バイアグラはクリトリスを勃起させるが不感症の改善効果は示さない



不感症女性のクリトリスに対するバイアグラの効果

Influence of Sildenafil on Genital Engorgement in Women with Female Sexual Arousal Disorder.
J Sex Med. 2012 May 23.


女性にバイアグラシルデナフィル)服用させた場合、どのような効果が得られるのか?クリトリス(陰核)は勃起するのか?不感症には効果があるのか?催淫作用はあるのか?と、しばしば質問を受けます。
女性の不感症に体するバイアグラの効果についての答えの一つが、この報告になります。
性的に興奮するのに障害のある女性(性的な欲求はあるものの、性的な興奮が不十分な女性。いわゆる不感症)に、バイアグラ(シルデナフィル)を服用して頂き、経時的にMRIを撮影し、クリトリス(陰核)の勃起を調べています。
結果から先に申し上げると、バイアグラ(シルデナフィル)の服用の有無にかかわらず、健常な女性であれ、不感症(性的興奮障害)の女性であれ、性的な視覚的聴覚的な刺激にて、クリトリス(陰核)は、ともに勃起することが示されました。
バイアグラ(シルデナフィル)は、統計学的に有意差はありませんが、ややクリトリス(陰核)を勃起させました。
この報告では、不感症(性的興奮障害)の原因は、クリトリス(陰核)の勃起、女性器の腫大ではないという事です。
仮に、クリトリス(陰核)を勃起させる事が出来ても、性的な興奮が増加する訳ではなさそうです。
バイアグラ(シルデナフィル)を女性が服用しても、クリトリスを勃起させる傾向にできるかもしれませんが、催淫作用は得られないと結論されます。 つまり、バイアグラは女性の不感症(性的興奮障害)を改善いたしません。
バイアグラと女性の不感症(性的興奮障害)の関係について、詳しく知りたい方は、続きをお読みください。


クリトリスおよび女性生殖器の充血は、性的な刺激による生じる肉体変化の一つです。
過去に報告した研究は、クリトリスの勃起をダイナミックMRIの撮影により確かめるものでした。 MRIは、女性の生殖器の変化を定量的に評価するための、再現性があり、非侵襲的で、客観的な方法です。
不感症(性的興奮障害)でない健康な女性において、性的興奮により、クリトリス(陰核)の容積が50〜300%と勃起増大する事を報告しています。
女性の不感症(性的興奮障害)は、持続的または反復する、十分な性的な興奮が得られない、維持でいない状態、と定義されます。
不感症は、主観的な性的興奮や性器の潤滑、クリトリスの勃起、腫大や他の体性感覚の欠如とも表現されることがあります。
パイロット試験で、性的な視聴覚刺激による、不感症女性のクリトリスの勃起をとらえるのに、MRIが有用であることを示しました。
また、プラセボ(偽薬)と比較し、バイアグラ(シルデナフィル)を服用した女性では、有意差はありませんが、女性器の腫大、クリトリスが勃起する傾向がある事も示しました。
パイロット試験のデータから、バイアグラの不感症(性的興奮障害)の関係を調べるために、この試験を行うことにしました。
不感症(性的興奮障害)の女性を対象とし、バイアグラ(シルデナフィル)を服用した場合とプラセボ(偽薬)に比較し、MRIを用いた画像診断にて、 性的な視聴覚刺激によるクリトリス(陰核)の勃起を評価しています。
バイアグラ(シルデナフィル)が、クリトリスおよび女性生殖器の反応を増大すると、仮説を立てています。 バイアグラ(シルデナフィル)服用群とプラセボ(偽薬)群に分け、女性不感症患者における、性的な視聴覚刺激による女性生殖器、クリトリスの興奮状況を、客観的に評価します。

閉経前の女性で、最低6ヶ月間以上にわたり不感症(性的興奮障害)と診断された異性愛者を対象としています。
不感症の診断は、不感症診療の経験を積んだ臨床医による診断と、 Female Sexual Function Questionairre と Sexual Distress Questionairre で行っております。
性的欲求障害は除外とし、炎症や解剖学的な事由により性交時疼痛を認めている場合、性機能不全が特定のパートナーや状況に限定してる場合、 不感症(性的興奮障害)を来たしうる病気(糖尿病、甲状腺疾患、高プロラクチン血症など)が未治療な場合、精神科治療薬や血管作動薬、治験薬を服用している場合は、これも除外しています。
被験女性は、血液検査にて、遊離テストステロンが0.7pg/ml以下の場合、エストラジオールが40pg/ml以下の場合も除外しています。
この試験は倫理委員会の承認を得たものであり、被験女性にも承諾を得たものです。

