バイアグラおよびレビトラは抗癌剤治療における薬剤感受性を改善する



バイアグラとレビトラは多剤耐性となったガン細胞の感受性を回復する

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癌の問題は、非常に重要な健康問題を占めており、およそ1/3の日本人が癌に因って亡くなられているとされます。 男性の2人に1人は、生涯に何らかの癌に罹患するとも言われております。
当然ながら早期に発見され治療がうまくいく場合、発見が遅れ治療が難渋する場合もございます。
治療は、手術、抗ガン剤、放射線療法が治療の柱になります。
いずれも肉体的精神的負担を要すものです。
最近では優れた抗ガン剤が市販されてはいますが、その効果は、未だ満足できません。
抗ガン剤の効果が十分に発揮できない原因の一つとして、癌細胞が、薬剤に対して耐性を獲得することが挙げられています。 その為、この耐性をなくそうと様々な試みがされてきましたが、臨床応用に至ってはおりません。

ED治療薬であるバイアグラレビトラは、 PDE5を阻害いたします。 PDEは単純に勃起に関係した酵素ではなく、全身に存在する細胞内の伝達物質であり、 未だ解明されていない作用も多数あると考えられています。
PDE5阻害剤が、薬剤耐性を回復するとした報告がございました。

薬剤耐性について、少々説明したいと思います。
薬剤耐性は、似通った薬剤間で耐性が生じるならまだしも、機能的構造的に関係の認められない薬剤でも起こりえます。

重要な耐性獲得機序の一つに、ATP結合カセットトランスポーターによる、癌細胞からの薬剤の流出が挙げられます。
細胞内の薬剤が、細胞外へ流出する事により、細胞内濃度が維持されないために効果を示さなくなります。
ATP結合カセットトランスポーターは、膜貫通蛋白であり、AからGまでの7つのサブファミリーからなり、 ATP結合カセットB1、ATP結合カセットG2、ATP結合カセットC(多剤耐性関連蛋白とされます)は、 代表的な抗がん剤の耐性の原因となる蛋白として知られています。
ATP結合カセットB1は、初めて発見された人間のATP結合カセットトランスポーターで、様々な疎水性物質の移動に関与します。 代表的な抗がん剤では、タキサン、アントラサイクリン、ビンカアルカイロイド、チロシンキナーゼ阻害剤です。
ATP結合カセットG2も様々な物質の移動に関与しており、代表的な抗がん剤では、 葉酸拮抗薬、アントラサイクリン、チロシンキザーゼ阻害剤が挙げられます。

サブファミリーCの多くは多剤耐性関連蛋白が含まれています。
多剤耐性関連蛋白は、マイナスに荷電した有機物質や、抗がん剤ではアントラサイクリン、エピポドフィロトキシン、 ビンカアルカロイド、タキサン等の移動に関与しているとされています。 薬剤を細胞外へくみ出すポンプと考えていただけるとよいと思います。
多剤耐性関連蛋白7は、タキサンやビンカアルカロイドを含む様々な薬剤に対する耐性の原因となりうる物質で、 P糖化蛋白の基質でもあります。
この多剤耐性関連蛋白7は、非小細胞性肺癌における、ビノベルリンやパクリタキセルの耐性をもたらすとされ、 唾液腺腺癌においてビンクリスチンの耐性の原因とされています。

このATP結合カセットトランスポーターの阻害剤は、薬剤流出を阻害し、 癌細胞の薬剤耐性を解除し、感受性を取り戻すことが可能と考えられます。
しかし、過去30年に渡り様々な特異的な阻害剤が試みられましたが、副作用や毒性の問題から臨床的に成功しませんでした。 他の戦略として、現在承認されている薬剤で、新たな効能として、 薬剤の再感受性化を来たしうるものを発見しようとする動きもございます。
その一つとして、ED治療薬として認可されているPDE5阻害剤(バイアグラ、レビトラ、シアリス)に注目され、実験が行われています。

