【バイアグラと鎌状赤血球貧血症】
バイアグラは鎌状赤血球貧血症の患者さんには、 慎重投与つまり投与にあたって十分な注意が必要であると、 ファイザー社が監修したバイアグラの添付文書に、 鎌状赤血球貧血症に関して記載されています。
バイアグラは最もメジャーなED/勃起不全の治療薬であり、 バイアグラの日本での発売が1999年3月からなので、 この文章を書いている現時点で発売16年以上も経過しているロングセラーな薬剤です。 バイアグラは夢の薬として、17年前にアメリカで鮮烈なデビューを飾り、 バイアグラ発売前までの旧態依然としたED治療を安全性が高く、 効果的なものに作り変えてしまいました。
日本だけでも1300万人もいるとされているED患者さんですが、 全世界規模では数億という患者単位になるとされています。 性機能は人間のQOL(クオリティ オブ ライフ) に大きな関連があるとされており、こうした人生の喜びに大きな影をさすEDを、 服薬にて容易に安全にコントロールできる事は、全世界数億に及ぶED患者さんにとって、 間違いのない福音と言えます。
しかしこうした夢の薬であるバイアグラですが、もちろんバイアグラにも副作用や適応の問題はあります。 逆に言えば、医師の処方する処方箋医薬品で副作用や適応の問題などの制約のないものは、 存在しないとも言えますが、それは安全性の高いとされるバイアグラも例外ではありません。
バイアグラの禁忌指定の疾患は言うに及ばずですが、そのほかにも慎重に投与を要する、 つまり十分な注意をもった上でバイアグラを処方すべき疾患があります。 こうした疾患は複数あり、今回、 ご紹介させていただく鎌状赤血球貧血症もそのカテゴリーに内包されます。
実はこの貧血を引き起こす鎌状赤血球貧血症はバイアグラとの併用上、 ペニスに障害性の高い疾患を引き起こす可能性があります。 本稿ではそれをメインテーマに、鎌状赤血球貧血症に関して、 またバイアグラに関して、また鎌状赤血球貧血症にバイアグラが慎重投与である理由について、 そしてバイアグラを安全に利用するために、という内容で記載させていただいております。 どうぞ、ご参照くださいませ。
【鎌状赤血球性貧血症とは】
バイアグラと併用が難しいこの鎌状赤血球貧血症は、 もともとは熱帯アフリカ地帯において太古から知られている疾患です。 この鎌状赤血球貧血症は赤血球中に含まれ酸素を運ぶ大切な役割を持つ、 ヘモグロビンというタンパク質に遺伝性の障害を持つ疾患で、 その影響で鎌状赤血球貧血症のSホモ接合と呼ばれる状態においては、 貧血以外にも末梢循環閉塞発作、またその蓄積による慢性臓器障害の発症など、 多岐にわたる合併症を引き起こす事があり、鎌状赤血球貧血症は予後の厳しい疾患と言えます。
鎌状赤血球貧血症は疾患の本態がヘモグロビンSのホモ結合である事が既に特定されており、 この鎌状赤血球貧血症に関する発見によって分子病という医学概念が提唱されるようになったという、 医学史における大いなる進歩の足跡にかかわる疾患であり、 一方で鎌状赤血球貧血症はアフリカ熱帯地域において今なお、 現地の人々を苦しめるコントロールの厳しい疾患でもあります。
【バイアグラとは】
この鎌状赤血球貧血症と併用し難いバイアグラは、もともとはファイザー社が開発し、 1998年に国際誕生した最初の勃起改善薬で、その所属はPDE5阻害薬というカテゴリーになります。
バイアグラは作用動態からの分類上は血管拡張薬ですが、もともとの誕生の経緯としては、 狭心症の治療薬を開発する過程で偶発的にバイアグラが誕生したとされています。
バイアグラは人の陰茎海綿体のcGMP分解酵素であるPDE5(ホスホジエステラーゼ5) を競合的・選択的に阻害することで血管拡張物質の主体である一酸化窒素(NO)の作用を 増大させ、結果としてバイアグラは海綿体への血液流入を増加させる事によって勃起を引き起こします。
バイアグラは特に健康上も問題がない方においては、 非常に高い安全性をもって使用する事が可能な製剤です。 しかし鎌状赤血球貧血症のようにごく一部の疾患に対してのバイアグラの使用、 またニトロ系など極一部の薬剤との併用に問題があります。
【鎌状赤血球貧血症にバイアグラが慎重投与である理由】
鎌状赤血球貧血症にバイアグラの使用が慎重投与である理由としては、 この鎌状赤血球貧血症にバイアグラを使用した場合に持続勃起症を引き起こすことがある事が主体です。
この鎌状赤血球貧血症にバイアグラを使用する事で発症しやすい持続勃起症という疾患は、 性欲とは関係なく勃起が持続してしまう状態で、 一般的には6時間以上の持続的な勃起をもって診断されます。
その程度が高度な場合には、緊急に陰茎に穴をあけて陰茎海綿体にたまった血液を瀉血するなど、 観血的処置が必要なケースもあるという事もあり、、 まさに慎重投与、十分な注意をもって対処する必要性があります。
【バイアグラを安全に利用するために】
鎌状赤血球貧血症にバイアグラを併用することがなぜに慎重投与にあたるか、 上記にておわかり頂けたかと思われます。
このようにバイアグラには禁忌つまり絶対に処方をしてはいけない状態以外にも慎重投与、 つまり鎌状赤血球貧血症のように禁忌ではないが、 その投与にあたっては十分な注意を要する慎重投与というカテゴリーがあります。
慎重投与状態には鎌状赤血球貧血症以外にも多数の疾患があり、 実はバイアグラを患者さんに使用する事を検討する医師は、 多くの禁忌・慎重投与の内容を勘案しながら、 ED患者さんにバイアグラを処方しているのです。
「ご友人にバイアグラをもらって飲んでみた」 「海外の薬局でバイアグラを買ってみた」 「個人通販にてバイアグラを購入した」 こうした状況の恐ろしさは、これらが毒性のものを含むバイアグラの偽物である可能性以外にも、 よしんば少ない確率でこれらが本物のバイアグラだったとしても、 本当にその個人が本物のバイアグラを飲んでも大丈夫かどうかを、 プロである医師が判断していないという状況もあります。 「あなたは本当に鎌状赤血球貧血症ではないのでしょうか?」 極端に言うとこういう事です。
罹病がゼロならいざ知らずですが、何らかの疾患を持っている、 または何らかの疾患に対して薬剤処方がされている、 こうした状態の方は必ずEDならびにバイアグラに詳しい、 専門クリニックの医師に十分な相談をすべきです。 ひょっとすると、ご自身の病態や服薬内容からは、 例えば鎌状赤血球貧血症のようにバイアグラを飲むのが難しい状況も想定されます。
性行の機会は複数あるかもしれませんが、命は常にたった一つです。
当新宿ライフクリニックはバイアグラ処方量において新宿でもトップクラスのED専門クリニックです。各科の専門医を擁しており、また十分なEDの診療経験のある当クリニックでは、 バイアグラ処方における臨床事故の発生はいまだ一回も確認されておりません。 バイアグラの処方を希望されている方はぜひとも、 新宿ライフクリニックにご相談くださいませ。
(記載:日本性機能学会専門医-須田隆興)