ばいあぐらは新宿ライフクリニック。
【虚血性持続勃起症の緊急治療】
数多く有る泌尿器科の緊急治療を必要とする疾患の中でも、
虚血性持続勃起症は特に迅速な対応を必要とする疾患です。
虚血性持続勃起症とは、4時間以上継続した勃起状態に虚血性つまり高度なうっ血を伴う状態で、
その原因は多数あり、主要な原因因子としては、慢性骨髄性白血病、鎌状赤血球症、飲酒、薬剤などです。
また組織学的には虚血性持続勃起症は静脈性持続勃起症であり、
虚血性でないものは動脈性持続勃起症が相当します。
虚血性持続勃起症はクーリングや圧迫などの保存的かつ低侵襲な治療方法では改善する事が難しく、
陰茎に対する穿刺や直接の注射投薬、ひいては観血的処置つまり小手術的対応が必要になる事が多いです。
何故、緊急治療が虚血性持続勃起症に必要かと申しますと、
虚血性持続勃起症の継続によって、陰茎海綿体の壊死による不可逆性の組織障害が発生し、
海綿体の線維化を伴う重症のED/勃起不全を発症し得るからです。
ちなみに虚血性でない持続勃起症に関しては緊急治療の必要性は高くなく、
虚血性持続勃起症のように観血的な処置をしなくても保存的に対応できる場合が有ります。
また虚血性でない持続勃起症では上記のような不可逆性の組織障害が発生しにくい事も、
その緊急治療の必要性が低い理由の一つです。
虚血性かそうでないかの判断は泌尿器科医の判断が望ましいので、
長時間、性的刺激に関係の無い勃起状態の継続が見れらる場合には、
早々に泌尿器科へ受診して、判定して頂くのがよろしいかと思われます。
基本的に虚血性持続勃起症は痛みを勃起に伴う場合が多いです。
また虚血性持続勃起症の組織の壊死は、疾患発症から6時間で始まるとされています。
故に状態開始から4時間目には泌尿器科医に所見を取ってもらっている状態が望ましいです。
本稿では、この虚血性持続勃起症の障害発生のシステムや緊急治療に関して詳述させて頂いております。
是非ご参照くださいませ。
【虚血性持続勃起症の緊急性】
虚血性持続勃起症は何故、陰茎海綿体などに緊急治療の必要性の高い障害を及ぼすのか?
これは分かり易く説明すると、
みなさんも採血時に腕を駆血帯で巻いて血管をうっ血させて浮き出してもらった記憶が有るかと存じますが、
勃起という生理現象は、これと同様に勃起の神経学的指令に従い動脈が拡張して運び込まれた血液が、
駆血帯では無く、組織学的に脈管が絞扼される事によって、陰茎内にストックされる状態なので、
いわば勃起は生理的に引き起こされたうっ血状態と言えます。
勃起もマイルドな状態においては血液の流出入が保たれていますが、
完全勃起状態においてはこうした血液の流出入がほとんどブロックされてしまうので、
高度なうっ血状態つまり虚血状態になってしまいます。
適正な長さの勃起時間であれば完全勃起であっても、
組織は障害されませんが、それが長時間に及ぶと血液を介して搬入される酸素や栄養などが、
陰茎海綿体などの組織に届かない為、組織壊死を伴う不可逆性の変性を経て線維化が始まります。
線維化した陰茎海綿体は、勃起に必要な血管機能を失ってしまうので、
構造的、物理的問題がベースの重症ED/勃起不全を結果として発症します。
高度な海綿体の線維化を伴うED/勃起不全には、
現行で主流のED/勃起不全治療であるレビトラ
・バイアグラなどの血管拡張薬も効果的とは言えません。
一方で虚血性でない持続勃起症は、血液の流出入が有る程度保たれているので、
虚血性ほどの緊急治療の必要性はありませんし、保存的な治療を試す時間的余裕も有ります。
【虚血性持続勃起症の緊急治療手順】
虚血性持続勃起症と診断された状況においては、すぐに緊急治療への移行が必要です。
その緊急治療は大きく3段階に分かれており、
①脱血、②血管収縮薬の投与、③distal shuntの形成です。
いずれも穿刺や切開が必要になる観血的緊急治療です。
虚血性持続勃起症の緊急治療自体が時間との闘いになるので、
そのメソッドの順位と選択、いわば治療のアルゴリズムは救急科的に進行して行きます。
また、陰茎は神経が過敏な領域になりますので、特に③に関しては十分な疼痛対策が必要です。
①脱血:緊急治療としての脱血は、16~20Gの翼状針を陰茎海綿体に直接穿刺して、
うっ血している血液を抜き出す事で、虚血性持続勃起症の組織学的なテンションを緩和させ勃起状態を改善させます。
②血管収縮薬の投与:これは緊急治療として陰茎に直接、
血管収縮薬(フェニレフリン等)を注射投与する方法で、①脱血にて勃起の改善が見られなかった場合に選択される緊急治療です。
直接投与された血管収縮薬によって海綿体平滑筋が収縮して、
動脈から陰茎への血液の流入が阻害される事により、
勃起の改善を図ります。
③distal shuntの形成:distal shuntは緊急治療として、
亀頭側からshuntつまり瘻孔を形成して、陰茎海綿体にうっ滞する血液を体外に脱血する方法です。
上記①②の処置にて勃起の改善が見られなかった場合に選択される緊急治療です。
distal shuntには様々な術式がありますが、
その中でもT-shunt法は瘻孔の形成も良好、かつ手法も簡便なので、
虚血性持続勃起症の緊急性に見合った治療方法と言えます。
T-shunt法は具体的にはメス(10号円刃)を亀頭より円刃の根本まで挿入した後、
外側へ90度回転させる事で瘻孔を形成します。
disutal shuntにて勃起が改善しない場合には、proximal shuntが検討されます。
written by しありす処方なら新宿ライフクリニック.