ばいあぐらは新宿ライフクリニック。
【早漏のコントロールとセロトニン再取り込阻害薬:SSRIの使用】
早漏のコントロールに抗うつ薬であるセロトニン再取り込阻害薬:SSRIを使用する事で、
射精遅延を引き起こし、早漏を予防するという治療方法が有ります。
本邦においては複数有るセロトニン再取り込阻害薬:SSRIの中で早漏治療に認可が通っているものは一つも無く、
早漏用として設計されたはずの専用セロトニン再取り込阻害薬、
プリリジー:ダポキセチンも日本をはじめアメリカなどで適応が認められませんでした。
これにはセロトニン再取り込阻害薬:SSRIと言う精神治療に特化した専用薬剤を、
良性疾患である早漏に使用するという前提に、本質的な問題が内在している可能性が有ります。
早漏はほとんどのケースにおいては、患者本人の主観に基づく悩みである場合が多いです。
一応、国際性機能学会の基準に従えば、「挿入後1分以内の射精でかつ、
その状態によって苦痛・不満などの悪影響をもたらしている状態」とされていますが、
挿入後射精に至るまでの時間が10分以上でも、本人もしくはパートナーが望むよりも早いタイミングで、
射精に至るようなら、それは「苦痛・不満などの悪影響をもたらしている状態」になってしまいます。
すなわち、早漏の定義を曖昧に広げるなら、本人もしくはパートナーが望む時間の長さ以下で、
射精に至ってしまう状態と言いかえる事も出来るかと思われます。
それが薬剤によって治療すべき事象かどうかはさて置き、
それでは射精に至るまでの時間の長さには社会通念が有るのでしょうか?
殆どの人は実の所、他の人のセックスを良く知ってはいません。
或いは知っていたとしても社会通念的平均値を実感するほどには知らないと思われます。
アダルトビデオは有りますが、あれは男性視点で高度に脚色されたもので、
セックスの一般的実像からはほど遠いものと思われます。
「射精に至るまでの時間的長さ」という社会通念が顕在していない概念だとすると、
逆説的に早漏の解決に非常に大事なのは、
本人そしてパートナーの射精に至る時間なども内包した性行為全体への満足感なのかも知れません。
こうした早漏においてセロトニン再取り込阻害薬:SSRIに期待されている役割とは、
射精の遅延化に他なりません。
こうした射精の遅延化がパートナーの満足に繋がるかはさて置き、
セロトニン再取り込阻害薬:SSRIはもともと副作用として、
性機能面においては射精遅延、勃起障害を引き起こす事が知られておりました。
セロトニン再取り込阻害薬:SSRIの早漏への転用は、
こうした副作用として認知されていたものを逆説的に利用したものです。
しかし仮にセロトニン再取り込阻害薬:SSRIで上手く射精の遅延がみられたとして、
本質的にうつ・パニック障害・強迫性障害・社会不安障害の専用薬剤である、
セロトニン再取り込阻害薬:SSRIによって、
早漏に望まれる効果以外に、精神などへの悪影響は出現するのか?
これは早漏にこの薬剤の使用を検討している人に共通した心配の一つと思われますが、
専門特化された精神治療薬を、精神が健全な人に使用して何ら影響が無いという事にはどうしてもなりません。
すなわち他のあらゆる臨床治療同様に、
セロトニン再取り込阻害薬:SSRIを早漏に使用するのはリスク・ベネフィットに従った判断になります。
また本剤は厚生労働省の早漏使用への認可が無いので、最終的には本人希望の元での適応外処方になります。
【セロトニン再取り込阻害薬:SSRIとは】
それでは抗うつ薬であるセロトニン再取り込阻害薬:SSRIとは、どういったものなのでしょうか?
セロトニン再取り込阻害薬:SSRI出現以前の抗うつ薬のスタンダードである三環系抗うつ薬は、
セロトニンとノルアドレナリンの再取り込みを阻害して抗うつ作用を示すその一方で、
抗コリン作用や抗ヒスタミン作用などによる種々の副作用を引き起こしてしまう傾向が有りました。
しかしセロトニン再取り込阻害薬:SSRIはセロトニン再取り込み阻害作用以外の脳内の他の受容体には作用しないという特徴が有り、
その臨床的有用性を従来の抗うつ薬よりも上げる事に成功しました。
その適応はセロトニン再取り込阻害薬:SSRIに基づく抗うつ作用を基準としており、
うつ、パニック障害、強迫性障害、社会不安障害など、
社会生活を送る上で非常に悩ましい疾患のコントロールに厚生労働省からの認可が出ています。
うつ病に苦しむ数多くの患者さんにとってその誕生はまさに福音でした。
現在もセロトニン再取り込阻害薬:SSRIは精神神経科の専門医師の元で数多く、
上記の適応疾患に使用されています。
とはいえ、専門性の無い医師が気軽にコントロールできる薬剤かと言うと、そこには難しい側面も有り、
セロトニン再取り込阻害薬:SSRIはその使用に伴い攻撃性の上昇や自殺念慮・自殺企図の発生等が、
副作用として出現する可能性が有るとされています。
アメリカではセロトニン再取り込阻害薬:SSRIを使用していた60歳男性が、
妻、娘、孫娘を射殺後に自殺した事件が有り、
その裁判においてはセロトニン再取り込阻害薬:SSRIに80%の責任があると認定されました。
また日本では全日空機のハイジャック、
機長刺殺事件の裁判においてセロトニン再取り込阻害薬:SSRIの部分的影響が認められました。
セロトニン再取り込阻害薬:SSRIの中には、
その添付文書において、本剤の使用によって攻撃性の上昇、
自殺念慮・自殺企図の発生などが有るというリスクを本人家族に医師が説明し、
緊密に連絡を取り合うよう指導の一文が記載されているものが有ります。
このようにセロトニン再取り込阻害薬:SSRIの処方には多岐にわたる対応を必要とする側面が有ります。
【早漏に対してセロトニン再取り込阻害薬:SSRIを使用する上で】
早漏に対してセロトニン再取り込阻害薬:SSRIを使用する上では、
やはり幾つか踏まえなければならない点が有ります。
まず、セロトニン再取り込阻害薬:SSRIが本質的には、
抗うつ作用のある専門性の高い精神治療用薬剤である事を認識し、
これを精神の健全な状態で良性疾患である早漏に本当に使用すべきかどうかを検討する必要が有ります。
そしてその上で、セロトニン再取り込阻害薬:SSRI以外の早漏の治療方法である、
レビトラによる陰茎硬度の上昇やセックス行動療法で、
その治療方法を置換できないか検討する必要が有ります。
セロトニン再取り込阻害薬:SSRI以外の早漏の治療方法に関しては別項に詳述しております。
ご参照くださいませ⇒早漏症治療総論
また、治療目標を定める上ではパートナーと相談する必要が有ります。
上述もしましたが、射精の遅延化が必ずしもパートナーの性的満足に結び付くとは限りません。
そしてセロトニン再取り込阻害薬:SSRIの発生しうる副作用の説明と、
それが発生した場合の対処方法に関して、主治医と良く相談する必要が有ります。
その上で、上記にあるように家族にも主治医から攻撃性の上昇や自殺企図・自殺念慮の発生の可能性に関して、
説明をしてもらい、家族と主治医という緊急連絡のホットラインを設定しておく必要が有ります。
written by しありす処方なら新宿ライフクリニック.