睡眠時無呼吸症候群の影響とは

本疾患の影響でセックスの機能低下が出現する場合があります。



セックスの機能に悪影響?」

睡眠時無呼吸症候群は性機能を低下させてしまう傾向があります。


<当ページの項目リスト>

     
  1. 【睡眠時無呼吸症候群とセックスの関連】
  2. 【睡眠時無呼吸症候群とは】
  3. 【いびきと性機能障害】
  4. 【性機能の低下だけでは有りません!】
  5. 【本疾患の治療でセックスの機能も改善!】

睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群とセックス機能の関係


1.【睡眠時無呼吸症候群とセックスの関連】

【要約】
「睡眠時無呼吸症候群があると、セックスの機能障害が出現する場合があります。」

  • ―睡眠時無呼吸症候群があると、性機能障害が出現する場合があります
  • ―こうした性機能障害には勃起不全・射精障害・性欲低下等が報告されています
  • ―睡眠時無呼吸症候群はいびきに換気障害を伴う「閉塞型」が代表的です
  • ―本疾患はセックス障害だけでなく、脳/心血管障害、また糖尿病等の発症率上昇も報告されてます
  • ―本疾患の治療によりセックスの機能障害に対する改善が期待できます

「セックスが終わってすぐに高いびき」 
これは女性には多いに嫌われるベッドマナーの一つですが、 この「いびき」実はセックスの障害発生にも大いに関連があるのです。


皆さんは睡眠時無呼吸症候群(SAS:sleep apnea syndrome)という病態をご存じですか? これは代表的にはいびきを伴う換気障害が本態となる疾患で、 間欠的な低酸素状態が原因となって、二次的に様々な疾患や障害を引き起こすとされています。
なんと、この睡眠時無呼吸症候群は日本人の15人に1人という高い罹患率が報告されており、 日本国内の推定患者数は800万人以上と膨大な患者数です。 本疾患はそんな非常にポピュラーな病気なのですが、 実はその本態は、非常に恐ろしいものであり、 睡眠時無呼吸症候群による被害はパートナーの安眠妨害だけでは無いのです。


詳しくは後述しますが、 睡眠時無呼吸症候群は、セックスに関連した悪影響として、 なんと約7割もの患者さんに「勃起不全」を伴うと報告されております。 そして勃起不全以外にもセックスに対する障害として約5割に 「射精障害」や「性欲低下」が合併するとも報告されているのです。 つまり睡眠時無呼吸症候群が存在する事で、 セックスの機能障害が出現する可能性が大いにあるのです。

「うちの人はいびきがうるさいのよね~」というご家庭は存外に多いかと存じますが、 実はそんな呑気な状況ではない可能性もあります。 この睡眠時無呼吸症候群は上記のセックスへの悪影響だけでなく、 不整脈や動脈硬化、糖尿病の発生率、 また脳梗塞や心筋梗塞など重大疾病の発生率を上昇させるとも報告されています。 つまり睡眠時無呼吸症候群の存在により、 セックスだけでなく命や健康に重大な影響を与える疾患が出現してしまう可能性があるという事なんです。


本稿では本当は怖いこの「睡眠時無呼吸症候群」と「セックス」との関連を主軸に本疾患の説明、 そしてその二次的影響、またその改善方法などに関して、 新宿ライフクリニック所属の日本性機能学会専門医が解説をさせて頂いております。 どうぞご参照下さいませ。


2.【睡眠時無呼吸症候群とは】

主にいびきに換気異常を伴う状態、つまり睡眠時無呼吸症候群(SAS)の影響で、 セックスの機能障害が出現する可能性がある事を冒頭より記載しております。 ここではこの睡眠時無呼吸症候群自体に関して詳しく説明させて頂きます。


この睡眠時無呼吸症候群という疾患には、 いびきがあり、それに換気努力(息をしようとする努力の事です)が伴う「閉塞型」、 またこうした換気努力を伴わないで換気状態の異常が出現する「中枢型」、 そしてこの閉塞型と中枢型が混合された「混合型」の3タイプが有ります。
上記の内、最も一般的なのは「閉塞型」でこれは全体の80%以上です。 対して「中枢型」はその頻度が低く「閉塞型」の約1/200以下とも報告されています。 「閉塞型」と「中枢型」が合わさった「混合型」は全体のだいたい15%近くです。 つまり本疾患として一般的かつ主体になるのは「いびき」に換気の異常を伴う「閉塞型」と言う事です。


この「閉塞型」は要は口からのどにかけての空気の通り道が狭まる事によって発症し、 これは「上気道内腔の狭小化」と表現されます。 これは扁桃腺の腫大や肥満による上気道の脂肪沈着など様々な因子で発生します。
一方の「中枢型」はこうした「上気道内腔の狭小化」は無く、 脳血管障害、脳幹部悪性腫瘍などを主体とした、 中枢神経における換気コントロールに重要な領域の障害が主な原因です。


この睡眠時無呼吸症候群という疾患の直截な日常生活上の被害としては、 日中に過度の眠気が出現する事で、交通事故を起こしてしまったり、 また仕事など社会活動が阻害されてしまう事が主体です。
また二次的な被害としては、今回のメインテーマたるセックスの障害等が出る事があり、 そして重症疾患としては脳血管障害などの発生頻度が上昇すると報告されています。


この睡眠時無呼吸症候群の診断は「ポリソムノグラフィー」という検査で確定診断をする事が多く、 この検査は入眠中の中枢神経・換気・循環の状態をモニターする機能が中心です。 この検査でAHI:apnea hypopnea index (入眠中一時間当たりの換気障害の回数を示します) が5ポイント以上で、かつ日中の過度な眠気などの臨床症状がある場合、 また症状が無くとも、この数値が15ポイント以上ある場合に本疾患の確定診断が下されます。
セックスの機能障害を自覚していて、いびきがあるだけでなく、換気障害が確認されている方は、 しかるべき医療施設にご相談して頂き、 上記ポリソムノグラフィーより簡易な携帯型モニターによるスクリーニング検査をされる事をまずはお勧め致します。


3.【いびきと性機能障害】

冒頭より「いびき」と一つの特徴とした睡眠時無呼吸症候群は、 セックスの機能障害が出現し易いと記載しておりますが、 こうしたセックスの機能障害はどのくらいの頻度で出現するのでしょうか?


