バイアグラ長期服用時における視覚障害についての検討



バイアグラの視覚に関する副作用について

Ocular safety of sildenafil citrate when administered chronically for pulmonary arterial hypertension: results from phase III, randomised, double masked, placebo controlled trial and open label extension
BMJ. 2012; 344: e554.


ED治療の現場で、バイアグラ(シルデナフィル)を毎日、長期に服用する事はまずありませんが、 他の疾患では、連日バイアグラ(シルデナフィル)を服用する必要がある場合がございます。
ここでは、肺高血圧症に対して、バイアグラ(シルデナフィル)を連日服用した場合、 どのような視覚系の副作用が生じるか調べられています。
ED治療で用いた場合にも、当てはめることができると思いますので、ご紹介します。


選択的フォスフォジエステラーゼ5阻害薬(PDE5阻害剤)は、ED治療薬として、広く使用されてきましたが、 最近では、肺高血圧症の治療薬としても使用されています。
バイアグラ(シルデナフィル)は、アメリカ、ヨーロッパ、日本を含み、全世界的に、 肺高血圧症治療薬として認可されています。
このタイプの血管拡張薬は、血液網膜関門を通過可能です。
フォスフォジエステラーゼは、サイクリックGMPのような環状ヌクレオチドを分解させることにより、 血管平滑筋の収縮を引き起こします。
一酸化窒素(NO)は、グアニル酸サイクラーゼの刺激を通じ、サイクリックGMP濃度を増加させ、 そして、フォスフォジエステラーゼPDE5は、サイクリックGMPを加水分解します。
この複合作用が、サイクリックGMP濃度を減少させます。
このフォスフォジエステラーゼPDE5を活性化させ、サイクリックGMPを減少させる作用は、 細胞内のカルシウムとカリウムを増加させ、 血管の収縮と血管平滑筋の増殖と線維化を促進させます。
サイクリックGMP濃度が増加するに伴い、フォスフォジエステラーゼPDE5の阻害は、 血管の増殖を抑制するとともに、全身の血管平滑筋を弛緩させ、血管を拡張させます。
このため、PDE5阻害剤は、肺高血圧症の改善が可能と述べられています。

肺高血圧症は、肺血管抵抗増加するに伴い、肺血流が制限される疾患で、 最終的には右心不全を生じます。
原因は、いまだ完全にはわかっていませんが、血管内皮細胞におけるNO合成酵素の低下、 肺血管、右心室の平滑筋における、 フォスフォジエステラーゼPDE5の増加が関与している考えられてます。

ED治療薬としてバイアグラが全世界的に使用されるにつれて、 バイアグラや他のPDE5阻害剤による全身や視覚系の副作用にも焦点があてられるようになりました。
フォスフォジエステラーゼPDE5は、双極細胞や神経節に発現しているように、 網膜や脈絡叢の血管に発現しています。
バイアグラの視覚系の副作用は、視覚系の血管に対する作用に由来するか、 同時にフォスフォジエステラーゼPDE6をまたがって阻害することによるのか、関心が寄せられました。
フォスフォジエステラーゼPDE6は、網膜の光受容体層に主に発現しており、 フォスフォジエステラーゼPDE5に比較し10倍程度と見積もられています。
最も多く報告されている視覚系の副作用は、用量依存性に生じる、 可逆性の青-緑から青-紫の色帯の視力感度の低下です。
バイアグラでは、光過敏性の増加など、 一過性の網膜の電気生理的な変化が生じると報告されています。
これは、PDE6の阻害による作用とされます。
これ以外の視機能に対する影響は、測定されていません。
羊を対象にした最近の報告では、眼圧が上昇する事が指摘されていますが、 人間では、臨床的に重大な眼圧に対するバイアグラの影響は、報告されていません。

バイアグラ(シルデナフィル)の視覚系の血管に対する影響を報告した研究は、 まだ、一定の結果を得ていません。
いくつかの報告では、血管径や眼球径に対して、僅かな影響または影響がないとしています。
これに対し、他の報告では、バイアグラの経口投与により、血管径や眼球径の拡大を報告しています。
この不一致は、一時的な増加や比較的控え目に変化を測定した場合や、 もしかしたら研究方法、計測方法が異なることに因るかもしれません。
稀な血管性病変として、NAIONや重篤な中心性脈絡網膜症、網膜動脈分枝閉塞、 第Ⅲ神経麻痺の報告も含まれます。

バイアグラ(シルデナフィル)の視機能と眼球への作用と安全性を評価するために、 本研究が行われました。
二重盲検査にて、被験者に分からないように、バイアグラ(シルデナフィル)20mg、40mg、 80mgとプラセボ(偽薬)を12週間経口投与しています。
加えて、容量は初め6週間は分からないように、バイアグラ80mgを服用してもらい、 バイアグラ80mgを服用するグループは、用量設定を偽りました。
追加の試験は、12週間の二重盲検試験が終了したのち、臨床的に必要な20mg-80mgのバイアグラを、 投与量を分かるようにしています。

眼球の安全性(眼球の検査、視機能検査、被験者からの有害事象の報告、研究者による視力障害の問診)は、12週、24週、18か月、1年後に調べられています。
客観的な評価として、眼圧、視機能検査(視力、色覚、視野)は、 全てのグループで、同様な結果でした。
臨床的な有意な変化は、バイアグラを40mg服用群が、対比感度において差を生じたのを除き、 開始時、12週後の比較では、生じておりません。
右目において、開始時、12週時の眼圧が、プラセボに比べ平均0.5mmHg低下していました。
バイアグラ40mg群で0.2mmHg、80mg群で0.1mmHg低下、バイアグラ20mg群において0.3mmHg増加です。
開始時から12週時における対比感度の右目の平均変化は、プラセボ群が0.05低下に対し、 バイアグラ20mg群で0.02の低下しています。
開始時から12週時における視力の低下は、プラセボ群が10%、 バイアグラ20m群が3%と変動に幅があります。
このふたつのグループでは、同様のパーセンテージで、視野の低下を認めています。
研究者は、色覚については、臨床的に有意な差はないと考えてます。
バイアグラ40mg群と80mg群と左目に関する客観的評価は、事実上、差は認めていません。
二重盲検後の服薬量を知らせてからの試験と比較しても、測定結果の差異はありませんでした。
客観的なデータの公開は、多くの被験者が、データを喪失し、研究者たちも、 視覚機能について調べなくなる、18ヶ月後に制限されました。
眼球の有害事象の発生率は、ケースレポート、研究者の報告において、 全ての服薬量で僅かにしかありませんでした。
用量依存性の作用として、彩視症、青色視症、羞明など視覚障害が、 バイアグラ80mg群で報告されています。
(これはED治療で服用される量に一致しますが)
網膜出血は、眼底検査で見つかっています。
その頻度は、バイアグラ服用群で2%、プラセボ群では見つかっていません。
二重盲検後の服薬量を知らせてからの試験期間では4%に見つかっています。

肺高血圧症の患者において、バイアグラ80mg群は、視機能において安全であり、 良好な認容性を示しました。
毎日の服用は、視機能の変化に関係なく、視力、対比視覚、色覚、視野、細隙灯検査、眼底検査、眼圧に、 この試験中は、有害な影響は与えていません。


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