セックス中の突然死とその予防に関して


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腹上死とその予防に関して

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【腹上死とは?】
腹上死とは愛上死とも言って、性交中に,突然に死亡する状態を示した言葉です。 腹上死は英語において、それに相当する言葉が無く、 フランス語におけるmort d’amourつまり愛上死という言葉が腹上死に相当します。 そうかといって英語圏の人々が、こうした腹上死のようなセックス中の死亡事故に関して無警戒かと言うと、 日本よりもセックス頻度が高い傾向にある欧米では、むしろ日本よりもこうした腹上死的状態に関して、 広範にディスカッションされており、その予防的対策に関しても具体的に検討されている傾向が強いです。
腹上死は医学的見地においては、精神的興奮を伴う運動行為中の死亡事故と考える事が出来ます。 それは、より詳細に申しますと、 セックスという行為は客観的には自律神経機能の活発な活動と、 脊髄反射などの幾つかの特異的生理現象を除けば、 「精神的興奮を伴う運動」が身体に対する影響の主体として解釈する事が出来るため、 そのようにカテゴライズが可能です。
すなわち、より分解して解釈すると、 セックスが及ぼす身体における主な反応としては、 心拍数の上昇、血圧の上昇が主体と思われます。 特にセックスは通常の運動に比較して精神的高揚を伴っていますので、 心拍数・血圧は同レベルの運動行為よりもより高い数値を示す可能性が高いです。
つまり腹上死とは主に心拍数や血圧の急峻な上昇が関与して発生する突然死とも考える事が可能です。


【セックスの運動としての程度】
セックスは医学的に一般的な身体活動のスケール:METs(メッツ)で換算すると、 5から6くらいのレベルに相当するとされております。 Metsとは1時間に体重1kg辺り1Kcalを消費する運動量と定義されており、 目安として、安静下の座位姿勢が1Metsに相当するとされています(座位が運動かどうかはおいて置いて)。 このMETs換算で5から6の運動とは他の運動行為で表現すると、 階段の昇降や早歩きに相当する運動レベルです。
しかしセックスには運動行為として、いくつかの他の運動行為と差別化するべき要素が有ります。 その一つとして、セックスは上記のとおり、通常の運動には伴わない高い精神的昂揚が有る事、 これは純粋な運動行為として発生する心拍数の上昇、 血圧の上昇に対して更に付加的な上昇を来す事が想定されます。
またセックスは階段昇降や早歩き以上に個人における運動レベルの差異が大きいと思われ、 その身体活動量は体位や相手によっても変動しやすいものです。
また不倫や愛人等との性行為など、背徳的な状況に置いては、 精神的高揚による心拍数や血圧の上昇が通常より高くなるとも報告されており、 通常の性行為よりも腹上死的なセックス中の事故の頻度が上昇する可能性が有ります。


【腹上死の原因に関して】
腹上死発生における主たる影響が心拍数、血圧の上昇などによってもたらされると考えますと、 腹上死の直接の原因疾患としては、 心筋梗塞・狭心症などの心血管疾患、 また脳動脈瘤破裂による脳出血、 また運動誘発性の不整脈などが主なものとして想定されます。
心筋梗塞や狭心症などの心血管疾患は、 たばこ、肥満、生活習慣病などが原因となって動脈硬化が進行している人に発生するのが主体です。 腹上死の原因として心血管疾患が発生する状況として、 一例を挙げると、本人も知らないうちに心臓を栄養する血管である冠動脈の流れが、 動脈硬化によって段々に悪くなって行き、 それがセックスに伴う心臓の活動の亢進に伴って、 相対的に血流障害が増悪化する事で、狭心症、心筋梗塞の発症に至り、 腹上死を引き起こす、つまりセックス中に死に至るというシチュエーションが有ります。
また脳を栄養する脳血管には生来の脆弱性や動脈硬化によって動脈瘤という血管のこぶが出来る事が有ります。 このこぶは破裂する事が有り、脳出血の大きなリスクになるのですが、 破裂前のものは未破裂動脈瘤と呼ばれます。
この未破裂動脈瘤は破裂前には自覚症状が希薄で、 知らない間に出来ている事が多いとされています。 この未破裂動脈瘤は喫煙や血圧の上昇、また過度の飲酒などが、 リスクファクターとして破裂の可能性を高めるとされており、 性行為による心機能の亢進によって血圧が上がる事で、未破裂動脈瘤が破裂してしまい、 腹上死に至るというケースが考えられます。
またまれに運動をする事で不整脈が引き起こされてしまうケースが有り、 その不整脈の中でも特に危険な致死性不整脈を 運動下に引き起こしてしまう事も有ります。
これはスポーツ選手の試合中の突然死などでも時に問題にされる事が有ります。 性行為も上記のとおり、運動行為に該当しますので、 少ない頻度ながらこうした運動誘発性の致死性不整脈を引き起こしてしまい、腹上死に至る事が考えられます。
腹上死中の発生頻度上では、 心筋梗塞・狭心症などの心血管障害が原因としては主体と思われ、 特に米国などでは米国心臓協会(AHA)などの学術団体がセックスの際に発生する、 心血管障害に関しての予防的対策の検討を続けています。


