バイアグラはその作用傾向を把握し、適応と用法用量を守った上で使用する分には、 安全なお薬と言えます。 しかし、より安全に利用するためにも、 この薬に関連した、リスクの高い使用例を把握する事は、 本剤を長期にわたって運用する上でもとても大切です。
本稿ではこのようなリスクの高い使用例を一つ一つ提示し、 また、それぞれに解説を加えさせて頂いております。是非ともご一読下さいませ。 なお、本剤の使用体験に関してお伺いになりたい方は、 別稿に体験談を紹介するページをご用意しておりますので、 宜しければどうぞ ⇒「バイアグラの体験談のご紹介」
<当ページのもくじ>
本剤には、他のクスリ同様に副作用が有ります。 以下に代表的なものを列記しますと、
これらの副作用は服用のたびに出現する訳ではもちろんなく、 低い頻度でたまに出現する事があるものです。 多いもので 『頭痛』 の12.74%くらいですので、 殆どの状況において、これらは感じられないと思われます。
また、これらの副作用は出たとしても、さほど危険性の高いものでは無く、 薬効が過ぎ去ると共に消えていきます。 ただし、ご本人の置かれている環境によっては、害の少ない副作用であっても、 リスクが高い状況を招く事が有ります。
それは運転時における 『めまい』 『視覚障害』 、また高所作業時における 『めまい』 等です。
この 『視覚障害』 は、彩視症など視野に色がついて見える状態などが代表的ですが、 これによって信号機の色を見間違える事が有るかも知れません。 運転時はもとより、自転車や徒歩で交差点を渡る時にも注意が必要ですね。
一方 『めまい』 に関しては、運転時や高所作業時、もしくは重量物を扱っている時など、 注意を要する状況は多々有ります。
またお酒との併用は薬効自体も弱めますが、 こうした 『めまい』 などの副作用を増強する傾向もあるので、 前提として本剤とお酒との併用は止めましょう。
もとより本剤は、性行為時に使用するものなので、 運転時や高所作業時に服薬する事は、ほぼ無いかと思われます。 しかし、害の少ない副作用でも、 ご自身の状況によっては危ない事がある、と把握しておく事は、 予想外の事故を回避する上でも大切な事かと思われます。
このクスリは利用してはダメな罹患疾病や、併用してはダメな薬剤などが厳密に定められており、 こうした適応を無視して本剤を利用した場合は、健康や命の問題になってしまう事も有ります。
・過敏症とは、この場合、薬剤性のアレルギーの事です。 薬剤性アレルギーも重症の 『アナフィラキシー』 という状態になると、 ショック状態になったり、窒息してしまう事もあるので 過敏症のある方は絶対に使ってはいけません。
・ほとんどの薬剤は肝臓もしくは腎臓で代謝・分解され、無害化されたり排出されたりします。 肝硬変など重度の肝機能障害になると、こうしたシステムが阻害されてしまうので、 薬剤濃度が増加して悪影響を示したり、 また弱体化した肝臓自体に薬剤が悪影響を示す事などが有ります。 重度の肝機能障害がある方は、本剤を服薬してはいけません。
・発症6ヶ月以内の脳梗塞・脳出血・心筋梗塞は、病変部が安定していないので、 この薬の血管拡張作用の影響で、 不安定な病変部に二次的な問題が発生してしまう可能性が有ります。 もとより心筋梗塞既往の方は後述する硝酸剤あるいは一酸化窒素供与剤を 処方されているので、二重の意味合いで服用はできません。
・網膜色素変性症の有る方は、 このクスリの薬効動態の主座であるホスホジエステラーゼという酵素に遺伝的障害をもつ場合があり、 服用する事で体に悪影響を示す事が有ります。 本疾患がある方はこのクスリを使う事はできません。
・塩酸アミオダロンとこのクスリを併用するとQTcの延長から重症不整脈を招いてしまう可能性があり、 一方、硝酸剤あるいは一酸化窒素供与剤と併用すると血圧が大きく低下してしまう可能性があり、 どちらもとてもキケンです。これらの処方がある方は使用できません。
・心血管系の障害があると、その重症度によっては性行為に心臓が耐えられない事が有ります。 そうした場合には、本剤は性行為を前提に運用される関係上、本剤自体の服用ができません。
・このクスリは血管拡張により血圧を下げる方向に働く事が有ります。 平均的に90/50mmHg未満の低血圧をお持ちの場合、 より血圧が下がってしまう事で危険な状況を招きうるので、服用が禁じられています。
