糖質制限はEDに対してメリットとデメリットが有ります。
メリットは、肥満例において体重減少による勃起不全症の改善が見込める事、
デメリットは、血管機能の低下からむしろ勃起不全症を悪化させてしまう可能性がある事です。
糖質は炭水化物とも呼ばれ、タンパク質、脂質、糖質からなる三大栄養素の一つで、 人間の主要なエネルギー源になります。
糖質制限は全体のカロリーにおける糖質の割合を下げる食事方法で、 基本的には、ダイエットを目的として行われます。
糖質をあまり取らない分、脂質やタンパク質で食事内容を補うので絶食などに比べると導入しやすい一方、 糖質の過剰な制限また脂質・タンパク質の過剰摂取による健康被害の可能性も危惧されています。
糖質制限はEDの改善を目的として行われる場合も有りますが、 勃起不全症に対して糖質制限は、メリットとデメリットがあり、その適応や内容は慎重に検討する必要が有ります。
こちらのページでは、日本性機能学会専門医が、
EDに対する糖質制限のメリットとデメリットに関して解説をさせて頂いております。
宜しければ、ご一読くださいませ。
<当ページのもくじ>
糖質制限のEDに対するメリットは、 まさに肥満例に対しての体重減少効果による勃起不全症の改善に尽きます。
EDを発症するリスクファクターの中で、肥満は代表的なものの一つであり、 肥満例における体重減少には、明確な勃起不全症改善の医学的根拠が有ります。
他、EDのリスクファクターとして睡眠時無呼吸症候群という疾患が有りますが、 この疾患は肥満・男性・加齢が3大要因になるので、その肥満例において減量は効果的な加療方法になります。 つまり肥満を要因とした睡眠時無呼吸症候群においては、糖質制限による体重減少によって、 勃起不全症の改善が見込まれるという事です。
このように糖質制限がもたらす体重減少効果は肥満例におけるED改善に明確なメリットが有ります。
一方で、肥満は2型糖尿病を引き起こし、糖尿病もまたEDの代表的なリスクファクターになりますが、 コントロールの悪い糖尿病、特に糖尿病のお薬を服用しているケースでは、 あまり糖質制限はお勧めいたしません。
これは、こうしたケースにおいて糖質の制限が過ぎると、 服薬内容によっては大きな副作用が引き起こされたり、 相対的な脂質摂取過剰が糖尿病自体を、 またタンパク質摂取過剰が糖尿病性腎症を悪化させてしまうケースがあるからです。
糖質制限のEDに対するデメリットは、 極端な糖質制限が血管機能の低下からむしろEDを悪化させてしまう可能性がある事に尽きます。
これは同じ哺乳類であるラットの実験結果として報告された内容で、 EDの改善を目的とした糖質制限にて、むしろEDが悪化する可能性が指摘されています。 これはまさに糖質制限のEDに対するデメリットと言えます。
この報告では、ラットに炭水化物制限食、つまり極端な糖質制限を4週間行った所、 通常の食事をさせていたラット群に比較して、糖質制限されているラット群は、 血管拡張物質である 『一酸化窒素の産生量が有意に低下』 している事、 また 『血管内皮増殖因子の発現が有意に低下』 している事がわかり、 これは勃起にとって最も重要な血管機能の低下が確認されたと言う事になります。
これが人間にも当てはまるとしたら、極端な糖質制限はEDに対してデメリットそのものと言えます。
以上、糖質制限の勃起不全症に対するメリットとデメリットに関して解説させて頂きました。
このメリットとデメリットを分けるのは、おそらくは糖質制限の 『程度』 なのだと思われます。
その 『程度』 とは、
極端に過ぎる糖質制限は一酸化窒素の産生低下や血管内皮増殖因子の発現低下から血管機能が低下してEDを増悪させる可能性があり、
一方、肥満例における軽度な糖質制限による中長期的なダイエットは、EDを改善させる可能性が有ると言う事なのだと思われます。
特に極端に過ぎる糖質制限に関しては、心筋梗塞などの健康被害も報告されており、
ED以外の健康状態にも警戒する必要が有ります。
糖質制限は医師の指導の下、適切に行うようにしましょう。
(記載:新宿ライフクリニック-日本性機能学会専門医:須田隆興、最終確認日:2021-03-08)
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