亜鉛

この微量元素の欠乏は本当にあなたの性機能障害の原因なのでしょうか?



「本当にあなたの性機能障害に関与しているのでしょうか?」

亜鉛の摂取はあなたのEDを改善させているのでしょうか?


<当ページの項目リスト>

     
  1. 【亜鉛と性機能障害】
  2. 【亜鉛欠乏症とは】
  3. 【EDの代表的リスクファクターには入っていない??】
  4. 【あなたは欠乏症なのでしょうか?】
  5. 【根拠のある性機能障害治療を】

亜鉛の服薬

亜鉛の内服であなたの性機能障害は改善するのでしょうか?


1.【亜鉛と性機能障害】

【要約】
「亜鉛の内服はほとんどの性機能障害の改善に意味が無いと思われます」
―亜鉛欠乏症は稀な疾患で時に性機能障害を引き起こす事が有ります
―亜鉛のサプリメントを性機能障害の治療として薦めているホームページ・施設が有ります
―しかし後天的な亜鉛欠乏症は炎症による腸疾患など根本原因がある方が主体です
―また初期症状は性機能障害と言うより味覚異常・皮膚疾患などが主体です
―亜鉛欠乏症は性機能障害であるEDの代表的リスクファクターに含まれていません
―亜鉛の内服は性機能障害であるEDのガイドライン上の治療方法に含まれていません



栄養が偏りがちな都市型生活者の方には、 栄養補充目的にサプリメントを使用されている方も多いかと存じます。 そしてEDなどの性機能障害に対してはサプリメントとして亜鉛を服用されている方が多い様です。 この性機能障害に対する亜鉛のサプリメントは様々なホームページや施設で推奨されている傾向がありますが、 専門医の主宰するED専門クリニックである新宿ライフクリニックでは、 患者さんに亜鉛のサプリメントをお勧めする事はほぼ有りません。
それは何故ならば、性機能障害を発症されていて、基礎疾患が無く、普通に社会生活を送っている方には、 亜鉛を服薬して頂いてもこれに対する改善効果が希薄であると考えているからです。


自分(新宿ライフクリニック院長)は前述の通り、性機能障害の専門医でありでEDの専門家ですが、 じつは日本内科学会認定の総合内科専門医でもあり、 性機能障害の診療以外にも専門の内科医として16年臨床に携わってきました。 しかし亜鉛が欠乏している、すなわち「亜鉛欠乏症」の方は実は数えるほどしか見た事が有りません。 何万人もの患者さんを外来で診察して来たのにです。
また成人で後天的に亜鉛欠乏症を発症されている「数えるほど」の方とは、 基礎疾患にアルコール中毒や炎症による腸疾患があったり、 また長期にわたる中心静脈栄養をされていたりと、栄養吸収の異常を起こし得るベースが有る方しかいませんでした。


つまり長年にわたる内科医としての臨床経験と亜鉛欠乏症という病態を合わせて考えると、 性機能障害以外の自覚症状が全く無く、栄養吸収の異常にかかわる基礎疾患が全く無く、食事などを含めた社会生活が一般的な方が、 後天的な亜鉛欠乏症を原因としてEDなどの性機能障害を発症し、 その治療のためにサプリメントの服用を必要とする事はあまり無いように思えるのです。


本項では性機能障害に対して服用を推奨されがちな「亜鉛」を中心に、 亜鉛欠乏症に関して、また性機能障害に関連したガイドラインを参照した上での亜鉛服用の是非など、 多岐にわたって解説をしております。
宜しければご一読下さいませ。


2.【亜鉛欠乏症とは】

亜鉛の欠乏状態を医学的に「亜鉛欠乏症」と言います。 他院やインターネット通販にてEDなど性機能障害に対して処方されている亜鉛サプリメントはこの状態の是正を目的としたものです。 亜鉛欠乏症はあまり一般的で無い、稀な病態なので、本疾患が実際、どういう形で発症するのか、 またどのような症状が出るものなのかご存じない方も多いのではないかと存じます。 そこでここでは「亜鉛欠乏症」に関して詳しく説明致します。


亜鉛欠乏症は先天と後天とがあり、 先天のものは乳児が主体の遺伝疾患で、発育異常やひどい皮膚炎を引き起こすような病態ですので、 基本的に成人になってから性機能障害に対して亜鉛サプリメントを服用されている方は、 後天のものを想定されているのだと思われます。
亜鉛は体内では鉄に次ぎ豊富な微量元素であり、さまざまな食材に内包されている関係上、 欠乏症まで至る方は基本的に基礎疾患や生活習慣また薬剤など根本原因がある方が主体と言えます。

  • ・基礎疾患:吸収不良症候群、炎症による腸疾患、アルコール中毒、長期中心静脈栄養を要する疾患等
  • ・生活習慣:激しくかつ偏った若い方のダイエット、また健康食品の偏食等
  • ・薬剤:亜鉛のキレート作用を持つ薬剤(抗生物質、利尿薬、降圧薬の一部)の長期的投与等

そして亜鉛の欠乏による主な症状としては①味覚・嗅覚の低下、②発疹・脱毛・皮膚炎などの皮膚症状、 ③耐糖能異常(糖尿病の原因であり前段階と言えます)、④骨・関節の異常、⑤下痢、
⑥性機能障害などが有ります。
基本、亜鉛欠乏症の初期症状は①味覚・嗅覚の低下、また②発疹・脱毛・皮膚炎などの皮膚症状が主体とされており、 これらベーシックな症状が全くなく、性機能障害のみで発症するケースは稀と言えます。


つまり亜鉛欠乏症を母体にしていて、性機能障害以外の自覚症状が無い状態は、 「稀な疾患」のさらに「稀な状態」と言う事ができます。


3.【EDの代表的リスクファクターには入っていない??】

この日本において性機能障害をその専門領域として研究・報告している学術集団は「日本性機能学会」が主体です。 実際、日本において「ED診療ガイドライン」など、性機能障害に関して医師など医療従事者に対して、 その診断や治療方法を解説する文書はこの学会の作成委員会が中心となって編纂しております。 こうしたガイドラインは日本における「根拠のある性機能障害診療」の基軸と言えますが、 これらには「亜鉛」に関しての記載はあるのでしょうか?


