セックスに対するこうした女性意見をうかがう事があります。
短い方が良い?
<当ページの項目リスト>
セックスは短い方が良い?
【要約】
「セックスは短い方が良い」
これは時に日本性機能学会専門医として拝聴する事のあるセックスに関する女性意見です。
この意見は一般男性に聞かせた場合、とても意外に感じる方が多いようです。
セックスつまり膣内に挿入している時間は果たして長い方が良いのでしょうか?
実は性機能障害の男性患者さんに対応していると「早漏」の相談はとても多い傾向があるのですが、
一方の「遅漏」に関しては、膣内射精障害をベースにしたもの以外はほとんど相談が有りません。
これは男性の性機能障害における認識上、
「セックスは短い方が問題である」という意見が主体であるが故と思われます。
ただ実は女性に関しては必ずしも長いセックスを希望されない場合も多く、
セックスは短い方が良いという意見も聞かれます。
インターネットによるアンケート調査を発表した本邦の報告があるのですが、
これは「IELT:膣内射精潜時」と呼ばれる時間指標を中心としたもので、
IELTとは要は膣内挿入から男性が射精するまでの時間の事を示しています。
このアンケートの趣旨としては「日本人女性の満足するIELT」の調査が主目的でした。
その結果は驚くべきもので、日本人女性の満足するIELTはこの調査上、
15秒から120分ととても大きな開きがあり、その平均は16.7±13.1分との事でした。
最高値と最低値の開きが大きいので平均値的なものがどの程度参考になるのかという疑問が残りますが、
日本人女性のIELTのニーズの広さに自分もびっくりした記憶が有ります。
このIELTに「15秒」を希望する、つまりセックスは短い方が良いと言う女性はその意見の根幹にどのような理由があったのでしょう。
実は自分にはとてもショックな思い出があります。
ある日、パートナーとセックスについてついて話し合った所、
「実はずっと痛かった」と告白されました。
それは私との性行為が、と言うよりも、性行為を経験して以来との事でしたが、
当時の私はどちらかと言うとセックスを長持ちさせようと頑張っていたので、
頑張りが逆効果だった事が、パートナーにとって苦しみの時間を懸命に延ばしていた事が、
若い自分にはとてもショックでした。
詳細に聞くとパートナーは初体験の性行為の痛みが強く記憶に残っていて、
それが原因となって、どうしても体から緊張が抜けないという状況でした。
つまり彼女は「セックスは短い方が良い」と考えていたようです。
これは本編でも後述させて頂く、「精神科における性交疼痛症」が母体になった状態だと、
日本性機能学会専門医になった今では即座に判断できますが、
当時の自分としては自分の技術的な問題にこれを帰結してしまっており、
性行為に対する自信が大きく減退した苦い記憶が有ります。
このパートナーに関してはまさに「セックスは短い方が良い」という意見になるのでしょう。
このようにセックスの時間的な尺には、長い方が、もしくは短い方が良いという多様な意見が有り、
それは規定するのはこうした性交疼痛症のような疾患であったり、様々な要因です。
本項では男女間のセックスの長さに関するこうした悲しい行き違いを防ぐべく、
「セックスは短い方が良い?」というテーマを主軸に記載させて頂いております。
宜しければ、どうぞご参照下さいませ。
実は疾患上の理由で女性が「セックスは短い方が良い」という意見になる場合があります。 その代表的存在が性交疼痛症と呼ばれる疾患で、 これは端的には挿入する事で痛みを感じる病態です。
性交疼痛症は婦人科領域におけるものと精神科領域におけるものに二大別されます。 婦人科領域における性交疼痛症には、 性的な刺激や興奮が足りない為に膣の潤滑が少ない状態や、 心理的もしくは機能的な影響で膣ならびに膣周辺の筋肉が緊張してしまう状態は含まれず、 外科的もしくは婦人科的手術の影響による手術痕や癒着、女性器・女性臓器・付属器の炎症、 子宮内膜症、女性ホルモン分泌量の変動による外陰部・膣の萎縮性変化、外陰萎縮症などによって、 膣内挿入時に女性が痛みを覚えるという状態です。 こうした状態があると「セックスは短い方が良い」という気持ちになってしまうものでしょう。
また精神領域における性交疼痛症は、 逆に上記の器質的障害を含まず、 性交心理学的なものが原因となって膣内挿入時に痛みを覚えるという状態です。 性行為に対する心理的嫌悪や夫婦間の心理的軋轢などが原因となっている事も少なくないとされています。 この状態は基本的には心理的な影響によって膣ならびに膣周辺の筋肉が緊張してしまう事が原因とされていて、 この状態に関しては心理的なものが追加された上で「セックスは短い方が良い」という気持ちになられるものでしょう。
