ザクロジュースはバイアグラの血中濃度を高め持続勃起症を発症させうる



ザクロジュースの摂取とバイアグラ服用で持続勃起症を発症

Priapism, pomegranate juice, and sildenafil: Is there a connection?
Urology annals. 2012 May;4(2);108-10.


ザクロジュースを定期に飲まれている方はいらっしゃいますか?
ザクロに勃起不全EDの改善効果がある(真偽は定かではありませんが)とのことで、ザクロを取られている方もいらっしゃいます。
女性の間では、美容に良いということで、広く食べられています。
今回は、ケースレポートで、バイアグラとザクロジュースの同時摂取により、 バイアグラの効果が増強し、持続勃起症を生じた可能性があるケースが報告されています。


私たちは、バイアグラの服用とザクロジュースを同時に摂取したことにより、 生じたと思われる低流量持続勃起症を報告します。
既往疾患、常用薬、化学薬品や、その他の持続勃起症を引き起こすと考える要素は、 特に認めておりません。
私たちは、患者とその診療に当たる臨床実地医家に、注意を促したいと考えております。
そのメカニズムについても、可能な限り論じたいと思います。

バイアグラは、cGMPの分解を抑制する強力な選択的な薬剤です。
ED治療薬として、世界中で多くの方に処方されています。
バイアグラの副作用として、顔のほてり、めまい、頭痛、頻脈などが挙げられますが、 通常の使用量でかつバイアグラ単独使用時の持続勃起症の副作用報告は、稀であります。
バイアグラを服用するに当たり、ニトログリセリン系薬剤(硝酸剤)α遮断薬、 HIV治療薬(蛋白分解酵素阻害剤)、St. John's wort (西洋弟切草)は、注意すべき薬剤です。
また、チトクロームP450(CYP)3A4を阻害するような、たとえば、マクロライド系抗生剤や イミダゾール系抗真菌剤は、非特異的チトクロームP450(CYP)を阻害するシメチヂンと同様に、 バイアグラの血中濃度を上昇させ、バイアグラの効果を増強します。

ザクロは、ポリフェノールフラボノイドを多く含みます。 このフラボノイドは、抗酸化作用や抗動脈硬化作用を有しています。
このような滋養的な特徴により、HEART-UK や多くのコレステロールに関わる慈善団体は、 心臓に良い食品として、定期的な摂取を推奨しています。
この推奨が、人々にザクロジュースをとるように誘導しています。
バイアグラの服用とザクロジュースの同時摂取による持続勃起症の報告は、文献上初めてであり、 注意喚起のためここに報告します。


【ケース1】
46歳男性。奥様との性行sexの後、5時間持続する疼痛を伴う勃起があり、 救急外来を受診となっています。
この男性は、心因性EDと診断されており、泌尿器科医からバイアグラ50mgを処方されています。
男性はこれを過去30日の間、一日おきに服用し、強力な勃起を得ていました。
性交後には、すぐ怒張した陰茎は委縮していたとの事です。
この男性はまた、精力と活力を改善するために、 ザクロジュースを毎日200mlの摂取をすすめられてもいました。
初めて、ザクロジュースを飲んでバイアグラ50mgを服用した時、 射精後に15分間にわたり勃起が持続しています。
このとき、併用薬やハーブなどは使用していませんでした。
彼には、持続勃起症の既往もなく、陰茎の外傷や薬物中毒の既往もなく、 その他慢性疾患の既往も認めていません。

充血し浮腫んだ、勃起した陰茎は、陰茎海綿体は緊張し、触ると痛みがありました。
尿道海綿体、亀頭は、怒張していませんでした。睾丸や前立腺は正常でした。
肝機能や凝固機能を含む血液検査に、異常を認めませんでした。血球の形の異常も認めていません。
海綿体からは、どす黒い血液が吸引され、吸引した血液の分析の結果、 PHや酸素分圧、二酸化炭素分圧から、静脈血と判断されました。
これは、低流量持続勃起症に一致する所見です。