性機能障害を代表してEDに関してのガイドラインを解説しますと、 まずこの性機能障害には「リスクファクター」つまり発症危険因子は14種ほどあるのですが、 この中に「亜鉛欠乏症」は一切入っていません。 つまり学会は亜鉛欠乏症をこの疾患の発症危険因子として、 高い頻度もしくは大きな根拠のあるものと認識していないという事です。
また本ガイドラインにおいて推奨される臨床検査に「亜鉛の測定」という文言は一切無く、
また推奨される薬物治療に「亜鉛サプリメント」という文言も一切有りません。
つまり2012年度版ED診療ガイドライン(現時点で最も新しいEDのガイドライン)には、 リスクファクターを含めて、亜鉛を主体にした記述自体がほぼ有りません。


「亜鉛欠乏症はEDなど性機能障害の主原因の一つで、発症されている患者さんは亜鉛サプリメントを服用した方が良い」 こうした認識あるいは指導は、性機能障害を研究している主体の医学会が支持しているものでは無いという事です。


4.【あなたは欠乏症なのでしょうか?】

亜鉛欠乏症の解説と、 性機能障害を主体に研究する学会が編纂した「ED診療ガイドライン」における亜鉛関連記載の希薄さについて解説させて頂きましたが、 こちらの項では最初の命題に立ち返りたいと存じます。


果たしてあなたは「亜鉛欠乏症によって発症した性機能障害」なのでしょうか?
味覚異常や皮膚症状などが一切なく、栄養状態の異常を引き起こす罹病疾患や生活習慣もなく、 社会通念的に「通常の食生活」をされており、 その上でEDなどの性機能障害に悩まれているあなたは果たして本当に亜鉛欠乏症なのでしょうか? そしてそのサプリメントを服用する事であなたのEDは改善したのでしょうか?


性機能障害に対して亜鉛を勧めるクリニックで割とありがちなのが、 PDE5阻害薬つまり勃起改善薬と亜鉛とを抱き合わせて処方するケースです。 亜鉛だけを内服している場合は、 勃起の改善が見られない場合に亜鉛内服から離脱しやすいかも知れませんが、 勃起改善薬とこれを併用した場合は、 亜鉛内服も性機能障害の改善に効果を示しているのかもしれないという余地を残します。


「亜鉛と勃起改善薬を併用する事で効果が上がりやすい」 このようにプレゼンテーションされる事もあるかも知れません。 しかし亜鉛には併用する事で勃起改善薬の効果を高めるような作用は、 少なくとも勃起改善薬製造の先発三社であるファイザー株式会社・バイエル薬品株式会社・ 日本イーライリリー株式会社/日本新薬株式会社の報告には一切有りません。


臨床検査などによって明確に診断された亜鉛欠乏症では無い方でも、 亜鉛の内服によって「性機能障害が改善した」という実感のある方はこれを継続されるのかも知れません。 しかしその性機能障害の改善状態はその内服をやめても継続するかも知れません。 つまり運動不足や高血圧など顕在化した他のリスクファクターの是正によって性機能障害が改善されているだけなのかも知れません。
明確に診断された亜鉛欠乏症では無い方で、 これを勃起改善薬とずっと併用されている方は、 一回この併用を止めてみるのも有用なトライアルかも知れません。


もしそれぞれのケースで亜鉛をやめても状況に変化が無かった場合、 性機能障害のために高いサプリメントを購入しなくて済むようになります。
ただし誤解の無いように申し上げますが、 明確に亜鉛欠乏症と診断されている方はEDである・無いに問わず、 欠乏症を診断した医師の処方・指示に従うべきです。 自己判断による服薬中断は明確に欠乏症を診断されている方においては全く望ましく有りません


5.【根拠のある性機能障害治療を】

以上、亜鉛と性機能障害に関して4項目にわたり概説させて頂きました。


ネットなどを見ていると根拠のある性機能障害治療は選択肢が多いように思われるかも知れません。 しかし既出の「ED診療ガイドライン」などに記載のある化学的、統計学的に確かな根拠のある性機能障害治療は、 実はそんなに多くありません。


EDなどの性機能障害は決して近代になって表れた新種の疾患ではなく、 おそらく人類発祥以来から存在している、非常に基本的な医学的問題の一つと言えます。 そして人類の歴史の歩みと共に、それを改善させるための民間療法や伝統療法が生み出され、 また淘汰されてきたのだと思われます。 例えば漢方治療もそうした性機能障害治療カテゴリーに入るのかも知れません。


しかしこれら民間療法や伝統療法には、EDに対してのPDE5阻害薬ほどの化学的・統計学的に有意な改善結果が示されず、 故に専門的な性機能障害の最前線でこれらはメインとして運用されていない状況です。 亜鉛のサプリメントもまた同様です。 性機能障害は明確な根拠のある治療を受けられるようお願い申し上げます。 専門医などの医学的資格は、まさに正しく根拠のある治療の啓蒙を責務としています。 「いろいろ試してみたけどダメだった」と言う方、 是非とも専門医のいる施設に相談して見てください。 あるいは様々な誤解が解け、正しい性機能障害治療の道筋が見つかるかも知れません。