『バイアグラの他国における状況とは?バイアグラの外国との5つの違い』

外国との違い

バイアグラはファイザー社が開発した、世界で最初の勃起改善薬です。 もちろん、日本以外の外国でも広く処方されており、 全世界規模でEDに苦しむ数多くの患者さんを救っております。


日本と他の国とでは、体格、食習慣、気候など様々なものが変わってきます。 また同じ病気であっても、その発生頻度が変わってきます。


全世界的にファイザー社のバイアグラという製剤規格は一緒なのですが、 そうした様々な影響もあって、本剤を取り巻く状況は、実は日本と他国とで大きな違いが有ります。 本稿ではその違いを5つの内容に纏めて記載しております。 ご一読くださいませ。


<当ページのもくじ>

  1. 【用量の違い】
  2. 【慎重投与の違い】
  3. 【禁忌における違い】
  4. 【使用頻度の違い】
  5. 【効果の違い】

1.【用量の違い】

バイアグラは広く外国でも処方されていますが、最大服用用量が日本と他国では変わってきます。


例えばアメリカでは本剤は一日当たり100mgまで服用可能であり、 そのため100mgの錠剤もあります。


一方、日本では一日当たり50mgまでしか服薬が出来ず。 錠剤も50mgまでしか有りません。


こうした薬剤の用量はなぜ国によって差が生まれるのでしょうか?


日本に海外の製薬会社の製品が入ってくる場合、 処方が開始される前に、対象者を日本人とした様々な検討がされます。 こうした検討の結果、日本人が安心して使用できる製剤の量が規程されるのです。 その結果、こうした外国の方との使用する用量のギャップが生まれますね。


こうしたギャップを生み出す要因は数多ありますが、 その中の一つとしてわかりやすいのは 『体格差』 です。 日本人の中でも、小児にお薬を投与する場合は、その体格に基づいて量を決める事が多く、 これによって小児と大人との投薬量の差が生まれます。


例えば前出のアメリカとの体格差ですが、 平均身長的にはアメリカ人男性178.9cmに対して日本人男性170.7cmと大きな差異が無いようにも思われますが、 一方、体格をより直裁に表現する平均体重においてはアメリカ人男性87kgに対して、日本人男性64kgと、とても大きな差異があり、 これによるとアメリカ人は平均値で日本人の約1.4倍ほど大きい計算になります。


もちろんこれだけでは有りませんが、こうした状況の差異なども総合的に反映され、 他国との服薬用量の違いが発生します。


2.【慎重投与の違い】

バイアグラなど医師が処方する薬剤には 『慎重投与』 という、 処方可能だけれども、慎重に投与する必要のある、病気または状態が有ります。 実は、この薬の慎重投与に属する病気には、外国との間で頻度の開きが大きいものが有ります。


その代表としてはペイロニー病、鎌状赤血球貧血症、消化性潰瘍が有ります。


ペイロニー病はペニスに硬い 『こぶ』 のようなものが出来て、 この 『こぶ』 が勃起時にペニスを引っ張るので、勃起の際に痛みを感じます。 この病気が慎重投与に加えられている理由としては、 本剤の勃起改善効果に伴う 『痛み』 が危惧されるからです。


ペイロニー病は、我々東洋人にとても少なく、 圧倒的に欧米系白人に多い傾向が有ります。 つまり欧米系白人に本剤を処方する際には、 日本人よりも意識する必要のある疾患と言えます。


鎌状赤血球貧血症は、本来、円座のような形の赤血球が、鎌のような、三日月のような形になり、 貧血を伴う病気です。 この病気が慎重投与に加えられている理由としては、 本剤の使用で 『持続勃起症』 という副作用を引き起こしやすくなるからです。


この病気もまた、我々東洋人にとても少なく、 圧倒的に熱帯アフリカもしくは、 そこにルーツのある黒人種の方に多い傾向が有ります。 つまり黒人種の方に本剤を処方する際には、 日本人よりも意識した方が望ましい疾患です。 また同じ黒人種の方でも出身国やルーツに関してお伺いする必要が有ります。


消化性潰瘍は、実は皆さんご存じの胃潰瘍や十二指腸潰瘍などをまとめて示す疾患名で、 取り込んだ食物の通り道である、消化器に出来る潰瘍の総称です。 本疾患が慎重投与に加えられている理由としては、 本剤の使用で、他の薬による 『出血しやすさ』 を強めてしまう事が有るからです。


この病気は上記のペイロニー病や鎌状赤血球貧血症と違い、 実は海外の方に比較して、圧倒的に日本人が多いとされています。


このように国によって注意すべき 『慎重投与』 は、その頻度にギャップがあります。


3.【禁忌における違い】

バイアグラなどの医師が処方するお薬には 『禁忌』 と言って、 絶対にそのお薬を使ってはいけない、 もしくは使用すると危険であるという内容に関して指定しているものが多いです。 実は本剤の禁忌に関しても、他国との状況の違いが有ります。


