ばいあぐらは新宿ライフクリニック。
【糖尿病と逆行性射精】
生活習慣病である糖尿病が逆行性射精で見つかった事例が有ります。
逆行性射精を主訴に医療機関を受診した患者さんが、
結果としてコントロールが悪い糖尿病を診断され、
これが逆行性射精が引き起こされた主因子であったとの事です。
糖尿病は世界に3.7億人、日本人だけでも1000万人以上存在する、
人類の宿命的な生活習慣病です。
有る患者さんは濃厚な遺伝背景によって、
また有る患者さんは食事などの生活習慣によって、
生活習慣病である糖尿病は発生し、身体を蝕みます。
人類はその誕生以来、食料の安定供給がまさに中心命題でした。
これは人類問わずあらゆる地球上に生きる生物たちの中心命題でも有るとも言えます。
しかし人類はあらゆる地球上の生物から抜きんでて、
農耕や牧畜などの食糧供給の技術開発に成功し、
食料を安定供給させた上で巨大な文明を築き上げる事が出来ました。
農耕が我々の文明の大きな発達を支えた事は、
古代の大きな黎明期の文明のほとんどが大河川の近傍に成立している事からもわかります。
しかし食料の安定供給は人類に新たな試練を課せました。
それは生活習慣病です。文明の発達に伴った運動量の低下と、
食料自給の発達による過剰な食糧摂取は、高血圧や糖尿病、また脂質異常症などの生活習慣病を増大させ、
これら生活習慣病は脳梗塞や心筋梗塞を最終的に引き起こし、数多くの人類を殺しています。
生活習慣病における運動や食事の適正化つまり生活習慣指導は、
まさに欲望のコントロールを基調としたものですが、
これは客観的には人間は食欲などの原始的欲求のコントロールは自発的には無し得ないという、
人間の生物としての限界を提示しています。
これらの生活習慣病はこうした大血管障害以外にも、
人体の機能面を低下させる数多くの合併症の発症に関わり、
特に生活習慣病の中で糖尿病に関してはED/勃起不全や、
今回の中心的テーマである射精障害:逆行性射精などを引き起こす事が有ります。
糖尿病や高血圧などの生活習慣病はその病初期においては自覚症状がほとんど無いので、
健康診断や人間ドックな能動的に疾患があるかどうかを調べるシステムがその検索上必要です。
つまり健康診断や人間ドックなどが介入しなければ、
生活習慣病である糖尿病が人知れず発症し、またどんどん進行していったとしても、
気が付かずに、そのまま生活してしまい、
最終的に取り返しのつかない事態になるケースも間々有ります。
今回、記載させて頂いているテーマは、
そんな症状の希薄な生活習慣病の糖尿病における病初期において、
射精障害である逆行性射精の発生が、
糖尿病発見の契機となった事例が中心です。
ぜひともご参考にされてくださいませ。
【逆行性射精が主訴となって見つかった糖尿病の事例】
症例は33歳と生活習慣病の保有者としては比較的若く、
特に大きな罹病経過はなかったとの事でした。
射精感やオーガズムは有るものの、
ペニスからこれらに伴った精液の射出が見られない状態が段々と進行して来たとの事です。
その他の有意な自覚的症状は見られなかったとの事でした。
医療機関に受診した所、主症状は逆行性射精によるものである事が判明し、
逆行性射精自体は、詳細な検査を施行した上で、
生活習慣病である糖尿病の影響下に発生した可能性が高い事がわかりました。
診断に基づき2型糖尿病と逆行性射精への治療が始まり、
経過を見た所、精液の排出が確認され初め、
2疾患ともどもに順調な治療経過を見たとの事です。
【糖尿病による逆行性射精発生のロジックの考察】
逆行性射精の原因として脊髄損傷、骨盤内手術後、経尿道的前立腺切除術、薬剤性、特発性そして、
今回のメインテーマの一つである生活習慣病の糖尿病が挙げられています。
逆行性射精の発症は基本的には精液の射出における支配神経である下腹神経の障害によって、
発生するとされています。
射精は、その精液の射出時に内尿道括約筋が閉鎖し、
また尿道外括約筋が開放される事で、
体外の方向に精液を射出するベクトルを固定しますが、
下腹神経の障害などによって内尿道括約筋の閉鎖が不十分になると、
体外とは逆方向の膀胱側に精液が射出されてしまう事が有ります。
この状態が逆行性射精であり、本疾患は基本的には上述のごとく神経の障害が根底にあります。
逆行性射精は男性が原因の不妊症である男性不妊症の原因になる事が有ります。
上記した逆行性射精の原因として、
脊髄損傷などは神経障害を引き起こすものとして連想しやすい疾病と思われますが、
それでは何故に糖尿病は逆行性射精を引き起こすのでしょうか?
糖尿病は実は生活習慣病の中で突出して神経障害を引き起こしやすい疾患で、
糖尿病の症状として手足が痺れる事が有るなどと、聞いた事が有るかも知れませんが、
こうした状態も糖尿病による神経障害の一環として出現しております。
糖尿病は下腹神経などの末梢神経を障害して、
それに基づく機能障害を全身的に引き起こします。
【糖尿病を伴う逆行性射精の改善のために】
今回の逆行性射精は糖尿病の血糖コントロールならびに、
逆行性射精に対するアモキサピンの投与によって明らかな改善を見たとの事です。
糖尿病による神経障害は血糖の是正により改善しうる可逆性の状態と、
血糖を是正しても神経障害が改善し得ない不可逆性の状態とが有ります。
今回は逆行性射精の改善すなわち可逆性の状態が確認されているので、
比較的糖尿病の発症から治療に至るまでの時間が短かった可能性が高いと思われます。
すなわち糖尿病による逆行性射精の治療には、
発症早期糖尿病における生活習慣改善に基づいた血糖コントロールがとても大切です。
こうした状態を放置する事によって糖尿病の血糖コントロールが増悪し、
その状態が遷延する事で、神経障害が不可逆性に進展してしまい、
難治の逆行性射精になってしまう事も考えられます。
また現在、逆行性射精自体への治療としては、
イミプラミンやアモキサピンなどが利用される事が多いです。
しかしこれらの薬剤の効果も長期に遷延し、
不可逆化した糖尿病性神経障害には効果的とは言えません。
早期発見、早期治療がなによりも大切です。
written by れびとらは新宿ライフクリニック.