【腹上死の予防に関して】
セックス中の心拍数や血圧の上昇による、 心血管障害、脳動脈瘤破裂、運動誘発性の致死性不整脈等の発生が、 腹上死の原因の主体であるならば、 これらは予防的な対策がとれる可能が有ります。
まず心筋梗塞や狭心症などの心血管障害に関しては、 セックス中のそれらの発生を予防するために、 生活習慣病の素因が有ったり、肥満や喫煙などのあきらかな動脈硬化のリスクのある方は、 動脈硬化のレベルを医学的に測定してもらったり、 その上、心血管障害の潜在が怪しいようなら、 運動負荷心電図や心臓血管のCT検査などの施行が望ましいと思われます。 心血管障害の原因となる心臓の冠動脈の有意な狭窄化が有る場合には、 待機的な心臓カテーテル処置によってこれを治療する事も可能です。 これをもって心血管障害による腹上死の予防をなし得ます。
また脳動脈瘤の破裂は上記の心血管障害による腹上死よりも低頻度な事象と思われますが、 長期に渡る生活習慣病があったり、遺伝的つながりのある近親者に脳内出血などの家族歴が存在する場合には、 人間ドックなどで脳血管のMRAなどを撮影してもらい、 未破裂動脈瘤が脳血管にあるかどうかをチェックしてもらうのも非常に有意義です。 破裂のリスクが高い未破裂動脈瘤も待機的に治療する事が可能です。 これをもって動脈瘤破裂に伴う脳出血による腹上死の予防をなし得ます。
また更に発生頻度は低くなりますが、 運動誘発性の致死性不整脈に関しては、 例えば今までも運動時に異常を感じる事が有ったり、 運動中の突然死や致死性不整脈に関する家族歴が有る状況においては、 運動負荷心電図などの不整脈の検査を病院にてチェックしてもらうのが望ましいです。 こうした事例に関しても埋め込み型除細動器などの、腹上死の原因に対応した予防策が取れる可能性が有ります。
なお、バイアグラの発売当初には、 腹上死つまりセックス時の突然死と本薬剤が髙い因果関係を持つと想定されていた時期が有りました。
しかし実はEDとは狭心症や心筋梗塞の原因となる高血圧、糖尿病などの生活習慣病によって発症する事が多く、 現在ではこうした心血管疾患の前に発症する疾患として、 EDが大血管障害の警告疾患として扱われるようにもなって来ました。
ゆえに諸説は有りますが、 こうした状況に関してはバイアグラが腹上死の誘発因子であると言うよりも、 むしろ腹上死のリスクのある人にEDが多く、 そうした方がバイアグラが良く使用されているという状況が影響していた可能性が示唆されます。
(記載:日本性機能学会専門医-須田隆興)


written by 新宿でレビトラ処方を、新宿ライフクリニック.


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