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心因性EDの特徴・診断・治療について。 不安やストレスなどで発症する勃起不全症に関して日本性機能学会専門医が解説

不安やストレスで引き起こされるED

  • 心因性EDとは、不安やストレスなど心の問題で発症する勃起不全症の事です
  • 心因性EDの特徴としては 『若い人』 『突然発症』 『朝立ちや自慰行為は問題無い』等が有ります
  • 診断としては、まず心因性EDの特徴を確認します、続いて直接的原因となった心因を同定します
  • 治療としては、心因の調整、精神療法、またバイアグラ等による 薬物療法などが有ります

心因性EDとは、シンプルに言うと 『からだ』 の問題でなく、主に 『こころ』 の問題で発症する勃起不全症の事です。 心因性EDの疾患定義としては 『主たる原因が、精神的な要素あるいはパートナーとの関係にあるED』 とされています。

『精神的な要素』 とは、ストレス、不安、憂うつな気分など、心の問題の事で、
『パートナーとの関係』 とは、夫婦などパートナーとの関係においてプレッシャーや緊張感などが存在する事を示しております。


本稿では、この不安やストレスなどで発症する勃起不全症の特徴、診断、治療のそれぞれに関して日本性機能学会専門医がわかりやすく解説しております。
宜しければご一読下さいませ。


<当ページのもくじ>

  1. 【心因性EDの特徴】
  2. 【心因性EDの診断】
  3. 【心因性EDの治療】

1.【心因性EDの特徴】

パートナー間での争い

心因性EDの特徴ですが、こうした不安やストレスなど、こころの問題で発症する勃起不全症の場合、 からだの問題で発症するインポテンスに比べて、『ある日突然』 という感じで、 突発的に発症する事の方が多いです。
一方の糖尿病や加齢など、からだの問題で発症する勃起不全症の場合は、段々にペニスが硬くならなくなるといった具合に、 段階的に進行していく事が多いです。


また心因性EDの特徴としては、 『朝立ち』 (専門的には「夜間勃起現象」と言います) はいつも通りにある場合が多いです。
一方、からだの問題から発生するEDの場合は、朝立ちの程度や頻度もEDの発症と共に低下していくケースがほとんどです。


また心因性EDの特徴として、『特定の状況だけ』 で発生する事も多いです。
よく外来でお伺いするものとしては 「自慰行為は大丈夫だけど、実際のセックスだけ調子が悪くなる」 と言ったケースが有ります。


また 『特定のパートナーだけ』 で発症する事も、不安やストレスなどで発症する勃起不全症の特徴の一つと言えます。
よく外来でお伺するのは 「奥さんとのセックスの時だけ調子が悪くなる」 と言ったケースなどです。
これは特定のパートナーとの間にだけ、緊張感やプレッシャーが存在している事が原因となります。


また心因性EDの特徴として、比較的 『若い人』 に発症しやすい傾向があります。 年齢を重ねて行くと加齢や肥満、生活習慣病など、 からだの問題が中心の勃起不全症が主体になってくるので、不安やストレスなど、 こころの問題が主な原因となっている勃起不全症は、やはり若い人の方が多いです。


以上が心因性EDの主な特徴になります。


2.【心因性EDの診断】

心因性EDの診断

心因性EDの診断についてですが、こうした不安やストレスなど、心の問題で発症する勃起不全症の診断においては、 まず上記 1.【心因性EDの特徴】 で述べた心因性ならではの 『特徴』 があるかどうかを確認する事が大事です。


続いて、心因性EDの診断上で重要なのは、発症の直接的原因となった心因、つまり 『こころ』 の問題を具体的に特定する事です。
不安やストレスなど、心の問題で発症する心因性EDと、生活習慣病や加齢など体の問題で発症する器質性EDは、実は混在する事も多いです。 心因性EDの直接的な原因をしっかりと同定する事は、こうした混在例において、心因性EDと器質性ED、どっちがメインの勃起不全症なのかを判定する重要なヒントになります。


