バイアグラ (一般名:シルデナフィル) は、勃起不全(ED)の治療薬として世界中で使われております。 しかし近年、この薬が肥満や内臓脂肪の改善に役立つ可能性が次々と報告されており、医学界でも注目が集まっています。
特に「肥満の改善」というテーマは、現在、世界的に大きな関心を集めている分野です。 単なる体重減少だけでなく、内臓脂肪(お腹周りの脂肪)の減少、 また脂肪の質の改善は動脈硬化性疾患の予防としてもとても重要視されているテーマで、 シルデナフィル (バイアグラ) はその新しい候補薬のひとつと目されています。 こうした状況は、現在 『シルデナフィル (バイアグラ) 肥満の改善』 といった検索に至る動機の一つになっているかと思われます。
シルデナフィル (バイアグラ) とは?
このシルデナフィルは局所の血管を拡張する事でEDを改善しますが、 その薬効はペニスだけでなく、肉体の様々な部位にプラスの影響を与える事が段々と分かってきました。 つまり「バイアグラ=性機能改善薬」 というイメージだけではなく、 「肥満や代謝改善にも役立つ薬」 としての新しい側面も見えてきたのです。
こちらのページでは新宿ライフクリニックから シルデナフィル(バイアグラ)による肥満や内臓脂肪の改善に関する研究論文をご紹介させて頂いております。
宜しければご一読下さいませ。
イタリアで行われたこの臨床研究では、2型糖尿病患者59名にランダム化二重盲検プラセボ対照試験を行い、 シルデナフィルによる内臓脂肪の改善を見ています。 体重やBMIこそ大きく変化しなかったものの、シルデナフィル (バイアグラ) は偽薬 (プラセボ) に比較して ウエストの周囲径と心臓周囲の内臓脂肪 (EAT) を有意に減少させました。
また人間と同じ哺乳動物であるマウスの糖尿病モデルに対して上記の人間と同期間シルデナフィルを投薬し、 その内臓脂肪を採取した所、シルデナフィルはmiRNAのmiR-22-3pの発現を調整する事で内臓脂肪の質や分布を改善させている事が判明したと、 こちらの文献では紹介しております。
つまり、この研究では 「体重は減っていないのに、シルデナフィルで脂肪の質や分布が改善」 したという成果が重要であり、 シルデナフィルが 「見た目の数字」 ではない 『健康リスクを減らす有意義な改善を示した』 と言う事を意味しています。
アメリカで行われたこの研究では、食事誘発性に肥満化させたマウスにシルデナフィル (バイアグラ) の投与を継続的に行った所、 トレーニングによる運動パフォーマンスが有意に向上した、具体的には微小循環機能の改善と運動耐容能つまり 『持久力』 の向上が見られるようになったと文献上で報告しております。
この実験ではシルデナフィルの投与によるcGMP (サイクリックGMP) の増加と日々のトレーニングとの 『相乗効果』 によって、 マウスの運動のパフォーマンスが有意に向上したとの事です。 この運動パフォーマンスの向上が確認された個体では、基礎骨格筋毛細血管流速の増加と、 血漿灌流毛細血管密度の増加が見られたとの事でした。
元々、運動は肥満や内臓脂肪の改善には欠かすことの出来ない重要な生活習慣改善ファクターと言えますが、 肥満状態の哺乳類において、この運動のパフォーマンスがシルデナフィルによって向上するといった事象は、 シルデナフィルによる肥満や内臓脂肪改善のロジックの一つとして関わっているものと推察されます。
こちらもアメリカで行われた2つの研究です。これらの研究はシルデナフィル (バイアグラ) と他の薬剤(ロイシン、メトホルミン)を併用して、 これらの薬剤の相乗効果によって、肥満の改善すなわち減量効果があるのかどうかを検討したものになります。
どちらのランダム化比較試験もプラセボ(偽薬)と比較して、肥満状態の被験者において明らかな体重減少効果が確認されました。 シルデナフィルを含む、これらの薬剤は併用をする事でエネルギー代謝を調節し体重減少を促進させるという 『相乗効果』 がある可能性が示唆されています。
また一方の試験では、体重減少効果だけではなく、中性脂肪の低下、また高血圧患者における血圧の低下も確認され、 シルデナフィルによる多岐にわたる生活習慣病への好影響がある可能性も示唆されています。
このように、シルデナフィルには脂肪の質の改善、また肥満状態における運動パフォーマンスの改善だけでなく、 直接的な体重減少効果にも関わる可能性、そして中性脂肪値の低下や血圧の改善にも関わる可能性が期待されています。
