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『ED:勃起不全と不眠症との関係についての文献を新宿ライフクリニックの日本性機能学会専門医からご紹介』

【 専門医解説:ED (勃起不全) と不眠症は深く関連している? 】


ED:勃起不全と不眠症は関連している?

不眠症は世界で最も蔓延している睡眠障害の一つであり、世界人口の成人における約8~18%が慢性不眠症に苦しんでいます。これに不眠症の症状をたまに経験する人までも含めると、 不眠症の有病率はなんど世界人口の50~60%に達する可能性すら有ります。


睡眠は人間の健康にとっては不可欠な内部活動で、不眠症などの睡眠障害は、心血管疾患、肥満、精神衛生、神経変性疾患など、さまざまな健康問題と関連しており、 そうした状態の多くは実は、ED:勃起不全と原因を共有しております。 そうした経緯もあって、不眠症はEDの潜在的な危険因子:リスクファクターである可能性が以前より疑われていました。


実際、2007年から2016年までの不眠症と診断された50万人以上の男性を対象とした最近の大規模な保険請求データからの分析では、 不眠症と診断された男性は、年齢をマッチさせた不眠症のない男性と比較して、 勃起不全(ED)と診断される可能性が1.58倍高いことが報告されております。


その一方で不眠症などの睡眠障害とEDとの関連性は、複数の交絡因子 (バイアス) の影響によって、判明しきれない場合も散見され、 また異なる種類の睡眠障害との間で相互作用がある事から、 特定の種類の睡眠障害とEDとの明確な関連性を同定する事が少々困難な所もあり、 不眠症がEDの危険因子であるかどうかをしっかりと判断するには、 さらなる研究が必要とされています。


こちらのページでは新宿ライフクリニックの日本性機能学会専門医がED:勃起不全と不眠症との関連性に関して記載がされている、 国際的な文献を3つご紹介しつつ、これに私見を添えて、EDと不眠症との関係性についてわかりやすく解説をさせて頂いております。
宜しければご一読くださいませ。


1.【文献1.不眠症が原因なのか?睡眠薬が原因なのか?】

不眠症が原因なのか?睡眠薬が原因なのか?

『不眠症』 は冒頭で述べさせて頂いたように、ED:勃起不全症の潜在的なリスクファクターとして以前から疑われており、 その関連性のロジックについては、不眠症によって視床下部‐下垂体‐性腺系が混乱し、 男性ホルモンの分泌レベルの低下ならびに酸化ストレスを介した血管内皮機能障害が引き起こされ、 その結果、勃起に必要な陰茎血管の弛緩が阻害される事が主因と推測されております。


その一方で不眠症に対して処方される睡眠薬の代表的カテゴリーであるクロナゼパムなどの 『ベンゾジアゼピン系睡眠薬』 は、薬剤性EDの原因の一つとして既に認知されているものであり、 その関連性のロジックとしては、主にこれらの薬剤がGABA-A受容体機能を亢進させる事で、中枢神経系全体の抑制がされる事、ならびに陰茎勃起の直接的な障害が引き起こされる事、 これらの影響から薬剤性EDが発症する可能性があると推測されております。


しかしベンゾジアゼピン系睡眠薬を使われている方は、もちろん不眠症で悩まれている方でもあるので、 こうした方がEDを発症された場合、不眠症とベンゾジアゼピン系睡眠薬はそれぞれ独立してED:勃起不全の発症に関与しているのかどうか判別がしにくい状況が生まれてしまいます。 こちらでご紹介させて頂く文献においては、こうしたポイントに注目し、研究をした内容に関して記載がされております。


本研究は、不眠症の男性539,109人を対象とした3年間の追跡調査で、 EDを有する成人男性とEDが無い成人男性とを対象に分析的横断研究を実施し、 ロジスティック回帰分析を用いて、粗オッズ比(OR)および調整オッズ比(OR)を推定しております。 また、効果修飾は層別解析によって評価されております。


この解析の結果として、不眠症(調整OR 2.05、95%信頼区間1.13~3.74、p = 0.019)、 そしてベンゾジアゼピン系薬剤の利用(調整OR 2.14、95%信頼区間1.10~4.15、p = 0.025)は、 それぞれ独立してEDの発症と関連していた事が判明したとの事でした。