膣内挿入でエクスタシーに至れない方にとっても「セックスは短い方が良い」という結論になられる場合があるようです。 実は女性の中にはどうしても膣内挿入でエクスタシーに至れない方がいます。 そうした方にとって性行為の主体はどうしても膣内挿入以外になってしまう傾向は否めず、 セックス(膣内挿入の状態)は短い方が良いという状態になりがちです。
エクスタシーという状態へのこだわりは、どうしても男女間でかい離がうまれてしまう傾向が有ります。 純然たる生殖を基準にしますと男性の性行為は射精すなわちエクスタシーをもって完結しますが、 女性は性行為においてエクスタシーが無くても完結し得ます。 つまり男性目線ではセックスにおけるエクスタシーは前提になりますが、 女性にもよりますが、女性にとってのエクスタシーは絶対目標でない事が折々にあるのです。
女性によってはエクスタシーを前提としてセックスを長く調整されるよりも、 愛情の伝わる言葉や接触、態度の方が重要である場合があり、 そうした意味合いにおいては女性は男性よりもセックスにおいてはるかに情緒的です。 もし女性にエクスタシーを与えるためにセックスを長く調整する事を主目的にして、 その結果として愛情の伝わる言葉や接触、態度がおろそかになる事があるのだとしたら、 これも女性たちの「セックスは短い方が良い」という意見につながってしまうのかも知れません。
セックスは長い方が良い、もしくは短い方が良い、 こうした状態を判断する基準は、我々の中にあるのでしょうか? もしくはセックスは何分以上、何分以下が良いなどのセックスに関連した社会通念的基準はあるのでしょうか?
実際、我々のほとんどは特殊な状況を除いて、自分とパートナー以外のセックスを良く知りません。
特に「全体としてはこう」と言った平均的な基準を持っている方はほとんど居ないと思われます。
そうしたベースの上で、成人男性のほとんどはアダルトビデオの閲覧経験があるかと存じますが、
このアダルトビデオの内容が男性によってはセックスの平均的な基準になってしまっているケースが見受けられます。
アダルトビデオは男性のファンタジーを基準に作成されているので、
実像のセックスとは本来、大きくかけ離れたものです。
ただ他人のセックスを閲覧する機会のほとんどがこうしたファンタジックなフィクションになっている現状は、
男性(もしくは女性)の中で誤ったセックスの基準を扶育してしまう事が折々にあります。
そしてアダルトビデオにおける射精までの時間は、
実際のほとんどのIELTに比較して非常に長く調整されている可能性があります。
こうした状況が男性の中で「セックスは長い方が良い」という先入観を作ってしまっている可能性があり、 またこうした実像とかい離したセックスの基準は、女性の気持ちを置いてきぼりにしてしまう事で、 女性に「セックスは短い方が良い」と感じさせてしまっているのかも知れません。
結論から申し上げると、セックスには長い方が良い、もしくは短い方が良い、
こうした状態を判断するための社会通念的基準は無いと思われます。
なぜならば、性交は相手がいる行為であり、そこには「相手のニーズ」があるからです。
つまりセックスが短い方が良いかどうかなどの基準はご自身のパートナー次第と言えます。
性行為における適正な時間などはパートナーとのコミュニケーションの中で、
それぞれの組み合わせに応じてオーダーメイド的に規定されるものです。
これを聞くと、だまされたような気持になる方もいるかも知れません。
しかし性機能障害の外来を開いていると、
実の所、パートナーのニーズをキチンと確認されている方はほとんど居ないのが現状です。
つまりほとんどの男女はお互いのニーズを伝え合う事なくセックスをしていて、
その結果として女性に「セックスは短い方が良い」と言わしめているのかも知れません。
日本性機能学会のとある性機能障害の診療ガイドラインでは、 その治療の目的を「満足のいく性的関係を回復する事」と定義しています。 個人が罹患している性機能障害の治療のゴールが性的関係、 つまりパートナーを含めた全体の改善に置かれている事、 これはセックスという行為がいかに双方向性のものであるかを示す一つの象徴のように思われます。
「セックスは短い方が良い」こうした女性の声なき声は、 パートナーとのコミュニケーションを促す警鐘なのかも知れません。 セックス(膣内挿入)の時間がどのくらいであるべきか迷われる時は、 パートナーとコミュニケーションをとってみて下さい。 あなたにとっての「答え」が見つかるかも知れません。
新宿ライフクリニックは日本性機能学会専門医が主宰する勃起不全治療専門クリニックとして、
日々こうした患者さんの疑問に対応しております。
東京は新宿駅近傍にお越しの際はぜひとも、お尋ねくださいませ。
(記載:日本性機能学会専門医-須田隆興)