PDE5阻害剤は、P糖化蛋白により引き起こされた薬剤耐性を回復する可能性があります。
多剤耐性関連蛋白7は、P糖化蛋白に類似した機能と基質を有すため、 P糖化蛋白の修飾物質は、多剤耐性関連蛋白7による薬剤耐性に影響を与える可能性があります。
実際に、多くの多剤耐性関連蛋白7の阻害剤は、P糖化蛋白の機能をも阻害すると報告されています。

多剤耐性関連蛋白7を移入した細胞を用いて、PDE5阻害剤であるバイアグラ、レビトラ、シアリスが、 これによりもたらされた薬剤耐性を回復させうるか否かを検証した報告がございました。
その報告では、バイアグラとレビトラは、多剤耐性関連蛋白7を移植した細胞において、用量依存性に、 抗ガン剤であるパクリタキセル、ドセタキセル、ビンブラスチンの感受性を回復したとの事です。
これに反してシアリスには、僅かながらの同様な作用を示したに過ぎなかったとのことです。
バイアグラとレビトラは、これら抗がん剤の、細胞外への流出を減少させ、細胞内濃度を上昇させたとの事です。
多剤耐性関連蛋白7の発現量、細胞膜での局在に変化は認められなかったことから、 薬剤を細胞外へ流出させる機能を抑制したと推測されています。

バイアグラ、レビトラは、多剤耐性関連蛋白7の基質であるパクリタキセル、ドセタキセル、ビンブラスチンの感受性を回復させましたが、 その基質ではないシスプラチンの感受性は回復しなかったとしています。
このことから、細胞外へ薬剤を流出させるポンプとも言える多剤耐性関連蛋白7を、バイアグラ、レビトラは標的としていると考えられます。

バイアグラとレビトラは、似通った分子構造を有しますが、 シアリスは、これらとは、やや異なった構造をしています。 ともにサイクリックGMPを分解を抑制し、細胞内のサイクリックGMP濃度を増加させることにより、最終的に勃起改善効果を示します。

これら薬剤を癌治療に応用しようとした報告もございます。
PDE5阻害剤は、癌細胞の増殖を抑制し、アポトーシス(細胞死)を促進する作用も示されています。
また、バイアグラおよびレビトラは、カスパーゼという酵素依存的に、慢性B細胞性白血病のアポトーシスを誘発し、 前立腺癌においては、バイアグラがドキソルビシンが誘導するアポトーシスを増強し、 カスパーゼを活性化させるとした報告もございます。
バイアグラが腫瘍血管の透過性を亢進し、抗ガン剤の脳腫瘍への到達を改善する可能性なども指摘されています。
PDE5阻害剤は、癌に対する免疫反応を修飾し、癌が引き起こしている免疫抑制を回復するともされています。

このように様々な可能性が指摘されていますが、それは、PDE5が細胞内の伝達機構に関わっているからに他なりません。 つまり、単純に勃起改善薬という範疇には収まりきらない薬剤です。 副作用の多さは、逆に言うと様々な効果を有している事を示唆していることに繋がり、 さらに、より選択性の高い勃起薬が開発される余地が残されていることでもあります。

シアリスにおいては、このような報告が少ないように思えます。 理由として、先にも述べましたが、分子構造が、バイアグラ、レビトラと異なることが挙げられます。 そのため、非常に長い半減期を有すなどの特徴があるわけです。 選択的PDE5阻害剤とはされていますが、他のアイソザイムにも作用する事が考えられ、これが差につながった可能性もございます。 バイアグラ、レビトラは、シアリスと比較した場合、PDE5に加え、PDE1、PDE6に対しても、阻害作用を呈します。 これが原因かもしれませんが、詳細は明らかではありません。

これをもって、抗ガン剤とED治療薬を併用して下さいと言っているわけではありません。 あくまでも、可能性があるとする基礎研究の一つとお考えください。


参考文献
PDE5 inhibitors,sildenafil and vardenafil,reverse multidrug resistance by inhiting the efflux function of multidrug resistance protein7(ATP-binding Cassette C10) transporter.
Cancer Sci 2012;103(8):1531-1537