまたED:勃起不全の発症に関連をするという可能性が指摘されております。 つまり、簡単に言うと「お金持ちの男性ほどEDになりにくい傾向がある」という可能性が複数の研究にて提示されているのです。


これまでの研究では、低い社会経済的地位の方は心血管疾患を含む多くの疾患リスクを持つ事が指摘されており、 中国における研究では短期的な社会経済的地位の改善によって、長期的な狭心症や心筋梗塞などの心血管疾患の転帰が有意に改善される事が報告されており、 EDが血管機能障害として将来的にこれら心血管疾患を発症する危険性を警告する『警告疾患』である事など、 EDと心血管疾患の密接な関係性を踏まえると、 EDもまた社会経済的地位によってその発症が左右されるという可能性が浮かび上がります。 つまりお金持ちはEDになりにくいという可能性についてです。


こうした状況のロジックとしては、 これまでの研究からは、貧困である事が持続的なストレス経験から生理的および感情的負担を蓄積させ、 アロスタティック負荷システムを調節不全にしてしまう事で、身体機能を低下させ、ED:勃起不全などの疾患の発症が引き起こされてしまう事などが想定されております。
※アロスタティック負荷(Allostatic Load)とは、慢性的なストレスにより身体システムが過負荷・脆弱化を示す事によって、 心血管疾患、認知症、がん、腎臓病などの病的な状態へ移行するリスクが蓄積されるという、その負荷自体の事を示す言葉になります。 適応のための動的な調整(アロスタシス)が限界を超えた時にこの負荷が発生いたします。


最近のGoogle検索などで 「お金持ち ED 勃起不全症 なりにくい」 などのクエリのセットが見受けられるのは、 こうした報告の蓄積によって一般の方の関心が高まっている事が一つ影響しているのかも知れません。


こちらのページではこうした状況を受けて、お金持ちはEDになりにくいかどうかについて研究をしている海外の学術論文を2つピックアップし、 皆さんにわかりやすく、新宿ライフクリニックの日本性機能学会専門医から私見を添え解説をさせて頂いております。


一つ目にご紹介する文献1.においては、米国の大きな人口を代表している全国調査の非常に大きなデータから、所得が少ない、 つまり貧困だとED:勃起不全症になりやすいかどうかについて解析したものを、 二つ目にご紹介する文献2.においては、文献1.とは逆に、米国の国民健康栄養調査のデータから、お金持ちなほどED:勃起不全になりにくいかどうかについて解析したものを、 それぞれご紹介させて頂いております。
宜しければご一読くださいませ。


1.【文献1.所得が少ない人はお金持ちの人に比べてED:勃起不全症になりやすい傾向がある】

お金持ちでない人はED:勃起不全になりやすい傾向がある

こちら文献1.でご紹介する研究は、社会経済的地位(socioeconomic status)と勃起不全症(erectile dysfunction:ED)との関連性を調査する事を主目的としており、 米国人の8125万5155人を代表するサンプルから3679人の回答者が最終的な解析対象になるというかなり大がかりなもので、 この対象男性の平均年齢は44.4歳(標準誤差 SE = 0.365)だったとの事でした。


ED:勃起不全症に関しての調査はごくシンプルに、 ①正常:常に勃起を維持できる、もしくはだいたい勃起を維持できる。 ②勃起不全(ED:erectile dysfunction):勃起を時々維持できる、または全く勃起を維持できない。 の2群に分類して解析をされており、これらのデータは質問票を用いて集められたとの事でした。


これを多モデルアプローチを用いた多変量ロジスティック回帰分析を用いて解析したとの事で、 その回帰分析の結果、低所得:貧困と認識される回答者は、高所得:お金持ちと認識される回答者と比較して、 ED:勃起不全を報告する可能性が有意に高い事が示されました。 調整オッズ比(AOR) = 1.95、95%信頼区間(CI) = 1.28–2.96、p = 0.003


このように単純に所得の多寡とEDの有る無しで、解析をした結果においても、 貧困な方はお金持ちの方に比べて明らかにED:勃起不全になりやすい傾向がある事が示される結果となりました。


続いて、次の文献2.においてご紹介する研究は、 逆にお金持ちである事が、EDの発症を遠ざけるのかどうかについて米国の国民健康栄養調査のデータから検討をしているものになります。