―Q1.「バイアグラを飲めば痩せますか?」
A. 研究結果によると他剤と併用する事で 「痩せ薬」 としての効果も期待できます。
また内臓脂肪の減少、脂肪の質・分布の改善、肥満状態における運動効果の増強がそれぞれ報告されており、
間接的に本剤がダイエットや動脈硬化性疾患の予防を助けてくれる可能性が研究によって示唆されています。
―Q2.「どんな人に効果が期待できますか?」
A. 糖尿病や肥満を抱える人において、内臓脂肪の減少や代謝改善が報告されています。ただしこれはまだ研究の段階に過ぎず、医師の指導なくこうした目的に使用するのは危険です。
―Q3.「運動と一緒に使うとどうなりますか?」
A. 肥満したマウスにおける実験では 「シルデナフィル+運動」 によって、段々と持久力の向上など肥満状態における運動パフォーマンスの改善が有意に見られました。
―Q4.「既存の肥満治療薬と比べてどうでしょうか?」
A. オルリスタットやGLP-1受容体作動薬に比べると、シルデナフィルの減量効果は控えめと言えます。
しかしオルリスタットやGLP-1受容体作動薬に比べると過大な副作用は相対的に少ないため、
シルデナフィルには補助的な肥満治療薬としての役割が期待されています。
―Q5.「今後は肥満治療薬として使えるようになりますか?」
A. まだ承認はされていませんが、臨床試験が積み重なれば、将来 「バイアグラ=肥満治療薬」 として本剤の新しい役割が生まれる可能性が有ります。
こちらは注意点について説明しております。
シルデナフィル (バイアグラ) は、肥満や内臓脂肪の改善に役立つ可能性があります。 それは糖尿病や肥満状態における脂肪の質や分布の改善、また肥満状態における運動パフォーマンスの向上などに繋がる可能性、 またシルデナフィル単剤ではなく、他の薬(メトホルミン・ロイシンなど)との併用による相乗効果によって肥満者の体重減少に働く可能性などです。
シルデナフィルが今後、肥満治療薬として承認されるようになるかどうかは、さらなる今後の研究にかかっております。 また新しい情報が入りましたら、新宿ライフクリニックの日本性機能学会専門医から皆様にお届けをさせて頂きます。
1.Fiore D, Gianfrilli D, Giannetta E, et al. PDE5 inhibition ameliorates visceral adiposity targeting the miR-22/SIRT1 pathway: evidence from the CECSID trial. J Clin Endocrinol Metab. 2016;101(4):1525–1534. doi:10.1210/jc.2015-4252
※原著はこちら
2.Winn NC, Cappel DA, Pollack ED, et al. Increased cGMP improves microvascular exercise training adaptations in diet-induced obesity. Am J Physiol Endocrinol Metab. 2025;328:E711–E722.
※原著はこちら
3.Rebello CJ, Zemel MB, Kolterman O, Fleming GA, Greenway FL. Leucine and sildenafil combination therapy reduces body weight and metformin enhances the effect at low dose: A randomized controlled trial. Am J Ther. 2021;28(1):e1–e13.
※原著はこちら
4.Greenway FL, Kolterman O, Fleming GA, Zemel MB. Mechanistic insights into leucine, sildenafil, and metformin combination therapy for obesity management. Am J Ther. 2022;29(2):e120–e132.
※原著はこちら
(記載:新宿ライフクリニック-日本性機能学会専門医:須田隆興、最終確認日:2025-09-30)
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