無作為抽出二重盲検査プラセボコントロール-クロスオーバー試験とし、不感症の被検女性を、初めにバイアグラ(シルデナフィル)を服用し、 2回目にプラセボ(偽薬)を服用する群と、初めにプラセボ(偽薬)を服用し、2回目にバイアグラ(シルデナフィル)を服用する群とに無作為で振り分けております。
不感症の被験女性は、月経開始7日目から12日目の間に、女性器、クリトリスのMRIを施行としています。
MRIの撮影は、最低でも3日間の間隔を設けています。
多くの不感症女性被験者は、異なった月経周期の間に、女性器、クリトリスMRIの撮影を行っています。
不感症女性被験者は、骨盤の前後壁に撮影用のコイルを装着し、仰臥位で女性器、クリトリスMRIの撮影を行っています。
生殖器のT2強調像は、開始時から3分間隔で9分に渡り撮影します。
この時、MRIに設置されたヘッドフォンとビデオディスプレイには、音声、映像ともに提供されていません。
クリトリス(陰核)の勃起容積は、データの集積に関与しない、臨床データや服薬データも伏せられた観察者により計測されます。
個々のクリトリス(陰核)の勃起容積は、撮影ごとに3回の計測し、その平均を計算しています。これを以後の測定の基準とします。
不感症女性被検者は、バイアグラ(シルデナフィル)100mgまたはプラセボ(偽薬)し、15分間直立姿勢を取った後、MRI撮影装置に入ります。
服薬30分後、3分おきに30分に渡り10回の撮影を行います。
このとき、性的な視聴覚刺激をヘッドフォンとディスプレイを通して加えています。
性的な視聴覚刺激は、異性間の性行為セックスのビデオ映像です。
いずれの撮影時において不感症女性被験者のクリトリスの勃起容積が測定され、基準となるクリトリス(陰核)の勃起した容積と比較します。
50%以上クリトリス(陰核)が勃起した場合、陽性と判断します。
50%以上のクリトリス(陰核)の勃起を閾値としたのは、先立って行われた試験で、 性機能障害を有さない健康女性で、性的な視覚聴覚刺激により、50〜300%のクリトリス(陰核)の勃起を認めていたからです。

22歳から44歳(平均33.4歳)の19人の不感症女性が、この試験を終了しております。
1名の被験者は、試験とは関係のない理由にて、辞退しております。
15人の不感症女性被験者(79%)は、不感症のみに罹患しており、5名の女性被験者は、二次性の性機能障害を合併していました。4人は不感症(性的興奮障害)とオーガズム障害、1人は、不感症(性的興奮障害)と性行為時疼痛を認めています。
バイアグラおよびプラセボの服薬30分後、13人の女性被験者で、50%以上のクリトリス(陰核)の勃起を認めました。
バイアグラおよびプラセの服薬60分後の最後のMRI撮影では、バイアグラ(シルデナフィル)群の17人(89%)、プラセボ(偽薬)群の16人(84%)に、クリトリス(陰核)の勃起を認めています。
全てのMRI撮影において、バイアグラ(シルデナフィル)群とプラセボ(偽薬)群で、クリトリスの勃起に有意差は認めませんでした。
総計が取られたデータは、基準値に比較して、性的な視聴覚刺激30分後には、両群とも80%以上のクリトリス(陰核)の勃起を認めています。
バイアグラおよびプラセボの服薬から30分〜60分後の間では、そのクリトリスの平均勃起率は15%以下です。
変動係数は、バイアグラ(シルデナフィル)またはプラセボ(偽薬)を摂取するこで30%程度、軽度にクリトリスを勃起します。

米国では、女性の不感症(性的興奮障害)の有病率は、6%〜21%と見積もられています。
女性の不感症(性的興奮障害)は、性器の潤滑や腫大、クリトリスの勃起の欠如として表現され、不感症治療のオプションとして、女性器の腫大をターゲットとすることが、潜在的に有益であるとされていました。
男性におけるED薬では、バイアグラ(シルデナフィル)により陰茎の血管平滑筋を弛緩させる事により、陰茎海綿体への血流を増加させる事が出来ます。
男性の陰茎と女性のクリトリス(陰核)は、発生学的に類似しており、研究から、類似の経路により、クリトリスが勃起する事も明らかにされています。
外陰やクリトリス(陰核)、乳首の血管以外の平滑筋は、フォスフォジエステラーゼ5が発現している事が知られています。
バイアグラ(シルデナフィル)は、性的な刺激により、骨盤腔内の血管を充血させ、勃起させます。
それゆえに、バイアグラは、女性の不感症(性的興奮障害)における性的興奮反応も増加させると考えられました。
今回の試験では、大多数の不感症女性において、クリトリス(陰核)の勃起が正常と同等である事を、MRI検査により示しました。
また、バイアグラ(シルデナフィル)は、勃起率を高率に増大させませんでした。
バイアグラ(シルデナフィル)は、不感症(性的興奮障害)の女性に対して、何ら影響しませんでした。
被験者は、女性器の血流障害を有しているようではありませんでした。