2.【文献2.所得が多い、つまりお金持ちはEDになりにくい傾向がある】

お金持ちはEDになりにくい傾向がある

上記、文献1.では貧困なほどEDになりやすいという傾向に関して解説をさせて頂きました。 一方、こちらでご紹介する文献2.では、逆にお金持ちである事で、ED:勃起不全症になりにくくなるのかどうかを検討した研究に関してご紹介をさせて頂いております。


この研究は、米国疾病予防管理センターの国立健康統計センターが層化多段階確率クラスターサンプリング設計を用いて実施する 『国民健康栄養調査(NHANES)』 のデータを元に、 解析が進められており、本調査は、本来的には米国の非施設居住者の健康状態または栄養状態を評価するために使用されているものとの事でした。


お金持ちではない、むしろ貧困であるという状況に関しては、PIR(Poverty Income Ratio:貧困所得比率)という指標にて区分がされており、 このPIRは米国において、生活保護や福祉サービスを必要とする世帯を特定し、それに対して支援を送るために使用がされている指標との事で、 世帯の総収入を貧困と判断される総収入の値(最低限の生活水準を維持できる額で世帯人数によって変動します)で割った値になり。 PIRが1.0未満は絶対的貧困状態と判断されます。 本研究ではこのPIRの2未満を低SESつまりお金持ちではないというより『貧困である』とカテゴリーし、線引きをして解析を進めております。


こちらの分析には合計1739名の参加者が含まれ、そのうち153名がED:勃起不全症と診断されたとの事で、 EDのない男性と比較して、EDのある男性は、年齢が高く(43.98 vs 37.74、P<0.0001)、教育水準が低い(P < 0.001)傾向が見られたとの事でした。


ED:勃起不全症の有病率の比較は、カテゴリ変数にはχ2検定、連続変数にはスチューデントのt検定、正規分布しない連続変数には Mann-WhitneyのU検定がそれぞれ使用され、 多変量ロジスティック回帰分析はPIRとED:勃起不全症との間の関連性を検討するために使用され、 制限付き三次スプライン(Restricted Cubic Spline:RCS)はPIRとED:勃起不全症との間の曲線形状の可能性を探るための分析に用いられたとの事でした。
※制限付き三次スプライン(Restricted Cubic Spline: RCS)とは、統計学において、説明変数と目的変数の間の非線形な関係を、滑らかかつ柔軟にモデル化するための手法との事です。


この解析の結果、 多変量ロジスティック回帰分析にて、PIRが高い、つまりお金持ちの方は、PIRが低い、つまり貧困の方よりも、良好な勃起機能である可能性が高いとの事でした。 (オッズ比(OR) = 0.49 95%信頼区間 = 0.31–0.78 P = 0.005) また、制限付き三次スプライン解析においては、PIRとED:勃起不全症との間には負の非線形相関が認められ、 勃起不全症を報告する確率は所得レベルの上昇とともに徐々に減少した、つまり所得が高いほど、お金持ちな程、 EDが少ないという事が認められた、との事でした。


3.【総合まとめ. お金持ちはED:勃起不全症になりにくいという研究報告に関して】

  • ―文献1. 米国人 8125万5155人を代表するサンプル3679人の調査において、 データの回帰分析の結果、 低所得:貧困と認識される回答者は、高所得:お金持ちと認識される回答者と比較して、 ED:勃起不全になりやすいという可能性が有意に高い事が示されたとの事でした。

  • ―文献2. 米国の国民健康栄養調査のデータから抜き出された1739名の登録者における調査にて、 多変量ロジスティック回帰分析の結果 PIR(Poverty Income Ratio:貧困所得比率)が高い、 つまりお金持ちの方は、PIRが低い、つまり貧困の方よりも、良好な勃起機能である可能性が高く、 制限付き三次スプライン解析においては、勃起不全を報告する確率は所得レベルの上昇とともに徐々に減少した、 つまり所得が高いほど、お金持ちな程、EDの発症が少ない事が認められたとの事でした。

