精子(sperm:スペルマ)がどうやってできるのか? 男性の体のどこで、どのようにして、どのくらいの時間で作られているのか? 本稿では日本性機能学会専門医がこれを優しく解説しております。 この精子が作られる過程は、専門用語では 『精子発生』 spermatogenesisと呼ばれています。
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精子はどこで作られているのか? これはほとんどの皆さんが 『きんたま』 もしくは 『睾丸』 と答えるでしょう。
しかし60マイクロメートル (マイクロメートルは千分の一ミリメートルです。) の小さな精子にとって、 睾丸つまり精巣の長径である4.5㎝は、人間にとってのエベレストの高さの1.2倍くらいにもなります。 超巨大です。
この広大な金玉のどこで、作られているというと、 実は 『曲精細管』 という所で造られています。
なんと、この曲精細管という細い管は長さが50㎝もあり、
精巣の11倍も長いのに長径4.5㎝の精巣内にコンパクトに収納されているのです。
ここで我々、人間の精子は造られているんですね。
一回の射精で6000万個も出されるという精子は、いったいどうやって作られているのでしょうか?
まず精粗細胞 (精原細胞) というものがあって、 これは男性の体の中で大切にストックされています。 これから四個の『精子細胞』 が出来ます。
この精子細胞に 『先体』 と呼ばれる帽子が付いて、
また 『鞭毛』 と呼ばれるしっぽが付きます。
しっぽの根元の周りにはミトコンドリアというエネルギー供給の器官が付きます。
これで形は一応の完成です。
とてもシンプルに作られています。
この先体は卵子の中に入り込むための言わばドリルのようなもので、 この中に入っている酵素が卵子を覆っている膜を溶かすのです。
一方の鞭毛は、なんとこれを動かす事で自由に泳ぐ事が出来ます。 精子はとても小さいのに自立的に動く事ができて、まるで小さな生き物のようですね
このしっぽのある姿、何かに似ています。
そう! 『おたまじゃくし』 です!
人間の子供を作る為のものが、カエルの子供によく似ているのは、
なんとも不思議ですね。
ちなみに泳ぐ姿もそっくりです!
精子が作られるには、すなわち受精をさせる事が出来る 『一人前』 になるには、 なんと、64から74日もの時間が必要です。
実はこの長い時間のほとんどは成熟に必要とされる時間です。 上記2.【どうやって造られているの?】のように、 帽子としっぽが付いて、形だけは 『一人前』 ですが、 この段階ではまだまだ 『赤ちゃん』 なのです。
どうやって成熟していくのかというと、とても長い距離を旅する事で成熟します。 前述の 『曲精細管』 を移動し続けるのですね。 こうして、いわば 『トレーニング』 を重ねてだんだんと大人になって行きます。
たった60マイクロメートルの精子にとって、全長50cmの曲精細管は、 長大な距離です。この長い旅を終えたものが、やっとスタートラインに立てます。
しかし、ここからが本当のレースです。 女性の膣内で射出された6000万もの同胞の中で、 受精領域である卵管膨大部までたどり着けるのは、 たった100個程度と言われています。
東京マラソンの1500倍もの参加者のレースで、
ゴールまでたどり着けるのは、たった0.0001%!
まさに壮絶なレースです。
このレースの勝者が我々、人間になる事ができます。
(記載:新宿ライフクリニック-日本性機能学会専門医:須田隆興、最終確認日:2019-04-09)
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