時に脳腫瘍によって勃起不全が引き起こされる事が有ります。


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下垂体腫瘍によるEDの発症

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【下垂体腫瘍とED】
下垂体腫瘍によってEDが時に引き起こされる場合が有ります。
下垂体腫瘍は詳しくは後述しますが、大脳の下面、真ん中にある内分泌腺である下垂体にできる腫瘍の事です。 脳の一部であるこの器官はホルモンを分泌する腺細胞の集合体と 脳の直接的続きである神経で構成されたとてもユニークな器官です。
この器官から分泌されるホルモンはいずれも生体のコントロール上必要不可欠なものであり、 肉体の成長に関連する成長ホルモンや月経周期等に関連する卵胞刺激ホルモン、黄体化ホルモン、 また甲状腺をコントロールする甲状腺刺激ホルモンなどがその代表的な内因性物質と言えます。
すなわちこの器官は肉体のセントラルコントロール上非常に重要なものです。
この下垂体に生じる腫瘍によって発症するEDが今回のメインテーマなのですが、 実はこのED/勃起不全という病気は非常に広範な原因によって発症する性機能障害です。
EDの原因の総体は基本的には肉体の老化に伴うものと考えるのが自然と思われますが、 じつはEDは疾病性にも発生しやすく、高血圧・糖尿病などの生活習慣病、 前立腺肥大などの骨盤内の疾患、交通事故や腫瘍などによる脊髄の障害、 甲状腺機能障害などのホルモン分泌バランスの影響など、 数多くの疾病性の原因がEDには有ります。
こうした疾病性のED原因の中に下垂体腫瘍が有り、その発症ロジックは詳しくは後述しますが、 その他のED原因疾患に比較してその発症ロジックは、間接的かつ、 若干複雑なものである可能性が検討されています。
本項ではこの下垂体腫瘍に関して、またその下垂体腫瘍によるEDの症例に関して、 そして下垂体腫瘍によって発症するEDの発症ロジックに関しての考察を記載しております。 ご参照くださいませ。


【下垂体腫瘍とは】
下垂体腫瘍とは上記のとおり、大脳の真下に存在する内分泌器官である下垂体に出来た腫瘍の事です。
下垂体腫瘍は、その広い定義上はこの器官ならびにこの器官の近傍にできた腫瘍を示しますが、 一般的かつ解剖学的にはトルコ鞍という骨性構造の上に主座を置く腫瘍が、 下垂体腫瘍に相当すると考えられています。
下垂体腫瘍は、その中でもとりわけ最も高頻度な下垂体腺腫がそのほぼ同義として捉えられています。
この下垂体腫瘍は中枢神経の奥深くに存在していますので、 その初期診断上は画像でのみ、その存在を確認する事が出来ます。 つまりレントゲン、CTならびにMRIによる撮影が初期診断上非常に重要と言えます。
下垂体腫瘍の鑑別点としてはトルコ鞍の形状、のう胞の有無、石灰化の有無、 残った下垂体の局在などがそのポイントです。
また下垂体腫瘍は通常の腫瘍のように周囲組織を侵食、圧迫するだけでなく、 機能性の腺腫の場合は、上記したようなホルモンを過剰に分泌する事が有り、 それによる臨床症状をともなう場合が有ります。


【下垂体腫瘍によるEDの症例】
下垂体腫瘍によるED発症の実例として、65歳の男性が視野欠損とEDなどを主訴に受診したケースが有ります。
視野の異常は来院の8か月前から、EDは来院の3か月前から自覚されていたとの事です。
下垂体腫瘍の治療に関しては手術やガンマナイフによる即時性の高い治療を希求した状況ではなく、 経過をしばらく観察出来る状況だったとの事で、その上でEDに関しての治療アプローチをしたとの事です。
その方は男性ホルモン製剤のメチルテストステロンによる補充療法の開始で、 明らかなEDの改善がみられたとの事です。


【下垂体腫瘍によるEDの発症ロジックの考察】
下垂体腫瘍によるED発症のロジックにはいくつかのものが考えられます。
一つは前葉ホルモンであるプロラクチンの機能性腺腫による過剰分泌です。 このプロラクチンは本来は乳汁の分泌調整を図るためのホルモンなのですが、 このプロラクチンが過剰に分泌される事によって性機能にかかわるホルモンの上位ホルモンである、 ゴナドトロピンの分泌が低下する事が有ります。 このゴナドトロピンの分泌低下は男女ともに性腺機能低下症を発現させる恐れが有り、 男性であれば、間接的にEDの発症に大きくかかわります。
またこの器官で通常分泌されている同じく前葉ホルモンである黄体化ホルモンですが、 このホルモンは実は男性ホルモンの主役であるテストステロンの産生を促す作用があり、 本器官の正常構造が腫瘍によって圧迫、機能低下に及んだ場合、 それが黄体化ホルモンの分泌低下に至れば、それは結果として男性のED発症にかかわる可能性が有ります。
一つ目のロジック例であるプロラクチンの高度分泌によるED発症の場合、 プロラクチンの分泌を抑制するメシル酸ブロモクリプチン製剤で症状をコントロールできる可能性が有ります。
しかしどちらのロジック例においても、性腺機能低下によるED発症に最終的に至っているので、 いずれにしてもロジカルには男性ホルモン補充療法が奏功する可能性が示唆されます。
しかし男性ホルモン補充療法はホルモン感受性腫瘍に関してのデメリットを、 消化しきっている状況とは言えず、その適応・施行にはいまだ十分な注意が必要と言えます。
ただ上記の症例に関しては年齢も65歳と御高齢になるので、 EDが加齢性性腺機能低下症候群などの別の原因から発症している可能性も考えられます。 その場合も男性ホルモン補充療法が奏功する可能性が高いので、 同様な改善効果が示されたという状況が考えられます。
また、いずれにしてもEDに関しては バイアグラレビトラシアリスシルデナフィル などのPDE5阻害薬が効果を示す可能性があり、 大がかりなホルモン補充などの加療の前にこれらの勃起改善薬のトライアルする必要性が有ると思われます。
(記載:日本性機能学会専門医-須田隆興)


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