この研究では、いくつかの書き示しておくべき制限がございます。
女性被験者が、検査中に与えられた性的な資材で、性的な興奮をどの程度得ていたか評価できません。
今回使用した資材が性的に興奮させるのに十分であった事実から、視覚聴覚刺激に高率に反応すると判断しています。
試験は小規模でありましたが、このことは、MRI検査がコストがかかることから、避けられませんでした。
その上、除外基準から、多くの参加者を排除しなければなりませんでした。
今回の検査での否定的な結果の理由の一つは、女性の不感症(性的興奮障害)の広範な定義による可能性があります。
女性の不感症(性的興奮障害)は、持続または反復する十分な性的な興奮が得られない、維持できない状態で、個人に苦痛を与えるものとされています。
主観的な性的興奮の欠如や女性器の潤滑や腫大、クリトリスの勃起の欠如や、その他体性感覚の欠如と表現されるとされます。
この不感症(性的興奮障害)の定義によれば、女性器の腫大、クリトリスの勃起のみ認められない不感症(性的興奮障害)の女性が一部存在し、PDE5阻害剤が性器の反応を増加、クリトリスを勃起させる可能性がありました。
単純な性器の腫大、クリトリスの勃起を改善する事が、性的な満足感を導くかどうか、明らかではありません。
他の研究では、女性の性的興奮についての主観的な報告は、女性器の血管の充血に一致する必要がないとされ、今回の研究も、これを支持しています。
性的興奮に対す反応としての男性の勃起反応と異なり、女性の性的興奮反応は、血流に依存していません。

今回のMRIを用いた、女性器、クリトリスの定量的な研究では、バイアグラ(シルデナフィル)は、有意差はありませんが、不感症(性的興奮障害)の女性の女性器を腫大、クリトリスを勃起させる傾向にありました。
今回の研究は、統計学的に有意差を得ようとし、厳格な診断基準、除外基準を設け、多施設で行われましたが、しかし、有意差は得られませんでした。

定量的に評価するためにMRIを用いていない研究報告がございます。
2001年にCaruso等が報告したものですが、53名の閉経前女性で不感症(性的興奮障害)患者を対象に、二重盲験クロスオーバー試験を行っています。
被験者は、無作為に6グループに分けられ、異なった順序で服薬を指示されています。
バイアグラ(シルデナフィル)25mg、バイアグラ(シルデナフィル)50mgとプラセボ(偽薬)です。
バイアグラ(シルデナフィル)服用群は、被験者は、性的興奮の頻度、楽しさ、性行為の満足感、性交によるファンタジーの、有意な増加を得ています。

Berman等は、202名を対象に試験を行い、報告しています。
性的欲求障害を除く女性被験者において、バイアグラ(シルデナフィル)の治療は、欲求や疼痛、楽しさには変化には変化はなく、性的興奮感覚や性的興奮による湿潤、オーガズムの有意な改善を認めています。
性的欲求障害の女性被験者では、バイアグラは何も改善しなかったとしています。

Basson等の報告は、大規模な二重盲験プラセボコントロール試験です。
性機能障害を有す577人のエストロゲンによる治療を行っている女性と、204人のエストロゲンが欠乏した女性を対象としています。
結果は、バイアグラ服用にても、オーガズムまでの時間や強度、主観的な女性器の性的興奮は、有意な改善を認めませんでした。
それゆえに、女性の不感症(性的興奮障害)に対するバイアグラ(シルデナフィル)の臨床効果は、説得力のあるものではありません。

様々な研究報告がございますが、アメリカ食品衛生局(FDA)は、女性の不感症(性的興奮障害)に対する薬物療法を未だ承認していません。
クリトリスなど末端器官の反応や末端器官の反応をターゲットとした薬物の研究が、不感症(性的興奮障害)の原因を特定出来なかったため、今後の不感症(性的興奮障害)の研究は、中枢神経の性的興奮メカニズムに焦点を当てる必要があります。

バイアグラ(シルデナフィル)は、不感症(性的興奮障害)女性のクリトリス(陰核)の勃起を有意に増加させませんでした。
今回の研究においては、多くの女性のクリトリス(陰核)の勃起の減少は認めていません。 これは、女性の不感症(性的興奮障害)が、主には女性器の腫大、クリトリスの勃起の障害でない事を示しています。


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