『 「バイアグラは心臓に良くない」という誤解。この誤解の始まりや原因に関して日本性機能学会専門医が解説』

バイアグラの誤解に関する解説

  • ・「バイアグラが心臓に良くない」 というのは誤解。
  • ・この誤解は「心血管系障害がバイアグラ使用後に出現」という海外市販後報告から始まった。
  • ・しかし、この発症事例のほとんどは元々、心血管系障害のリスクを持っている人達だった。
  • ・バイアグラが複数の心臓専用の薬と併用できない事も誤解の原因となった。
  • ・しかし、これらが併用できないのは、心臓への影響と言うより、純粋に飲み合わせの問題。
  • ・バイアグラを使用したセックスにて心筋梗塞が起きている事も誤解の原因となった。
  • ・しかしセックスは元々、心筋梗塞のきっかけになり得るもの、これが本剤のリスクと混同された。


最初に申し上げますが 「バイアグラは心臓に良くない」 これは誤解です
日本性機能学会専門医として申し上げますが、 「バイアグラが心臓に良くない」 という意見には医学的根拠があまり有りません。


「バイアグラは心臓に良くない」 = 「健康な男性でもバイアグラによって、段々と心臓が悪くなる」
これは本剤の服用を恐れる人が、抱いている誤解の一つです。 つまり本剤が心臓に毒として作用している印象です。


これは明確に誤解です。本剤は健康な男性の心臓を徐々に蝕むようなものでは有りません。 そもそも、そんなクスリの発売には厚労省から許可が下りません。


それではなぜ、このような誤解が生まれたのでしょうか?
こちらのページでは皆様にバイアグラを安心してご利用頂くために、 この 『誤解』 の始まりや原因に関して日本性機能学会専門医が解説をさせて頂きます。



<当ページの項目リスト>

  1. 【 「バイアグラは心臓に良くない」という誤解の始まり、『外国市販後有害事象』 】
  2. 【 「バイアグラは心臓に良くない」という誤解の原因、 『併用できない心臓の薬』 】
  3. 【 「バイアグラは心臓に良くない」という誤解の原因、 『セックス自体の心臓リスク』 】

1.「バイアグラは心臓に良くない」という誤解の始まり、『外国市販後有害事象』

誤解の始まりは外国市販後有害事象

  「バイアグラは心臓に良くない」 、または 「健康な人の心臓を害する」 、 こうした誤解は、おそらく 『外国市販後有害事象』 の報告から始まったのだと思われます。


その報告の一部を抜粋しますと
「心原性突然死、心筋梗塞、心室性不整脈、脳出血、一過性脳虚血発作、高血圧などの重篤な心血管系障害が本剤投与後に発現している。」
とあります。


これを読むと
「健康な男性がバイアグラを飲んで、何もしていないのに、いきなり心血管系障害を起こした!!」
という印象になると思われますが、実はこの事例のほとんどは、重症の糖尿病など、 心血管系障害のリスクファクターを元々持っていた患者さん達によるものだったのです。


またバイアグラは用途としてセックスの時に使う薬であり、 後述しますがセックスは心筋梗塞発症の引き金になります。


つまり、 『リスクのある人々』 が 『きっかけ』 をもって、心血管障害の発症に至っているのです。
これはバイアグラの服薬が有っても無くても、状況が変わらなかった可能性を示唆しています。


また、ほとんどの心血管障害は動脈硬化の進行にともない出現しますが、 バイアグラが 『喫煙』 や 『高血圧』 のように動脈硬化を作るかと言うと、全くそんな事は有りません。 それどころか本剤には動脈硬化を抑制する可能性が報告されているくらいです。


つまり 「バイアグラが健康な男性の心臓に良くない影響を与えて、何もしてなかったのに突然、心血管障害を引き起こした」 というのは誤解で、こうした誤解の始まりが、この 『外国市販後有害事象』 なのだと思われます。


ちなみに、この 『外国市販後有害事象』 という報告には、頻度は不明、また因果関係が不明なものを含むと記載されています。 つまり、どのくらい起きてるかわからないし、バイアグラと関係があるかもわからない、と最初から明記されているわけです。


2.「バイアグラは心臓に良くない」という誤解の原因、 『併用できない心臓の薬』

誤解の原因の一つ、併用できない心臓の薬

「バイアグラは心臓に良くない」 、こうした誤解を生んだ原因の一つとして、 本剤と併用できないクスリの中に、心臓の薬が複数存在する事があげられます。


まず本剤は、心臓の血管を広げるクスリである硝酸剤/一酸化窒素供与薬、いわゆる 『ニトロ』 と呼ばれる系統の薬剤との併用ができません。
また、心臓における不整脈を抑えるクスリである、 『塩酸アミオダロン』 と呼ばれる薬剤との併用ができません。 これらは併用禁忌薬剤であり、絶対にバイアグラとの併用ができません


このように絶対に本剤と併用できないクスリの中に 『心臓専用の薬剤』 が複数有る事は、
「きっとバイアグラがもっと心臓を悪くしてしまうからだ」
といった誤解を招く原因となってしまいました。


しかし、それは明確に誤解です。 『ニトロ』 と本剤を併用できない理由は、一緒に使う事で血圧が急激に落ちてしまい危険だからです。 また 『塩酸アミオダロン』 と本剤を併用できない理由は、一緒に使う事で重症不整脈の原因となる心電図変化が発生してしまい危険だからです。


このように 『ニトロ』 ならびに 『塩酸アミオダロン』 などの心臓のクスリとバイアグラが併用できない理由は、 純粋に飲み合わせ上の問題であり、 「バイアグラが心臓に良くない作用を引き起こすので、心臓のクスリと併用ができない」 というのは誤解なのです。


3.「バイアグラは心臓に良くない」という誤解の原因、 『セックス自体の心臓リスク』

誤解の原因の一つ

「バイアグラは心臓に良くない」 こうした誤解の原因の一つとして、 セックス自体の心臓へのリスクが、バイアグラのリスクとして混同されている事が有ります。


「バイアグラを使用してセックスしている最中に心筋梗塞を起こした」
こう聞くと、バイアグラが心筋梗塞を引き起こす引き金になったという印象を受けると思います。


しかし、実は、セックスの方が、心筋梗塞の引き金としては圧倒的に一般的です。
セックスは、元々、0.9%の心筋梗塞の発症のきっかけになると報告されています。


これはセックスが性的興奮から血圧・脈拍を上昇させるのと、 セックス自体が運動行為でもあるので、 心筋梗塞の素因がある人にとっては、セックスが心筋梗塞発症の 『最後の一押し』 になり得るのです。


実際に心筋梗塞発症後は医療指導上、セックスが禁止される場合があります。
また上述の 『外国市販後有害事象』 もそのほとんどがセックス中、 もしくはセックス直後に心血管障害を引き起こしたという報告です。


すなわち 「バイアグラを使用してセックスしている最中に心筋梗塞を起こした」
というケースも、セックスをせず、バイアグラの服用だけだった場合は、 心筋梗塞発症に至らなかった可能性が示唆されます。


このように、バイアグラがセックスの時に使用する薬剤がゆえに、 セックス自体のリスクがバイアグラのリスクと混同され、 『バイアグラは心臓に良くない』 と判断されてしまう事が有りますが、
これもやはり誤解なのです。

(記載:新宿ライフクリニック-日本性機能学会専門医:須田隆興、最終確認日:2020-03-11)


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