遅延射精の原因や治療に関して


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遅漏はなぜ起きるのか?

【遅延射精】

遅延射精は遅漏とも呼ばれ、これは射精障害に分類される性機能障害の一つです。 この性機能障害カテゴリーは大きく5つほどに分類されます

  1. 逆行性射精
  2. 射精不能
  3. 膣内射精障害
  4. オーガズムの欠如
  5. 射精までの時間の異常

この分類の内、遅延射精は5.射精までの時間の異常に分類されます。 同じくこの時間の異常には早漏も含まれます。 こうした遅延射精などの時間の異常は、 主観的にはとらえやすい疾患と言えますが、 実は客観的にはとらえにくい疾患です。
と申しますのも、この時間の異常と言うのは、 本人が自慰行為もしくは性行為の中で自覚的に感じるもの、 あるいはパートナーが本人との性行為の中で不満足とともに感じるものになるので、 パートナーでない例えば医療従事者が客観的に判断する事が難しい傾向は否めません。
遅延射精に関して本人が自慰行為もしくは性行為の中で感じるものは、 これはあくまで本人の主観であり、 世間的な平均時間と相対比較して感じているものではほぼないと言えるでしょう。
またパートナーが遅延射精であると性行為の中で不満足とともに感じるものは、 人によっては望ましい時間経過である可能性もあり、 これもまたパートナーの主観によって、その事態が問題なのか問題でないのかも変動すると言えます。


極論で言うと遅延射精にてどんなに時間が長くかかったとしても、 本人とそのパートナーがそれに満足していれば、それは疾患であったとしても、 診断したり、治療したりする意味を持ちません。
つまり遅延射精の本質的な問題は、 射精までの時間における本人もしくはパートナーの主観的問題における「不満足」に尽きると思われ、 前提として満足か不満足かという主観的問題に医学的に介入するのは難しい所です。
しかし遅延射精が、大切なパートナーとの関係性に悪影響を及ぼしたり、 また男性が原因となる不妊症つまり男性不妊症の原因になったりと実害をおよぼず場合には、 遅延射精の原因の判定と治療的介入が必要です。
本稿では【遅延射精の原因】・【遅延射精の悪影響】・【遅延射精の判断】・【遅延射精の治療方法】 に関して記載しております。ご参照くださいませ。


【遅延射精の原因】

遅延射精はどのような原因で発症するのでしょうか、 遅延射精の原因を並べますと

  1. [精神的ストレス]:精神的ストレスは実は遅延射精の多数派の原因とされていて、 日常生活や性行為上で感じているストレスが遅延射精の原因となる場合を示しています。
  2. [過剰飲酒]:過剰な飲酒もまた遅延射精を引き起こす可能性があり、 飲酒自体による自律神経の運行などへの悪影響がこれに関わっていると思われます。
  3. [向精神薬服薬]:向精神薬に関しては、向精神薬自体の副作用によって遅延射精が発生する可能性があり、 具体的にはSSRI:三環系抗うつ薬などの副作用に射精障害などの性機能異常が報告されています。
  4. [加齢]:加齢に関しては、加齢性神経機能低下等が遅延射精の原因となってる可能性があります。
  5. [下腹神経障害]:下腹神経障害は性機能に深く関連する神経ですが、 これに対する直接的障害が遅延射精の原因になる事が有ります。

と、このような編成になります。
補足いたしますと向精神薬のSSRIと言う薬剤は、 ノルアドレナリンの再取り込みを阻害する事で抗うつ作用や抗不安作用を示す薬剤です。 世界的に処方頻度が高い抗うつ薬で、その副作用は主に消化器系が中心ですが、 上述したように性機能障害が副作用として出現する場合があります。
(*向精神薬の自己中断は非常に危険ですので、 遅漏で悩まれていても自己判断で向精神薬のコントロールなどは必ずされないようにお願い申し上げます。)
また下腹神経とは骨盤内臓を支配する交感神経で、 勃起などを含めた広範な性機能をコントロールしている神経です。 単独での下腹神経の障害の発生は考えにくく、 糖尿病による合併症としての神経障害や骨盤内手術の影響で発生したものが典型的と言えます。


