レビトラの肥満男性の性的苦痛軽減効果


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レビトラはメタボ男性の性的苦痛を軽減する

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性的な苦痛sexual distressは、最近注目されている医療分野です。
WHOは、性的に健康であることは、性に関して肉体的、感情的、精神的かつ社会的に健康である、と定義しています。
疾患が存在しないだけでなく、機能不全であったり、不妊症の問題も含まれることになります。
性的な苦痛は、性的に健康な状態でないことを意味し、感情障害を引き起こし、性に関して消極的にさせます。
いわゆるEDは、ここには含まれません。

性的苦痛は、広範囲な疾患と捉えられていますが、かつては、疾患と考えられていなかった時代もございます。 診断方法も治療方法もございませんでした。
その為に受診して治療を受けていない方も大勢いらしました。
性的な苦痛sexual distressとは、EDでもなく早漏でもありません。 EDの定義に当てはまるものではないのですが、性的な障害や機能不全やその症状などと同様に、勃起に関連した肉体的な変調などから、 性的な健康を損ねた状態とされます。

たとえばですが、陰茎ペニスに対する醜形恐怖症もこれにあたります。
重度の肥満症から勃起の持続が不十分な場合も、当てはまる可能性があります。
この場合は、怒張した陰茎ペニスの大きさに自身が持てなかったり、勃起持続時間は十分であるにもかかわらず、満足できない状態であり、 性行為が十分であると感じられなかったり、場合によってはEDを引き起こす可能性もあります。

この性的な苦痛は、男性機能の肉体的な変化に起因したり、疾患に起因します。 男性的な問題であったり、そうでないことが原因となります。
EDに関連してはいませんが、EDを引き起こす可能性は秘めています。

性的な苦痛は、非常に広範囲にわたる概念となりますが、性機能医療に従事する専門家では、 性的な苦痛は明確な疾患と捉えられ、治療対象となりえます。
性機能障害を標榜する外来などでは、その30%を占める場合もあるとされます。

性的な苦痛は、治癒可能な病態であるとも考えられています。
精神的性的なアプローチであったり、勃起薬であるPDE5阻害剤を使用するなども、その一つになります。
勃起機能改善薬であるPDE5阻害剤は、性的な苦痛にも効果がある可能性が指摘されていますが、 一般的にはED治療に使用される場合は、その服用期間に制限を設けることはしないのですが、 性的苦痛治療に使用する場合は、その使用には、漫然と使用するのではなく、 期限を設けるべきとされます。

この研究の目的は、肥満症と性的な苦痛との関係を評価するとともに、レビトラ10mgの性的苦痛に対する患者自身による主観的な効果評価する事にあります。

BMI30以上、性的に活発である女性パートナーがいる事、PDE5阻害剤の服用歴がない事、合併疾患がないことなどが、本試験の参加条件となっております。
除外項目は、降圧薬や脂質異常症、心臓疾患の治療薬の服用がない事、EDや早漏症が存在しない事、性腺機能低下症がない事、 抗アンドロゲン薬の服用がないことなどが挙げられてます。

50名の肥満男性をスクリーニングし、最終的に平均年齢49歳±8歳の20名の男性が登録されています。
10名ずつ、レビトラ10mg群、プラセボ偽薬群に振り分けています。
観察期間は8週間とし、開始時含め4週おきに来院し評価しています。
性的苦痛の評価は、問診票(sexual distress evaluation questionnaire-male:SDEQ-M)で行い、 患者には、性行為回数と膣内挿入から射精に至るまでの時間をストップウォッチで測定していただいています。
最初の4週間は、薬剤の服用は行わず、残り4週間でレビトラ10mgの実薬群とプラセボ偽薬群にける効果を検証しています。
その他、自己評価とパートナーとの関係に関する問診票と、男性の性的健康具合、特に射精に関する問診も同時に行っております。

結果は、レビトラ10mgはプラセボに比較し、膣内挿入から射精までの時間を有意に延長しています。
さらにレビトラの服用は、各問診票での評価も改善させています。
これに対し、プラセボ偽薬群は、増悪傾向を示しています。
興味深いのは、肥満度と膣内挿入から射精までの時間は逆相関にあったことです。

EDでもなく早漏症でもなく、性的欲求障害でもない、性的な苦痛sexual distressに対しての研究報告は多くはありません。
この報告は対象者が20名と小規模なもので、より大規模な評価が必要ではありますが、傾向を探るには有意義な試験だったと思います。
レビトラが、自己評価、パートナーの評価において、勃起持続時間と射精の質を改善したことを示しています。
さらには精神社会的な改善も示されています。

肥満症である事は、生活の質や男女における性的満足感を考える上で、様々な影響を及ぼすことが知られています。
BMIと性機能の関係は、今までも、研究が行われてきました。
肥満症と性機能の関連事項としては、肥満症とEDの関連が指摘されています。
肥満症では、若年者も高齢者においてもEDを有する事が多くなり、メタボリック症候群を合併した場合、 適切な食事療法が性機能を改善すると報告されています。

勃起ではなく射精に関しての報告は僅かしかありません。
興味深いものとしては、肥満症は早漏症との関係です。
一部では、早漏症の肥満例は、体重が少ない傾向にあるとし、同様に、早漏症例では、肥満症例が少ないとする報告もあります。
しかし、今回の報告とは相反する結果となっています。
共通のメカニズムとして、射精のコントロール不全が考えられます。
性行為のパフォーマンスに対する心配が、EDを来たすことも考えられます。
本試験では、当初からED例、早漏症例を除外しているので、それが異なった結果をもたらしている可能性もあります。
臨床的に明らかでない潜在的なEDを含んでいた可能性もあります。
勃起の持続に関する問題が、性的苦痛の原因であった可能性も否定できないとしています。

肥満例における性機能障害の治療は、様々な要素が複雑に絡み合っている場合も多く、治療が一筋縄でいかない、 困難な場合もある事がございます。
実際に、栄養指導やカウンセリング等を継続的に行い、生活習慣を改めることによって、初めて改善できたケースもございます。
まずはじめにレビトラを服用するのも、初めの第一段階の治療としては悪くはありません。 性的苦痛が改善する事が、モチベーションの増加に繋がる場合があるからです。

肥満例における性的な苦痛は、私たちが思う以上に高率に認められるのかもしれません。
レビトラによる治療は、これを改善する可能性が示されました。
今回の報告は、対象人数が20例と、規模の小さなものであり、これを持って、こうであると断言できるほどの信頼性はございません。 しかし、肥満男性と性機能の間に何らかの関係がある事は確かと思われます。
EDの診断を満たさなくても、性行為のパフォーマンスが不足していると考える方、性行為に自信が持てない方も、ED治療薬であるレビトラは、 試して頂く価値が有りそうです。
今回はレビトラに限っての報告ですが、バイアグラシアリスも同様の可能性があります。
勃起不全以外でも、その適用が拡大されつつたると言えるでしょう。


参考文献
A pilot study to evaluate the effects of denafil on sexual distress in men with obesity.
International Journal of Impotence Research (2012) 24,122-125