  • ―総合まとめ. 貧困な状況ではED:勃起不全の発症が有意に多く、一方、お金持ちな程、ED:勃起不全の発症が少ない。 つまり『お金持ちはEDになりにくい』というこの一連の傾向は、 冒頭でご紹介したように、貧困である事がストレスを累積させ、これが生理的および感情的負担となって、最終的にED:勃起不全などの疾患の発症に繋がるという可能性、 また逆に、お金持ちな人は健康や疾病予防、もしくは発症した疾病、これらにコストをかける事が出来るので、健康状態を良好に保ちやすいという可能性、 これらの可能性がそれぞれに影響して、こうした傾向を生み出しているものかと存じます。 決して保有資産が多い事が、ED:勃起不全の発症率の低下にダイレクトに繋がっているわけではなく、 ストレスや健康管理などの中間因子が存在する事で、こうした状況が生まれているという事のようです。

4.【Q&A|お金持ちはED:勃起不全症になりにくいという事に関して、よくある質問】


―Q1.『お金持ちはEDになりにくいのですか?』
A.米国の国民健康栄養調査のデータから抜き出された1739名の調査にて、お金持ちの方は貧困の方よりも、 良好な勃起機能を報告する可能性が高く、またお金持ちな程、ED:勃起不全の発症が少ない事が認められたと報告がされております。


―Q2.『貧しいとEDになりやすいのですか?』
A.米国人8125万5155人を代表するサンプル3679名の調査にて、低所得:貧困と認識される回答者は、 ED:勃起不全を報告する可能性が有意に高い事が示されたとの事でした。


―Q3.『なぜ収入がEDに影響するのですか?』
A.収入、保有する資産が多い事がED:勃起不全発症の低下にダイレクトにつながっている訳ではなく、 お金持ちな人にはお金持ち特有のストレスがあるにしても、 貧困な人に比べると、慢性的ストレスが少ない可能性がある事(衣・食・住・養育などの費用に関しての心配からのストレスなど)、 またお金持ちな人は健康の維持にコストをかけられる事(運動の機会や時間、受診や服薬のコスト、また健康維持に関する知識の習得など) これらがお金持ちにおけるED:勃起不全症の発症率の低下に関わっているものかと思われます。


―Q4.『食生活はEDに関係しますか?』
A.食生活はEDに関係します。 ラーメンやファーストフードなど、比較的安価に食べられるものは脂質や糖質の割合が高い傾向があり、 ED:勃起不全症の主要リスクでもある生活習慣病の発症につながりやすいというリスクが有ります。 その一方で新鮮な野菜や栄養価・品目の多い食事はこうしたED:勃起不全症のリスクファクター軽減につながりやすい傾向がありますが、食事に対するコストを上げてしまう傾向が有ります。


―Q5.『ストレスはEDの原因になりますか?』
A.ストレスはEDの原因になります。 持続的なストレス経験はアロスタティック負荷システムを調節不全にしてしまう可能性が指摘されており、こうした慢性ストレスによる累積的な生理的および感情的負担は、 身体機能の低下と連動してED:勃起不全の発症に繋がってしまう恐れがあります。 このアロスタティック負荷(Allostatic Load)とは、慢性的なストレスにより身体システムが、 過負荷・脆弱化を示す事で、心血管疾患、認知症、がん、腎臓病などの病的な状態へ移行するリスクが蓄積される状態におけるその負荷自体の事を示した言葉になります。


―Q6.『EDを予防するには何が重要ですか?』
A.EDを予防するために重要な事は、本質的に生活習慣病の予防に相似しており、 代表的には禁煙。栄養価が高く、バランスが良く、脂質・糖質過剰にならない食事。 適切な毎日の持久力運動。適切な体重の維持。 睡眠時無呼吸症候群などEDリスクファクターへの治療介入。 適切なストレスマネジメント。 ざっくりとはこれらがEDを予防するために重要な要素と言えます。


【引用文献】


1.Exploring the relationship between socioeconomic status and erectile dysfunction: an analysis of the National Health and Nutrition Examination Survey
Journal:International Journal of Impotence Research volume 35, pages478–483 (2023).
Author:Eric J. Macdonald, Jacob M. Gaines, Joseph I. Kim & Darius A. Paduch
※原著はこちら


2.The role of socioeconomic status and oxidative balance score in erectile dysfunction: A cross-sectional study
Journal:Heliyon Volume 9, Issue 11e22233November 2023
Author:Yanfei Fanga, Zhong Dongb,Ting Huanga,Lei Wanga,Wentao Fana,Bin Wanga,Qing Yanga,Min Xua,Dong Lid,Yongjin Fangd,Zekun Xu
※原著はこちら


(記載:新宿ライフクリニック-日本性機能学会専門医:須田隆興、最終確認日:2026-08-17)

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