このケースの場合、鎮痛剤やアイスパック、テルブタリン(β刺激薬)の皮下投与に反応が乏しく、 エピネフリンを2%のリドカインとともに、左右の海綿体に、脱血後に注射を行っています。
陰茎の委縮に15分要しています。

患者は、退院後、持続勃起症の発症は無く、バイアグラを使用する間は、 ザクロは摂取しないように指示されています。
この男性は、バイアグラ50mgの使用を続けていますが、バイアグラにより勃起は、 オーガズム後に、速やかに、委縮しています。


【ケース2、ケース3】
35歳と27歳の男性兄弟。二人は結婚しており、8時間の持続勃起症の後に、救急外来を受診したときは、 その他の服薬はありませんでした。
彼らは、時々オーガズムを得るために、バイアグラ50mgを服用していました。
今回偶然に、自然療法を行う者に、ザクロジュースをとるようにアドバイスを受けていました。
バイアグラ50mgとザクロジュースを同時に摂取した日、彼らは勃起を得ることができましたが、 それが萎えませんでした。
持続勃起症の既往もなく、その他の持続勃起症のリスクもありません。
血液検査の結果は、正常範囲内で、陰茎海綿体は硬く、触ると痛みがありました。 尿道海綿体と亀頭は柔らかな状態でした。

エピネフリンを2%のリドカインとともに海綿体に注射し、10分後に陰茎の委縮を得られています。
反応が速やかなのは、これが薬剤性の持続勃起症であるからです。

彼らは、バイアグラを催淫剤として使用しないよう説明を受け、 その後3カ月のフォローアップ期間中に、持続勃起症の再発は認めていません。


バイアグラを経口投与した場合、速やかに吸収されますが、その生物学的利用率は、 初回通過効果により、およそ40%となります。
これは、年齢や、肝機能、腎機能にも影響されます。
Warrington等は、バイアグラの代謝の79%の多くは、 チトクロームP450(CYP)3A4と残りCYP2C9に依存していると報告しています。
この薬理学的な性質は、相互作用を生じやすくしています。
ザクロジュースは、チトクロームP450を阻害することがわかっております。
これは、グレープフルーツジュースにも言えることです。

今回経験した症例の状況から、症例は、一定の服薬で良好な性機能を得られていましたが、 ザクロジュースと同時に摂取した場合、チトクロームP4503A4による初回通過効果を阻害し、 生物学的利用率が増加した結果として、持続勃起症が発症したと考えられます。
また、ザクロジュース固有のの抗酸化作用が、血管内非由来のNOの生物学的利用率を増加させたり、 血管内皮に直接作用した可能性もあります。
加えて、バイアグラとザクロジュースが相加相乗的に影響し、 持続勃起症を発症したとも考えられます。
ケース2およびケース3で見られたように、 バイアグラとザクロジュースの併用により生じた家族内発生の持続勃起症は、 遺伝的な素因の可能性も示唆しています。
今回のケースでは、拒否されているため、再チャレンジは行っていません。
この問題を明らかにするには、より多くの研究が必要です。
ザクロジュースは、ED改善に推奨されています。
グレープフルーツによるバイアグラの薬理学的な影響は、より以前より注目されています。
多くの薬剤の相互作用が、チトクロームを減弱させたり増強させます。
今回の報告の限界は、再チャレンジがなされてないことと、 血中バイアグラ濃度が調べられていないことです。

この報告は、ザクロジュースとバイアグラの相互作用と、 低流量持続勃起症、合併症とED勃起不全のリスクを低減するために、 速やかな処置が必要であることに、焦点を当てています。
バイアグラを服用する患者に、この相互作用がある可能性を知らせ、 今後、同時摂取に注意すべきであると考えます。
一方、製造メーカーは、患者への情報提供の中に、これを含めるべきであります。
臨床医は、バイアグラを処方する場合は、この相互作用について、知っておくべきです。


バイアグラ処方は新宿ライフクリニック


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