Sildenafil for chronic obstructive pulmonary disease: a randomized crossover trial.
COPD. 2012 Jun; 9(3):268-75. PMID:22360383
Lederer DJ, Bartels MN, Schluger NW, Brogan F, Jellen P, Thomashow BM, Kawut SM
肺高血圧症には、原因の不明な特発性や、呼吸器疾患(間質性肺炎やCOPD(慢性閉塞性肺疾患:慢性肺気腫や慢性気管支炎))、心不全(左心不全)や
血栓症による肺高血圧症などが含まれます。
原因が他疾患による二次性肺高血圧症も含まれています。
特発性肺高血圧症では、ED治療薬としても使用されているバイアグラ(シルデナフィル)やシアリス(タダラフィル)は効果が認められており、
日本でも保険適応となっております。
特発性肺高血圧症以外の二次性肺高血圧症においては、その効果はいかがなのでしょうか。
この論文は、COPDに対する、バイアグラ(シルデナフィル)の効果を検証しております。
運動時に生じる肺高血圧症は、COPDの患者においてしばしば見られる現象であり、COPDにおける運動能の低下させます。
この論文では、バイアグラによる治療が、COPD、慢性肺気腫患者の運動耐容能に対する影響を確認することを目的としてます。
研究は、二重盲検プラセボコントロール-クロスオーバー比較試験となっています。
簡単には、患者と担当医師含め医療従事者に、どのような薬か知らせずに、患者にバイアグラ(シルデナフィル)の実薬と偽薬(プラセボ)を服用していただき、
ある時期に、実薬群、偽薬群を入れ替えて、その効果を判定するという、もっとも信頼できる方法の一つをとっています。
まず、CTで診断した肺高血圧症を有しないCOPD患者10人に対し、これを無作為にバイアグラを1日3回服用する群、プラセボ(偽薬)を服用する群に分け、
4週間服薬とし、その後、1週間休薬期間を設け、今度は、バイアグラ服用群はプラセボ、プラセボ服用群はバイアグラを服薬していただき、
その効果を判定しています。
効果判定は、6分歩行テストと、運動時最大酸素消費量で判断しています。
バイアグラは、プラセボに対し6分歩行テスト、運動時最大酸素消費量ともに改善は認められませんでした。
バイアグラは、肺胞と動脈の酸素勾配を増加させ、症状を悪化させました。そして、生活の質も悪化させています。
有害事象は、バイアグラ服用により、より頻回になっています。
定期的なバイアグラの服用は、肺高血圧症を有しないCOPD患者の運動耐容能に対して、有益な効果をもたらしませんでした。
バイアグラは、残念ながら、ガス交換を悪化させ、生活の質を低下させました。
特発性肺高血圧症は、どちらかと言うと血管の病気であり、肺の病気であるCOPDとは、根本的に異なります。
バイアグラがCOPD患者に有効であるかどうか、非常に興味のあるところであったのですが、今回の報告では、否定的な結果に終わっております。
しかし、COPD慢性肺気腫にバイアグラが有効であったとの報告も、実は存在しています。
COPD慢性肺気腫といっても、その程度は様々です。
今回の報告では、肺高血圧症を呈していない患者を対象にしています。これが、肺高血圧症を呈しているCOPD患者に対象を変えれば、また、
バイアグラの有効性が示されていたかもしれません。
それと対象としている患者数が少なすぎます。少なくとも何百人規模のデータが欲しいところですね。
一般的には、肺高血圧症というと、特発性肺高血圧症を指しますが、一番最初にも述べましたが、
肺高血圧症といっても原因は様々で、ひとくくりにできません。
またの機会に、COPDに対してバイアグラが有効であったという文献を紹介したいと思います。
バイアグラ新宿は新宿ライフクリニック