ED治療なら新宿ライフクリニック
PTSDとは、心的外傷後ストレス障害として日本でも多くの方がご存じかも知れません。
最近では、3.11の大地震、大津波でご家族を亡くされた方でのPTSDが、注目されています。
目の前でご両親を亡くされた等、著しいストレスが原因となります。
戦争も同様に、多大なストレスを与えます。
戦場で戦う兵士たちが、直接的に最もストレスに曝されていることは、容易に想像できます。
戦争におけるPTSDが問題とされるようになったのは、ベトナム戦争です。
ベトナム戦争に赴いた兵士の30%は、何らかのPTSDを有すとの報告がございます。
PTSDの詳細は、様々なところで説明がございますので、ここでは省略いたしますが、
PTSDの症状は多岐にわたり、家族間の問題や愛情表現や性的関係にも及ぶとされます。
PTSDによって生じるとされる性機能障害の報告は、極めて限られた者しかございません。
ベトナム帰還兵でPTSDを患っている者は、性欲が減少しているとされ、
80%以上に何らかの性機能障害を、
およそ70%にEDを認めるとする研究報告もございます。
このことは、彼らのパートナーにも何らかのマイナスの影響を及ぼしていることを意味し、
パートナーは自己を過小評価したり、家族との結束が弱まったり、
また、体調不良の訴えが増加するなどの、側面的な悪影響も出現する場合もございます。
EDはカップル間の問題をさらに悪化させうるので、可能であれば治療を進めた方がいいであろうということになります。
バイアグラに代表されるED治療薬は、様々な原因のEDに有効されています。
肉体的に異常を認める器質性EDであったり、メンタルな事由が原因である心因性EDにも効果があります。
これをPTSDによるED治療に応用しようとする報告がございます。
イランのテヘランからの報告です。一部、ご紹介いたします。
イラン-イラク戦争に赴任した兵士で、PTSDの診断基準を満たし、EDの訴えのあるものを対象に、調査されております。
388名の既婚男性を対象とし、平均年齢は37-59歳となっております。最終的には266名が調査に参加しています。
試験デザインは二重盲検とし、バイアグラ100mg群とプラセボ群に振り分けられております。
さらに、彼らの妻も調査対象に加えられています。
被験者の半数以上は、IIEF国際勃起機能スコアにより重度のEDと診断され、 バイアグラ100mg群とプラセボ群間で、EDの重症度や、その他の患者背景には差がなかったとしています。
ここでの報告では、バイアグラ100mg群はプラセボ群に比較し、残念ながらEDを有意に改善しなかったとの事です。
バイアグラの改善率はおよそ11.3%であり、プラセボでは9.0%ととのことです。
エンドポイントの一つであるIIEF国際勃起機能スコアは、両群ともに改善を示しています。
その他の問診票における勃起機能、性機能のスコアも、両群ともに改善を認めています。
バイアグラ服用にともなう性行為の回数増加はなく、満足度も患者およびその妻において、変化をもたらしてはいません。
副作用に関しては、当然ながらバイアグラ実薬群で多く認められております。
副作用内容は、PTSDだからといって変わるものではございません。
この報告では、バイアグラ100mg群とプラセボ群の比較で、統計学的に有意なED改善を指摘できていません。
PTSDによるEDは心因性EDに分類されます。
ある程度の心因性EDであれば、バイアグラの服用により改善が得られることが多いのですが、
PTSDでは、抑圧がより強いのだと考えられます。
しかし、ベースラインと比較し、改善傾向であった項目が多数ございます。
この事が何を意味するかと申しますと、いわゆるプラセボ効果を示したと考えられます。
プラセボ効果とは、なんら効能のない薬を服用した場合でも、
ご本人の”薬を飲んだので効果がでるはずだ”等の、
期待感とも言える心理的な変化が、症状を緩和させる事を言います。
この報告に当てはめると、薬剤を服用したことにより勃起改善されているはずだとする思い込みが、
ED改善に繋がっているのだと考えられます。
プラセボ群でも、試験開始前と比較すると、改善効果が認められているのはこのためだと思われます。
しかし、バイアグラ実薬で、もう少し効果が出ても良かったのではないかと考えますが、残念な結果です。
PTSDでは、交感神経の過亢進と、視床下部-下垂体-副腎系の変化などが指摘されています。
αアドレナリン受容体阻害剤であるプラゾシンが悪夢や睡眠障害、その他の症状に有効とされることから、
このプラゾシンとバイアグラの併用療法も試みる価値があるかもしれません。
バアグラは非常に有効なED治療薬ですが、残念ながらその効果は100%ではなく、万能薬ではありません。
PTSDのEDに対しても、期待された効果は認めませんでした。
しかし、プラセボ効果でも構わないと、私は考えます。
治療しているという安心感が、いずれ良い方向へ向かうのではないかと期待するからです。
PTSDには、まず、PTSDの治療を行うことがEDの改善に繋がることになりそうです。
参考文献
Safety and efficacy of sildenafil citrate in treating erectile dysfunction
in patients with combat-related post-traumatic stress disorder
:a double blind,randomized and placebo-controlled study.
BLU international 104:376-383