男性ホルモンが少ないと認知機能に悪影響が出ます。
認知機能は、ざっくり説明すると 『ものごとの理解』 などに関わる脳の知的機能の事です。 これが大きく障害され、日常生活に支障が出るレベルのものは 『認知症』 と診断されます。
テストステロンなどの主要な男性ホルモンの減少は、病気以外にも、自然な加齢によって現われます。 そして、こうした男性ホルモンの低下は、適切な筋肉トレーニングなど、生活習慣の工夫で抑制する事が出来ます。
このテストステロンなどの男性ホルモンが減少すると、認知機能の一部が低下すると言われています。 またテストステロンの補充によって、軽症のアルツハイマーや加齢性性腺機能低下症候群を伴う認知症にて、 認知機能の改善が示されたと報告する研究もあります。
本稿では、このテストステロンの減少によって悪影響を受ける2つの認知機能、 『空間認識力』 と 『言語記憶』 の低下に関して日本性機能学会専門医が解説をさせて頂いております。
宜しければご一読下さいませ。
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男性ホルモンが少ないと、認知機能の 『空間認識力』 が低下してしまうと報告されています。
空間認識力とは空間の中でモノが何処にあるかを把握したり、モノの大きさを比較したり、モノの形状を認識したりする為の認知機能です。
この空間認識力と血液中のテストステロンの値には正の相関関係があるとされており、 いくつかの研究にて、テストステロンが減少するほど、空間認識力が低下すると報告されています。
この空間認識力が 『男性らしさ』 を司るホルモンであるテストステロンと関係が深いのは、 人類が元々は狩猟採取民だった事に起因していると思われます。
空間における、モノの距離感、大きさ、形状の把握は、狩猟を行う上で必須の能力であり、 狩猟担当が男性である事を考えると、空間認識力は 『男性らしさ』 に内包される要素と言えます。
つまり男性ホルモンの減少は空間認識力の低下から男の仕事である "狩りの能力" を下げてしまうのです。
男性ホルモンが少なくなると、認知機能の記憶力、特に 『言語記憶』 が低下すると報告されています。
血液中の総テストステロンと活性型テストステロンの量は、言語に関わる短期記憶と正の相関関係にあるとされており、 テストステロンが少ないほど、言語記憶のテスト評価が低かった事を複数の研究が報告しております。
もちろん言語の記憶には、被験者の年齢や教育程度も関わりますが、 これらを加味した上での統計的解析も、結果は同様であったとの事でした。
しかし、その一方で、テストステロンの補充療法によって、こうした言語記憶が改善するかどうかに関しては、米国衛生研究所のレポートなどでは否定的な結果となっております。 それを踏まえた上で、補充療法のコストや副作用を考えると、こうした言語記憶の低下予防に関しては、生活習慣改善による予防の方が望ましいのかも知れません。
以上男性ホルモンが少ない事で悪影響を受ける認知機能、 『空間認識力』 ならびに 『言語記憶』 の低下に関して、 それぞれ解説をさせて頂きました。
加齢性のテストステロンの減少は、適切な筋肉トレーニングの導入など、生活上の工夫で抑制できます。 皆さんも、ご自身の認知機能を守る為にも、日頃の生活に工夫を加えて行きましょう。
(記載:新宿ライフクリニック-日本性機能学会専門医:須田隆興、最終確認日:2020-07-29)
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