さらに65歳以上の御高齢の方においては 『不眠症』 と 『ベンゾジアゼピン系睡眠薬の使用』 の両方がある場合、 著しく高いEDリスクを示す事が判明し (調整OR 3.96、95%信頼区間1.51~10.40、p = 0.005) 、 このそれぞれが単独で存在するよりも、この両者が共存する事によってEDリスクが更に増大する(アセチルオッズ比3.96)事から、 これら2つのリスク因子の間にはEDに対する相乗的効果が存在する可能性が示唆されました。


本研究では、不眠症とクロナゼパムなど一般的に処方されるベンゾジアゼピン系睡眠薬の使用が、それぞれ独立して勃起不全:EDのリスクを高めること、 そして高齢男性においては、これらの併存がさらに大きなEDリスクを相乗的に引き起こしている可能性がある事、このそれぞれについて解説をしております。


2.【文献2.不眠症に睡眠時無呼吸症候群が合併している場合はどうなるのか?】

不眠症に睡眠時無呼吸症候群が合併している場合はどうなるのか?

不眠症と睡眠時無呼吸症候群との間には双方向性の関係性があり、それぞれがお互いにもう片方を悪化させ、より深刻な症状や健康への悪影響を引き起こしてしまう可能性があり、 この二疾患の併存状態はこのような問題が多い事から、二疾患をセットにして 『COMISA』 という疾患概念も規定されています。 COMISAは睡眠構造を著しく乱し、睡眠の質を大きく低下させてしまう可能性があり、 またCOMISAはEDの増悪との関連性がとても高いと推測されております。


こちらでご紹介する文献においては、このCOMISAとED:勃起不全との関連性を調査するためにPubMed、Scopus、Google Scholarなどの電子データベースを活用し、 その創刊から現在に至るまでの出版物を広範に網羅した体系的な検索をベースとした疫学研究に関しての記載がされております。


この解析の結果として、不眠症と睡眠時無呼吸症候群に伴う睡眠構造の乱れ、そして間欠性の低酸素血症は、EDを著しく増悪させる可能性がある事が示されました。 またCOMISAに伴う、ホルモンバランスの乱れ、内皮機能障害、自律神経失調、炎症および酸化ストレスの増加は、 COMISAがEDに対して悪影響を及ぼす主要なメカニズムであるという可能性も示唆されました。 これらの因子は、それぞれ血管の健康を損ない、テストステロン値を低下させ、勃起の神経制御を阻害する事で、EDの重症化に寄与している可能性が有ります。


3.【文献3.睡眠の特性とED:勃起不全との因果関係はどうなっているのか?】

睡眠の特性とED:勃起不全との因果関係はどうなっているのか?

不眠症を含めた個人の 『睡眠の特性』 つまり、不眠症・睡眠時間・睡眠時無呼吸症候群・ クロノタイプ (クロノタイプとは朝型・夜型などに代表される個人の身体に備わっている1日周期のリズムの事で、いわば 『体内時計』 についてのタイプ分類の事になります) などは、 それぞれED:勃起不全とどのような因果関係にあるのでしょうか?


こちらでご紹介する文献においては、これら睡眠特性とED:勃起不全症との因果関係を単変量および多変量メンデルランダム化法(MR)を用いて検討した結果に関して記載がされております。


メンデルランダム化法(メンデルランダム化研究、Mendelian Randomization; MR)とは、ランダム化比較試験と同様に、曝露とアウトカムの因果関係を調査する研究手法の一つで、 ゲノム情報(DNAの多型など)を「操作変数」として用いて、 曝露(この場合は不眠症の存在や睡眠時間の長短など)と疾患 (この場合はED:勃起不全) との因果関係を推測するための統計手法になります。 この方法は従来の観察研究で問題となる交絡 (この場合は不眠症と合併しやすい、うつ病やアルコール摂取など) の影響を排除する事ができるのが大きな特徴となっております。


