エストロゲン(女性ホルモン)は、 女性に比べればとても少ない量ですが、男性の体でも造られています。 この物質は男性の骨の維持に関わるなど重要な役割も果たしていて、男性にとっても必要かつ重要なものです。 骨粗しょう症の男性でエストロゲンの内分泌量がとても少ない場合、これを治療の為に補充する事も検討されます。
本稿ではこうした内容に関して記載しております。 その他、アンドロゲン(男性ホルモン)と女性の関わりに関しても記載しております。
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エストロゲンはいわゆる女性ホルモンと呼ばれているもので、
女性の体では主に卵胞という所から分泌されています。
女性の体を女性らしくしたり、生理を調整したりと、
様々な役割を果たしています。
この物質は、果たして男性の体でも造られているのでしょうか?
実は作られています。
ただ男性は卵胞を持っていないので、
これを何処で作るのかと言うと、
副腎と呼ばれる腎臓の上にちょこんとついている臓器、
もしくは脂肪組織で作られています。
そして、何を材料にこれを作るのかと言うと、 なんと、テストステロン、つまり男性ホルモンから作るのです。 アロマターゼという酵素を利用して、男性ホルモンから女性ホルモンを作るのですが、 考えてみると少し不思議な気がしますね。
その作られている量はとても少ないです。 更年期の女性レベルの産生量と言われています。 しかし、量は少ないとは言え、実はとても重要な役割を果たしています。
前項にて、エストロゲンは少ないけど男性の体でも作られているという話をしましたが、 果たして、この 『女性の体を女性らしくする役割のホルモン』 は男性の体に必要なのでしょうか?
実は 『少ないながら』 も必要なのです!
一例を挙げますと、
男性の骨量の維持に男性ホルモンは重要な役割を果たしているのですが、
この骨量の維持には女性ホルモンも必要なのです。
これが必要量を下回ってしまうと骨を維持するのが難しくなってしまうのです。
この 『少ないながら』 というのが実は重要で、
これが 『多くなってしまう』 とどうなってしまうのか?
骨を維持するには都合が良いのですが・・・
実は必要量以上になってしまうと、様々な不都合が発生してしまいます。
まず女性らしい体になってしまいます。 一例を挙げると、 『女性化乳房』 というものがあり、 女性のように胸が膨らんでしまいます。
またED/勃起不全などの性機能障害が引き起こされてしまいます。 その他にも、様々な体への悪影響が有りますので、 男性の体の中でこのエストロゲンの量は厳密に調整されています。
前項にて少ないながらもエストロゲンが実は重要な役割を果たしていると述べましたが、 それでは、女性ホルモンが男性のお病気の治療に使用される事は有るのでしょうか?
実はあります。
両性混合ホルモン製剤という、言わば男性ホルモン、女性ホルモンのミックスされた薬品が有り、
このクスリは男性では骨粗鬆症に対する薬剤適応が有ります。
このクスリは男性に適応がある女性ホルモン配合製剤として、とても珍しいものです。 前項で紹介させて頂きましたが、 エストロゲンは男性の骨量の維持に重要な役割を果たしており、 これが必要量を下回っている骨粗鬆症は、その補充を検討する必要が有るのです。
本来、骨粗鬆症は女性の方が頻度が高いお病気ですが、
骨粗しょう症を原因とした男性の骨折は、女性よりも予後が悪くなる事があって、これに対する適切な治療の必要性が叫ばれています。
そうした加療の一環として、こうした投薬も検討されるという訳です。
女性ホルモンと男性の関わりにはこうした、お病気の治療的側面もあるのですね。
エストロゲンと男性との関わりを解説させて頂きましたが、
こうなると、逆に
「男性ホルモンの方は女性に必要なの?」
こんな疑問がわいてくるのではないでしょうか?
じつは男性ホルモン:アンドロゲンは、女性にとっても必要です。
ただ、その必要量はやはり男性に比べると、とても少ないものです。
男性ではアンドロゲンは主に精巣で作られていますが、 女性では卵巣と副腎で作られています。
どんな役割を果たしているのかと言うと、 主に筋肉や内臓などの組織の増殖、肥大に関わっています。 とても重要な役割ですね。
重要な役割は有るけれど、この場合も 『男性に比べると、とても少ない』 と言う所が大切で、 もし必要量より 『多くなってしまった』 場合、 筋肉の増殖などには都合が良いのですが、 女性の体にとっては様々な障害が発生します。
代表的にはヒゲが濃くなってしまったりと、体が男性っぽくなってしまう事が有ります。 また 生理に問題が生じたりと、 多岐に渡る悪影響が危惧されます。
つまり、
男性にとっての女性ホルモン、
女性にとっての男性ホルモン、
どちらにとっても大事なものだけど、必要なのは 『少しの量』 という事ですね。
(記載:新宿ライフクリニック-日本性機能学会専門医:須田隆興、最終更新日:2019-03-12)
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