本剤の禁忌の代表格と言えば、虚血性心疾患に使用される、いわゆる 『ニトロ』 と称される、、 一酸化窒素供与剤ですが、この虚血性心疾患もまた、外国との発生頻度に差が有ります。


ほとんどの虚血性心疾患は冠動脈の動脈硬化が進行する事によって発症しますが、 ここに 『ERA-JUMP 研 究』 という、日本人とアメリカ在住の白人種、またハワイ在住の日系人における、 虚血性心疾患の発症部位である冠動脈の動脈硬化を調べたものが有ります。


その研究の結果、なんとアメリカ在住の白人種は、日本人より3倍もの冠動脈の動脈硬化所見が見られたとの事です。 もし虚血性心疾患の発症に至れば、その後は 『ニトロ』 を利用、もしくは頓服する事になりますので、 この疾患を中心に考えると、アメリカ在住の白人種は日本人より本剤の禁忌に抵触しやすいと言えます。


このように本剤の禁忌に抵触する頻度も、外国との間で差があるのですね。


4.<【使用頻度の違い】

バイアグラなど勃起改善薬は、国際的に用法上、一日一回一錠、一種類までの服用になりますが、 これを月に何日使うかなどの使用頻度は日本と他国とで違いが有ります。


実は性行為すなわちセックスの頻度は、国によって非常に開きが有ります。 南米や東欧/ロシア、イタリア等ラテン系ヨーロッパなどにおいては、 性行為の頻度は国際的に高い傾向が有ります。


一方で日本など東アジアは、世界的にセックスの頻度が低いエリアとして、 統計上認識されています。 特に日本はその中でも更に低い傾向です。


バイアグラは前提としてセックスの時に使用する薬剤になるので、 その使用頻度は、こうしたセックスの頻度に依存する傾向があります。 すなわち外国においては、EDの罹病人口に対する本剤の使用頻度は、 日本より高い傾向に有ります。


こうした状況は、一説には日本の居住環境が比較的小さいために、 セックスをし難いからとも言われています(他の家族の耳目を避けにくいという事ですね)。 また、その他の原因としては性に関する文化的背景の違いも有ります。 日本人はラテン系やスラブ系に比較して、性に関して閉鎖的な傾向が否めません。


5.【効果の違い】

最後にバイアグラの効果の違いですが、 本剤の薬効に日本人と外国の方とで違いがあるのでしょうか?
これは結論としては 『ある』 可能性が高いです。


本剤はEDに対して使用するお薬ですが、 実はこの疾患は、多くの因子によって発生し、そして増悪していきます。 また、このEDの増悪に応じて勃起改善薬の効果も減退します。


こうした因子の代表格としてあるのが 『加齢』 です。 加齢はEDを発症・増悪させる因子として非常に一般的ですが、 この人口における高齢者の比率というのは国家間でバラバラで、 その中で日本は、世界第一の高齢者大国という位置にいます。


つまり加齢というポイントで俯瞰した場合、高齢人口層が圧倒的に多いので、 日本人は総体としては外国の方に比較して、勃起改善薬は効きにくい傾向にあると言えます。


また 『糖尿病』 もEDの発症・増悪因子として強力なものですが、 糖尿病患者さんの人口も国によって開きがあり、 その中で日本は全世界で6番目の糖尿病人口を抱える糖尿病大国という位置にいます。


日本の人口が全世界で10番目くらいになるので、 人口比から言っても、日本人の糖尿病の有病率は他国よりも高いレベルです。。


すなわち糖尿病というポイントで俯瞰した場合も、糖尿病有病率が高いので、 日本人は総体として外国の方に比較し、勃起改善薬が効果を発揮し難い傾向があると言えます。


このように薬効に関しては、他国の人の方が出やすい可能性が示唆されます。



『まとめ』

以上、5項目に渡り、日本と外国におけるバイアグラの状況の違いを解説指せて頂きました。


用量の違いはあれども、ファイザー社のバイアグラという製剤の規格は、 どこの国に行っても変わるものでは有りません。 しかし、用量以外にも慎重投与・禁忌・使用頻度・効果など多岐に渡る内容で、 日本と他の国との間に差異があるのはとても興味深い事です。


これらの差異は基本的には、体格の違いであったり、その国ごとの疾患の有病率や、ある人種に特有に発生する疾患の影響、 また高齢者人口比など、本剤を取り巻く環境がその殆どを規程していると言えます。


情報ネットワークの緊密化、移動コストの低下など様々な要因によって世界は日々 『狭く』 なって来ています。 当院にも中国を始め、外国籍の方が多くいらっしゃる様になりました。 今までの性機能医学は、『日本人』 を中心に検討していれば充足してましたが、 今後は受診者の国籍や人種に合わせて、オーダーメイド的に診療を進める必要が有ります。 その為には、語学だけでなく、公衆衛生学的な他国の知識も必要になる事でしょう。

(記載:日本性機能学会専門医-須田隆興 最終確認日:2019-02-13)
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