・治療管理されていない高血圧で、平均的に170/100mmHgより高い状況になりますと、 急峻な降圧によって臓器障害を示す事が有ります。 このクスリは上述の通り、降圧に働く事があるので、 このような状態においては服用が禁止されています。
以上のような適応は、患者ごとに日本性機能学会専門医の外来などで、厳密に勘案されるているので、 真っ当なEDクリニックに受診して処方されている場合は、 まず適応を無視した利用にはならないと思われます。
一方、友人に本剤を譲渡されたような場合はとてもキケンです。 本当はご自身はこうした服薬をしてはダメな状態・疾病・併用薬なのかも知れません。 こうした専門家の判断が介在してない状況での服薬は、時に命のキケンもあります。くれぐれもご注意下さいませ。
本剤はその使用量や使用頻度が厳密に定められており、 たとえ前述の 『適応』 が守られている状況でも、 これらを度外視した運用は非常に危ないです。
具体的には本剤の正式な用法用量は、 一日一回25㎎もしくは50㎎までで、 また、その投与間隔は24時間以上開けるように、と規程されております。
これ以上の用量や頻度、また短い投与間隔で利用された場合、 【運転時や高所作業時における服薬】に記載させて頂いた、 副作用などの有害事象の頻度と重症度が増悪して大変にキケンです。
規程された用量を上回る服薬は、本剤の薬効の増加を期待しての事だと思われますが、 こうした用量以上に使っても、副作用が増すばかりで、 勃起改善効果が上昇する事は、ほとんどないとファイザー社からも報告されております。
つまり、定められた使い方以上の量を使用しても、危険性が増すばかりで、 勃起改善効果が上がる訳ではないと言う事です。 本剤は必ず規定された用法用量を守って使いましょう。
最後に個人輸入品、 つまりインターネットなどの通販で購入したバイアグラ服用の危険性に関して記載します。
まず、インターネットなどで扱われている勃起改善薬は偽物である可能性が高いです。 元々これらは処方箋医薬品であるため、医師の診察が前提となっており、 医師の介在なく流通しないように法規によって規定されています。
診察をしないで処方する事は 『無診療治療』 という医師法に違反した行為になります。 つまり、医師の介在しない処方箋医薬品の通販業は、前提としてイリーガルになってしまうので、 こうした業者は正規のメーカー、この場合はファイザー社から正規の医薬品を納入する事ができません。
そうすると、こうした業者は正規のメーカー以外から薬剤を調達する事になります。
つまり偽造品です。
これら偽造品は薬理の専門知識のない人が作っている可能性もあります。
ファイザー社やバイエル社などの勃起改善薬の正規品企業の介入調査によれば、 インターネット通販により購入された勃起改善薬の90%以上がニセモノであり、 中には危険性のある不純物や細菌が混入してたケースも報告されています。
こうしたインターネットで勃起改善薬を扱っているサイトはそのほとんどが海外にサーバーを持つ、 海外のサイトであるため ( たとえ日本語でページが書かれたものだとしても ) 、 そこには日本の法規が及ばず、危険性が高い事が周知されながらも止む無く放置されています。
薬理の専門家が係わっていない偽造品はとても危ないです。 混入している不純物や細菌によっては、 本来バイアグラで想定されないような有害事象が出る可能性があり、 実際にシンガポールなどの海外では死亡例が、 また日本の関西では救急搬送例が報告されています。
勃起改善薬の個人輸入品/通販品の服用は大変キケンです。 これらは正規のEDクリニックもしくは、 保険外診療に対応した泌尿器科クリニック等で処方されたものを服用されて下さい。
以上、バイアグラのリスクの高い使用例に関して、 4項目に分けて解説させて頂きました。 逆にこのような危険性を回避する為に推奨されるのは、
以上のような事を遵守して頂ければ、
このクスリは安全に運用できるかと存じます。
ご参考にどうぞ。
(記載:日本性機能学会専門医-須田隆興)
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