本研究では、ヨーロッパ系住民446,118人を対象としたゲノムワイド関連研究のデータから、8つの睡眠特性(不眠症、睡眠時間、クロノタイプ、睡眠時無呼吸症候群など)、 そして、5つの交絡因子(うつ病、BMI、喫煙、アルコール摂取、2型糖尿病)を元に解析を進め、 『睡眠時間の短縮』(IVW: OR = 3.02, 95% CI: 1.59–5.77, p = 7.82e-4; P FDR = 6.25e-4)、 『頻繁な不眠症』(IVW: OR = 1.70, 95% CI: 1.14–2.51, p = 8.57e-3; P FDR = 3.43e-2)、この二つは、EDの発症リスクの上昇と関連している事が明らかとなりました。 また 『朝型人間』 である事もED発症リスクとの間に有意な関連性が認められました(IVW:OR = 0.86、95% CI:0.77–0.97、p = 1.25e-2、P FDR = 4.99e-2)。 これらの関連性は、上記の交絡因子を調整した後でも維持されていたとの事でした。また感度分析の結果では多元性や異質性を示すエビデンスは認められなかったとの事でした。


こちらの研究においても、不眠症はED:勃起不全と独立した因果関係が有意に示されています。 しかし、その一方で不眠症と概念的なクロスオーバーがある 『睡眠時間の短縮』 『朝方の人間』 これらもEDと独立した因果関係にある事は、 冒頭で述べさせて頂いた 『特定の種類の睡眠障害とEDとの明確な関連性を推定する事が困難』 という状況にも関連しているかと思われました。


4.【総合まとめ:不眠症とED:勃起不全との関係】

  • ―文献1. 『不眠症』 と 『ベンゾジアゼピン系の睡眠薬の使用』 はそれぞれ独立してEDの出現と関連していた事が示されました。 また不眠症とベンゾジアゼピン系睡眠薬の使用が合併している場合は、さらに高いEDリスクが示されました。 不眠症とベンゾジアゼピン系睡眠薬の使用との間にはEDリスクに対しての相乗効果が存在する可能性も有るとの事です。

  • ―文献2. お互いに双方向性の関係性にある不眠症と睡眠時無呼吸症候群とが併存した場合、 睡眠構造の乱れ、そして間欠性の低酸素血症から、ED:勃起不全を著しく増悪させてしまう可能性がある事が示唆されました。 これは不眠症と睡眠時無呼吸症候群とが併存する事によって出現する、ホルモンバランスの乱れ、内皮機能障害、自律神経失調、炎症および酸化ストレスの増加が血管の健康を損ない、 結果、テストステロン値を低下させ、勃起の神経制御を阻害する事で、 EDに悪影響を及ぼしている可能性があるとの事です。

  • ―文献3. 睡眠の特性の内、『睡眠時間の短縮』 『頻繁な不眠症』 は、EDの発症リスクの上昇と関連している事が明らかとなりました。 また 『朝型人間』 である事もED発症リスクとの間に有意な関連性が認められています。 しかし、その一方で不眠症と概念的なクロスオーバーがある 『睡眠時間の短縮』 『朝方の人間』 これらもEDと独立した因果関係がある事は、 特定の種類の睡眠障害とEDとの明確な関連性を推定する事が困難であるという状況も暗示しているものかと思われました。

  • ―総合まとめ. 不眠症は、うつ病やアルコール摂取とは独立してED:勃起不全の発症と関連しており、 また不眠症に頻用されるベンゾジアゼピン系睡眠薬もED:勃起不全の発症リスクである可能性が有るばかりか、 不眠症とベンゾジアゼピン系睡眠薬の使用の共存は、EDリスクへの相乗効果を示してしまう可能性もあります。 また不眠症と睡眠時無呼吸症候群の合併は、重症のEDを引き起こしていまう可能性が有ります。 また睡眠障害のタイプがクロスオーバーしあっている状況は、特定の睡眠障害とED発症との関連性を追求するのを難しくさせている傾向が有るとも思われました。