また心因性EDの直接的な原因となった心因を、患者さんと一緒にしっかりと同定する事は、 患者さん本人が能動的に心因を解決する手助けになったり、 また精神療法などの成功率が上昇したりと、治療上のメリットが多い事からも重要です。


続いて心因性EDの診断上では、からだの問題、つまり器質的な勃起不全症の原因があるかどうかチェックする事も大切です。 一見、不安やストレスなど心の問題が中心となって発症したかに見える勃起不全症でも、 実は器質的な問題が隠れていて、それがEDというサインで現われているケースも有ります。 言うなれば 『隠れた器質的ED』 ですね。


器質的な勃起不全症の原因は、実は心筋梗塞などの重大な疾患の原因と共通しているものも多いので、 これを見過ごすことは、 将来的な重病のリスクを見過ごす事にも繋がってしまいます。 ゆえに明らかに不安やストレスなど心の問題で発症したかに見える勃起不全症だったとしても、 器質的な要因をチェックする事は、その診断上とても重要と言えます。


3.【心因性EDの治療】

バイアグラシリーズ

心因性EDの治療ですが、これは 『心因の調整』 『精神療法』 またバイアグラなどのPDE5阻害薬による 『薬物療法』 の三つが主体になります。


『心因の調整』 とは、不安やストレスなど心の問題を生み出している事態の解決、 またはカウンセリングによる、こうした 『気持ち』 の整理の事です。
こうした心因の調整は心因性EDの原因治療とも言えるものですが、 実際の所、不安やストレスを生み出している 『大元の事態』 は解決が難しいケースの方が多数派です。 こうした、心因の調整が出来ない、あるいは上手くいかない場合には、 以下の精神療法、もしくは薬物療法が選択されます。


心因性EDの治療としての 『精神療法』 には、脱感作療法、感覚焦点法、性教育、行動療法(ノン・エレクト法など)、コミュニケーション訓練、 マスターベーション訓練・カップル療法など多数の種類が有ります。
しかし、こうした精神療法によるインポテンスの治療効果は今だ十分な評価がされておらず、いずれが有効であるかは明確では有りません。 また、これらの精神療法はメンタルヘルスの専門性が高い上に、こうした専門家が在籍している施設が少ない事から、 多数派疾患である勃起不全症に対して、一般性の高い治療方法とは言い難い所が有ります。


バイアグラなどのPDE5阻害薬を利用した 『薬物療法』 は、現状、心因性ED治療の根幹をなしており、 不安やストレスなどで発症する勃起不全症の治療上、その95.7%に効果があると報告されています。
実質、こうしたPDE5阻害薬による薬物療法は、心因性ED治療における現在のファーストチョイスとなっておりますが、 薬物療法だけが先行してしまうと 『こころ』 の問題が置いてきぼりになってしまうので、 まず上記 『心因の調整』 を先行し、それで解決できない場合にバイアグラなどの薬物療法を導入すると言った、 手順の流れは心因性EDの治療上重要だと思われます。


ちなみに 『こころ』 の状態を調整する薬剤、 『抗うつ薬』 や 『抗精神病薬』 は、 日本性機能学会が推奨している心因性EDの治療には、現在含まれておりません。 これはこうした 『こころ』 の状態を調整する薬剤自体が、 逆に薬剤性EDを引き起こしてしまう事があるためです。



以上心因性EDの 『特徴』 『診断』 『治療』 に関して日本性機能学会専門医が解説させて頂きました。
こうした不安やストレスなどで発症する勃起不全症は、 セックスの失敗を繰り返す事で 『次も上手くい行かないかも・・・』 といったプレッシャーが、 新たな心因となって追加されていき、悪いスパイラルにはまり込んでしまう場合もあります。 心因性EDでお悩みの方は是非とも、ご近在の日本性機能学会専門医在籍の施設にてご相談下さいませ。

(記載:新宿ライフクリニック-日本性機能学会専門医:須田隆興、最終確認日:2021-02-15)

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