欧米における報告では睡眠時無呼吸症候群と診断された方の68.8%つまり約7割に「勃起不全」が合併しており、 また睡眠時無呼吸症候群と診断された方の48%つまり約5割に「射精障害」や「性欲低下」などの合併が報告されています。 つまり、このいびきを一つの特徴とした疾患はセックスに悪影響を与えやすいと言えるのです。
また逆に1025名の勃起不全患者さんを精査した所、 その43.5%に睡眠時無呼吸症候群である可能性が示唆されたという報告もあり、 勃起不全と認識される患者さんの中に睡眠時無呼吸症候群の患者さんが多数潜在している可能性も指摘されています。


本疾患のいったい何がセックスに悪影響を与えるのか、 これについては多変量解析という統計学的な手法で精査を加えた報告があります。 この報告によれば多数存在する関連パラメーターの中で夜間酸素飽和度の低下 (血中の酸素濃度の低下を示唆する状態です) が独立した勃起不全の危険因子であったと発表されています。


日本人においてはセックスと睡眠時無呼吸症候群の関連性についての検証はまだ十分にされているとは言えませんが、 日本人の場合は肥満が中等度レベルでも本疾患の合併が多いとされているので、 セックスに問題がある方で、いびきに換気の異常を伴う方は、 積極的に睡眠時無呼吸症候群の検査をする事をお勧め致します。 お心当たりのある方はぜひ一度医療機関にご相談をされて見て下さい。


4.【性機能の低下だけでは有りません!】

前項にて睡眠時無呼吸症候群が、 セックスに悪影響を与える頻度に関して解説させて頂きました。 しかしこの疾患の恐ろしい所は、 実はセックスへの悪影響だけでは有りません。


この疾患は間欠的な夜間の低酸素血症によって、 交感神経・内分泌・凝固能・血管機能と多岐にわたり身体への悪影響を引き起こし、 それらの結果として糖尿病・高血圧・動脈硬化を二次的に引き起こします。
また死亡や重大な身体障害にかかわる疾患としては、 心血管疾患、脳血管新患の発症率・死亡率を共に上昇させるとも報告されているのです。


重大疾病の予防的観点においては、 パートナーの方に「いびき」があり、 これに換気の異常が伴う場合は、 これはセックスの機能障害の有無に関わらず、 上記2.に記載したような睡眠中の状態をチェックする検査を受けられる事を推奨いたします。


5.【本疾患の治療でセックスの機能も改善!】

前項にて睡眠時無呼吸症候群がセックスの障害だけでなく、 様々な病態を二次的に引き起こす可能性があると解説させて頂きました。 故に、本疾患が診断された方は、本疾患の積極的な治療が必要です。


この疾患の代表的な治療方法としては持続陽圧換気療法(CPAP:continuous positive airway pressure) と呼ばれるものが有りますが、これは機械で陽圧の空気を上気道に送り込む治療方法なのですが、 なんとこのCPAPにて睡眠時無呼吸症候群を加療をされた20名の勃起不全患者さんの内、 過半数の13名において勃起不全が改善されたと報告されております。 つまり、本疾患への加療は、 本疾患に伴うセックスの機能障害も改善させる可能性が高いという事です。


その他、肥満が有る場合などは、 口や咽頭壁などに沈着した余分な脂肪組織が上気道内腔の狭小化を引き起こしている可能性が有るので 積極的なダイエットは本疾患の治療としても望ましいものです。 特に肥満は勃起不全自体の発症・増悪リスクでもあるので、 セックスの機能障害を伴った睡眠時無呼吸症候群の方にはより有意義な対策です。 そして喫煙もまた睡眠時無呼吸症候群の発症・増悪因子ですので、 喫煙をされている方は禁煙方向へマネジメントを進める事は非常に重要です。 じつは肥満同様に喫煙は勃起不全の発症リスクでもあるので、 セックスの機能障害を伴った睡眠時無呼吸症候群の方にはこれも有意義な対策です。


ちなみに睡眠時無呼吸症候群にセックスの機能低下を伴う方には、 勃起改善成分であるシルデナフィルを含有している薬剤の使用は慎重に検討された方が望ましいです。 と申しますのもシルデナフィルは副作用として「鼻閉(鼻づまり)」を引き起こす事があり、 睡眠時無呼吸症候群が有る場合、この副作用が本疾患による換気障害を悪化させてしまう可能性があるからなのです。 本疾患が有ってセックスの障害が見られる場合は、 まずCPAPや禁煙・ダイエットなどの生活習慣改善から、 セックスの機能障害に対する加療的アプローチをした方が望ましいです。


以上、睡眠時無呼吸症候群とセックスの関連に関して記載させて頂きました。 新宿ライフクリニックは日本性機能学会専門医が主宰するED専門医療施設として、 こうした様々な情報の発信に努めています。 東京はJR新宿駅にお寄りの際はぜひとも当院へご来院下さいませ。
(記載:日本性機能学会専門医-須田隆興)