【遅延射精の悪影響】

遅延射精が存在する事は、挙児希望がなく、 またセックスパートナーがいない場合にはさほどの問題にはならないかと存じます。
ほとんどのケースにおいて自慰行為における遅延射精は、 相対的に自慰が終わるまでの時間が長いだけであり、 自己完結した状況において遅延射精は看過可能である事が多いと思われます。
しかしパートナーがいて、かつその状況にパートナーが不満を持っている場合は、 遅延射精の悪影響が出ていると言え、また遅延射精の過程で勃起不全を併発する、 つまり「中折れ」状態になる場合は性行為の中断を招いてしまう事になり、 パートナーによっては関係性の悪化を招く事もあるかと存じます。
また子作り、挙児希望があって遅延射精が事由となってこれがうまくいかない場合は、 そのカップルにおいては遅延射精が深刻な悪影響を及ぼすと言えます。
このように遅延射精は、そのおかれている状況に応じて、 悪影響の大きさが変動する疾患です。


【遅延射精かどうかの判断】

遅延射精かどうかの判断ですが、実は遅延射精には、 「膣内挿入から何分かかったら診断」と言った明確な基準は未だ医学的コモンセンスとして明らかに存在せず、 医学的に遅延射精自体を正確に診断する事は難しいです。
しかし遅延射精が問題になるかどうかは上記したようにその本人が置かれている状況に応じて変動するので、 遅延射精という診断の正確さはさておき、 遅延射精に対して具体的な対策を検討する必要性があるかどうかは、 上記の遅延射精の悪影響があるかどうかが重要です。
すなわち、治療介入するべきかどうかは、パートナーがいる場合には、 パートナーの意見をくみ取る必要があり、 遅延射精の相談の際はカップルでの受診がその介入上望ましいと思われます。


【遅延射精の治療方法】

遅延射精は上述したように、遅延射精単独で出現するというよりも、 何等かの原因をもって発生する病態です。 故にその治療法の中核をなすのは原因に対するアプローチに他なりません。
遅延射精の治療においては、まずは遅延射精の原因を詳細な生活歴の聞き取りなどを通して推定し、 主たる原因の改善を目指す、つまり原因治療が非常に大切です。


ストレスが遅延射精の原因になっているようであれば、その主体のストレスを突き止め、 いかにそのストレスを回避するか、もしくは自己消化するか、 つまりストレスマネジメントが重要です。


過剰飲酒が遅延射精の原因の主体である場合は、飲酒量の調整がもちろん治療の中核をなします。 ただ1日3合以上の飲酒を継続している常習飲酒家や、 1日5合以上の飲酒を10年以上継続している大酒家等においては、 すでにアルコール依存症の可能性もあり、一朝一夕にこれをコントロールするのは難しく、 むしろ遅漏よりも生命や健康に大きな影響のある過剰飲酒に対して先行して加療すべきとも思われます。 過剰飲酒による遅延射精であれば、過剰飲酒のコントロールが成功すれば、 遅延射精もまた改善する事が期待されます。


向精神薬による副作用が遅延射精の原因の主体である場合は、 メンタルヘルスの主治医と良く相談して、 遅延射精の原因と思われる薬剤を減薬もしくは他剤に切り替えられるかを検討して頂くのが直裁と思われます。 ただし向精神薬の調整は非常に難しく、調整によって思わぬ状況に至る事もあるので、 自己判断での調整は絶対にされないようお願い申し上げます。


また遅延射精自体への行動療法としては、 セマンズ法という性的反応における古典的条件付けを応用した心理療法が施行される事があります。 このセマンズ法はむしろ早漏の改善への施行が主体と言えますが、 早漏に比較して治療は難航するものの遅延射精に対しても施行される事があります。 この場合はパートナーの協力のもとに患者の射精閾値を低くする訓練を、 該当男性の性的興奮を高める工夫を凝らしながら進めると言った内容であり、 性的嗜好が男性によって千差万別であることから、 どのような工夫がなされるかは完全に該当男性に応じてオーダーメイド的なもので、 パートナーの大きな協力が前提となります。
(記載:日本性機能学会専門医-須田隆興)


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