ロボット支援手術による前立腺癌の処置では、 従来の方法に比べて、術後のEDの発生が大きく減ると報告されています。 これは、ロボット支援手術が大きな切開を必要としない事、また患部を拡大して確認できる事、 この二つが主な理由とされています。
前立腺癌は、日本人男性の悪性腫瘍の中で一番多いものになりつつあります。 このお病気は悪性腫瘍の中では手術による生存率が高いとされていますが、 手術によって重症のEDなど、性機能障害が起きやすいという問題も有ります。
なぜ性機能障害が起きやすいのかと言うと、 前立腺のごく近くに勃起に関連する重要な神経や血管が通っているため、 手術の際に、あるいは術後の炎症によって、これらが傷ついてしまうからです。 これを 『術後勃起不全』 と言います。
しかし、いまロボットを使用した手術 『ロボット支援手術』 が、従来の方法に比べて、
こうしたEDの発生を減らす事ができると報告されており、注目を集めています。
ちなみに 『ロボット支援手術』 とは人間を介在せずロボットだけで自動的に手術をする事ではなく、
医師がロボットアームとカメラを使用しながら行う手術の事です。
本稿ではこの報告に関して日本性機能学会専門医がわかりやすくご紹介しております。 宜しければご一読下さいませ。
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この報告は前立腺癌に対して 『ロボット支援前立腺全摘徐術』 と、 今までの標準的な術式である 『恥骨後式前立腺全摘徐術』 とをそれぞれ複数の症例にて施行し、 術後に発生するEDに関して経時的に追跡調査したものです。
ロボットを使用していない場合、術後1年でセックスが可能な人は14.3%、術後2年では18%と、そのほとんどの方が勃起不全の状態でした。
ところが、ロボットを使用している場合、術後1年でセックスが可能な人は27.5%、術後2年にいたっては46.7%と、ほぼ2倍に及ぶ改善を示しており、 術後のEDの発生はロボットの使用によって大きく減少した結果となりました。
また、このセックスが可能となった症例においては、ロボットを使用している場合の方が、 勃起不全から回復するまでの期間も、大幅に短縮されたと報告されております。
なぜロボット支援手術では、従来の方法に比べて、前立腺癌処置後のEDが減少するのでしょうか?
これにはいくつかの理由があります。
まずロボット支援手術では、人間の大きな手を入れる空間を確保しなくても良いため、大きな切開を必要としない事があげられます (ロボットアームとカメラは人間の手に比べるととても細いのです) 。 大きな切開をしないという事は、手術による侵襲や炎症の程度を大きく下げて、 結果として勃起にとって重要な神経や血管への術後の悪影響を減少させる事が出来ます。 また切開部分が小さいと術後の回復も早まります。
次にカメラによって患部を10倍以上に拡大して見る事が出来るようになった事が上げられます。 これによって今まで肉眼では見分ける事が出来なかった、 勃起にとっては重要だけど細い神経や血管を傷つけずに目的の患部だけを取り除く事ができるようになりました。
これらの理由がありロボットを使用した前立腺癌の手術では、術後EDの発生頻度が減少します。
しかし、こうした新しいテクノロジーも完全に術後の性機能障害を防ぐ事は、未だに出来ません。
やむを得ず発生してしまった術後のEDに関しては、
従来通りバイアグラなどのPDE5阻害薬の利用が勘案されています。
(記載:新宿ライフクリニック-日本性機能学会専門医:須田隆興、最終確認日:2020-01-27)
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