5.【ED(勃起不全)と 不眠症に関しての よくある質問 Q&A】


―Q1.「不眠症はEDの原因となりますか?」
A. はい。不眠症は様々な研究においてEDの発症との関連性が指摘されています。 ただ睡眠障害のタイプ同士がクロスオーバーし合っている状況から、特定の睡眠障害とED発症との関連性を追求するのが難しい状況も有ります。


―Q2.「どれくらいの睡眠時間がEDに影響しますか?」
必要な睡眠時間は前提として、年齢差・個人差が大きいものなので、一概に時間で表現する事は難しい所が有りますが、 入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒などの 『不眠症状』 に、日中の眠気、倦怠感、注意力/集中力/記憶力の低下など 『日中の機能障害』 が伴う状況が 週3日以上かつ3か月以上で継続している状況があれば 『不眠症』 と言えますので、 この状況下においては、ご本人の睡眠時間はご本人にとって相対的に不足していると判断ができ、 もしEDを発症しているのならば、この状況が関連している可能性は大いにあるかと存じます。


―Q3.「ベンゾジアゼピン系睡眠薬はEDを悪くしますか?」
A.その可能性が指摘されております。 研究上、ベンゾジアゼピン系睡眠薬は不眠症とは独立したED発症リスクという結果も提示されており、 またベンゾジアゼピン系睡眠薬の使用と不眠症との合併は、ED発症リスクを相乗的に高めてしまう可能性も危惧されています。 ただベンゾジアゼピン系睡眠薬の急激な中断は、離脱症状など他の障害を引き起こしてしまう危険性があるので、本剤の減量また中止は、 ベンゾジアゼピン系睡眠薬を処方した医師とよく相談してから、段階的に進められるようお願い申し上げます。


―Q4.「不眠症を治すとEDは良くなりますか?」
A.改善する可能性が有ります。 ただベンゾジアゼピン系睡眠薬を使用しての不眠改善は、本剤が薬剤性ED発症のリスクでもあるので、 結果としては因果関係の複雑化したEDとなってしまう可能性があり、 不眠症の改善は、前提にEDを考えた場合は、生活習慣や睡眠環境の是正などによるアプローチが望ましい所でも有ります。


―Q5.「夜勤やシフト勤務でもED発症のリスクは上がりますか?」
A.はい。研究上では不眠症以外にも睡眠時間の短縮や朝型人間である事など、多岐にわたる睡眠特性がED発症との間に因果関係があると報告されておりますので、 夜勤やシフト勤務など睡眠バランスを乱すワーキングスタイルは、ED:勃起不全の発症リスクを上げてしまう可能性も危惧されます。


【引用文献】


1.Insomnia and Benzodiazepine Use as Risk Factors for Erectile Dysfunction: Clinical Evidence and In Silico Analysis of Physicochemical Properties
Journals:Journal of clinical medicine. 2025 Oct 01;14(19); pii: 6951.
Author:Valeria Navarrete-Anaya, Iván Delgado-Enciso, Gustavo A Hernández-Fuentes, Janet Diaz-Martinez, Osiris G Delgado-Enciso, Ana Sánchez-Arizmendi, Alejandro Figueroa-Gutiérrez, José Aguilar-Cota, Jesús Venegas-Ramírez, Patricia Calvo-Soto, Karla B Carrazco-Peña, Mercedes Fuentes-Murguia, Mónica Ríos-Silva, José Guzmán-Esquivel
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2.Exploring the link between comorbid insomnia and sleep apnea (COMISA) and erectile dysfunction: implications for male sexual health.
Journal:Sexual medicine reviews. 2025 Jan 31;13(1);105-115. doi: 10.1093/sxmrev/qeae068.
Author:Monica Levy Andersen, David Gozal, Sergio Tufik
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3.Causal relationship between sleep traits and erectile dysfunction: evidence from Mendelian randomization analysis.
Journal:Archives of medical science : AMS. 2025;21(2);597-604. doi: 10.5114/aoms/188718.
Author:Leilei Zhu, Qingqiang Gao, Xiaojia Guo, Zeqiao Xu, Jian Zhang
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(記載:新宿ライフクリニック-日本性機能学会専門医:須田隆興、最終確認日:2025-12-08)

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