ED:勃起不全症は日本人男性の約5人に1人(18%)が持っている超多数派疾患です。
この病気は何らかの原因があって、二次的に発症する場合がほとんどで、
こうしたEDを引き起こしうる原因は 『リスクファクター』 と呼ばれています。
EDのリスクファクターは加齢、糖尿病、高血圧、肥満、運動不足、喫煙、手術、心理的要素など多岐にわたりますが、 勃起不全症はまずベースとしての加齢が有って、その上で複数のリスクファクターが関わって引き起こされているものが主体です。 このリスクファクターの中には 『改善できるもの』 『改善しにくいもの』 『改善できないもの』 がそれぞれ有り、 もちろん加齢などは 『改善できないもの』 に該当します。
EDを発症した人は、そのほぼ全てが 『EDを完全に治したい』 と感じます。
当院の外来でもそうした希望をお伺いになる事は多いのですが、
それに関する説明はとても難しいので、いつも分りやすい解説が出来ず、難渋しています。
そこで本ページでは 「EDは完全に治せるの?」 を主題に、勃起不全症の完治を短期的なもの、そして長期的なものの二つに分けて、 日本性機能学会専門医が解説させて頂いております。 宜しければご一読下さいませ。
<当ページのもくじ>
EDは短期的には完全に治せる事もあります。
ただし、それは、あくまで短期的かつ年齢相応の完治です。
例えば、50歳代で勃起不全症を発症された方がいたとします。この方は肥満、運動不足、喫煙をリスクファクターとしたEDを発症していましたが、
ダイエットと禁煙、そして運動不足の解消に成功しました。
こうした場合、これらのリスクファクターによって引き起こされていたEDは完全に治る可能性が有ります。
ただし、これは50歳代の方の勃起機能が、20歳代の機能に戻るという事ではなく、あくまで50歳代なりの 『年齢相応の完治』 です。
勃起不全を発症する以前の50歳代に戻ったとも言えます。
50歳代なりの加齢的な勃起機能への影響はもちろん残っています。
そして、これはあくまでも 『短期的な完治』 です。
例えば、この方が10歳年齢が増して60歳代になった場合、加齢によるEDリスクの上積みによって、
より様々なEDリスクファクターの影響を受けやすくなっていきます。
つまり長期的には加齢に応じてEDはより発症しやすくなって行きますので、
あくまで上記の完治状況は短期的なものに限定されます。
一方、上記の例におけるEDのリスクファクターが 『改善できないもの』 もしくは 『改善しにくいもの』 であった場合はどうでしょうか? 一例としては、手術によって海綿体神経が大きく損傷していたり、難治性の糖尿病があったりと言った状況になりますが、 こうしたケースでは、たとえ短期的であったとしても、EDを完全に治す事は難しいかと思われます。 なぜならば原因を改善せずに、EDを完治する事は短期的にも不可能だからです。
結論から申し上げると、EDは、長期的には、完全に治りうるものでは有りません。
例えば、20歳代で勃起不全症を発症された方がいたとします。この方は対人関係のストレスから心理的要素をリスクファクターとしたEDを発症していましたが、 メンタルケアと職場の配置転換によって、心理的要素が払拭され、人生で最高レベルとされる20歳代の勃起機能を復活させる事に成功しました。 この時点では、ご本人の実感としてもEDは完全に治ったといった感があるかと存じます。
しかし、これは上述した 『短期的な完治』 に該当するものです。
この方が10年、20年、30年と年齢を重ねて行き、例えば50歳代になった場合、
加齢的な性機能の低下に加えて、高血圧や糖尿病、肥満などの、加齢とともに発生しやすくなるEDリスクファクターも増加して行きます。
そうなりますと、一回完全に治ったはずの勃起不全症がまた出現するようになって来ます。
こうした傾向は60歳代、70歳代と年齢を重ねて行けば行く程に顕著になって来ます。
つまり長期的な視点においては、加齢に従いほぼ全ての男性がEDになり、 また発症したEDは加齢に応じて段階的に進行していくので、
男性の人生で 『EDが長期的に完全に治る』 事はまず有りません。
性機能関連の広告には 『回春』 など様々なキーワードを使用し、 加齢に応じた性機能の低下が、さも薬剤で改善するかのごとく記載されている場合が有りますが、 本質的には、性機能が加齢とともに低下していく事は生物として極めて自然な事であり、 こうした加齢による性機能低下の一環としてEDが存在する事は一つの生物学的な事実です。 実の所、男性にとって加齢に応じた勃起不全症の発症は、長期的には、生物として必然とも言える状態であり、 薬物や生活上の工夫でそれを回避する事は難しいかと思われます。
以上 『EDは完全に治せるの?』 をテーマの中心に、短期的完治と長期的完治に関して説明させて頂きました。
当新宿ライフクリニックでは、EDというお病気は、その方の年齢や肉体条件なりの改善目標をもって、 付き合って行くべき疾患と考えております。
その方の年齢・肉体条件なりの改善目標を設定して、 その範囲内での性機能の改善を生活習慣の是正や適切な薬物投与によって目指す。
これがEDと言う疾患のマネジメントにおいて、現時点で最も望ましいスタイルだと思われます。
また現在は副作用が少なく、優秀な勃起改善効果をもつバイアグラなどのPDE5阻害薬も有ります。
ご本人の年代・肉体条件なりの性機能の改善を目指し、 性行為が出来る肉体の環境を守っていきましょう。
(記載:新宿ライフクリニック-日本性機能学会専門医:須田隆興、最終確認日:2021-01-19)
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