強皮症患者はEDを高率に合併し、程度がより重症であることが多い


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強皮症と勃起不全EDの有病率と治療

Erectile dysfunction is frequent in systemic sclerosis and associated with severe disease: a study of the EULAR Scleroderma Trial and Research group.
Arthritis Res Ther. 2012; 14(1): R37. .


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強皮症とは、膠原病の1種で、膠原病とは、全身性エリテマトーデス、慢性関節リュウマチが代表的ですが、 主に結合組織の異常を来たす、自己免疫性の全身性の疾患です。
強皮症は、血管と血管内皮細胞の障害を来たし、全身性に、組織臓器障害を来たしてゆきます。
血管症状としてはレイノー症状や肺高血圧症、指先の潰瘍が有名ですが、あまり注目されていませんが、 勃起不全EDも高率に発症いたします。
強皮症は女性に多い疾患のため、男性の強皮症の症状としての勃起不全EDは、あまり注目されませんでした。
小規模な研究報告では、男性強皮症患者の勃起不全EDの有病率は、健常者と比較し、さらには、 強皮症以外の自己免疫性疾患患者と比較して、高率であることが指摘されていました。
強皮症患者における勃起不全EDの発症理由は、血管障害に由来するとされており、 陰茎海綿体への血流低下や、全身性の線維化や細胞外器質の増加が原因と考えられています。
この報告は、強皮症男性における勃起不全EDの有病率を明らかにし、その特徴を調べることを目的としています。


2004年から行われている、EULAR Scleroderma Trial and Research (EUSTAR) groupに登録されたのデータベース中の国際勃起機能IIEF5スコアを解析しています。
これに加え、勃起不全の発症時期、ED治療薬の使用について、質問しています。
脂質異常症、糖尿病、脳卒中、喫煙歴、末梢血管疾患、冠動脈疾患など、勃起不全EDを発症する危険因子についても、質問しています。

13カ国22施設からのエントリーがあり、この勃起不全EDの実態を調べる試験に、130名の男性が参加されました。
参加者の多くは非参加者と比較し、改定Rodnan皮膚スコアが増加すると同様に、手指の腫脹、手先の潰瘍を高率に認めています。 しかし、肺拡散能の低下は、認めていません。 肺動脈圧は、統計学的に有意差はありますが、臨床的には、明らかでありませんでした。

130名の参加された強皮症患者のうち、IIEF5スコアが正常であった男性は、わずか23名、17.7%しかいませんでした。
2名は、6カ月の間、一度も性行為セックスを行っていないため、IIEF5スコアも完全に記入できないため、勃起不全EDが存在するか否か判断できてません。
残り、105名(81%)は、勃起不全EDを罹患していました。強皮症患者全体では、 IIEF5スコアの中央値は13であり、強皮症で勃起不全EDの場合、IIEF5スコアの平均値は11です。

一般人口における勃起不全EDを来たす、様々な原因が知られています。
危険因子が心血管系疾患の危険因子と同様であったり、抗うつ薬や抗不安薬などの抗精神病薬や、 抗てんかん薬、利尿薬などの薬剤、飲酒、神経疾患や内分泌疾患、前立腺疾患などです。
今回の被験者は、これらの勃起不全EDの危険因子を、最低1つは有しています。 これら危険因子を複数有している場合も認めています。 高血圧や高コレステロール血症、糖尿病、喫煙などの古典的な心血管系疾患の危険因子の保有率は、強皮症ED患者に多いわけでなく、 アルコールの消費量が有意に多く、有意差はありませんが、うつ病の有病率が高率でした。
IIEF-5スコアが3~7の重症な強皮症ED患者では、アルコール量はむしろ少なく、うつ病の有病率が高率でした。
脳卒中、多発性硬化症、認知症などの中枢神経異常は、強皮症ED患者グループで報告されています。
強皮症ED患者群で、前立腺疾患の有病率が高く、内分泌異常、服用薬剤の影響は、統計学的に有意差はありません。

強皮症で勃起不全EDの群は、そうでない群と比較して、有意に高齢です。
強皮症の罹病期間(レイノー現象が生じてからおよそ7年、レイノー症状以外の症状が出現してからよそ6年)、 両群に有意差はありません。
勃起不全EDの平均発症期間は1.8年であり、重症の勃起不全ED(IIEF5スコア7点以下)は、より長く、中央値で4年です。 多くの強皮症ED患者では、強皮症が発病してから勃起不全EDを発病しており、 90.1%は、レイノー現象が出現した後に勃起不全EDを発症しており、 その他の強皮症症状が発現してから、勃起不全EDが発症したのは82.1%になります。
勃起不全EDの発症は、レイノー現象出現から4.1年後(1.5~8.3年)に認められています。
勃起不全EDの罹病期間は、IIEF5スコアと負の相関を示しています。
IIEFスコアは、強皮症の罹病期間とは相関がなく、1/5の強皮症男性は、強皮症発症から長期間正常な勃起機能を維持しています。

強皮症で非勃起不全ED群の52.4%が、トポイソメラーゼⅠ抗体、セントロメア抗体、 Ul-RNPやRNAポリメラーゼⅢ抗体などの何らかの抗核抗体を有し、勃起不全ED群では、 これらの抗核抗体が69.2%に認められます。
しかし、この差は統計学的に有意なものではありません。
トポイソメラーゼⅠ抗体の陽性率は、両群に差を認めていませんが、その他のセントロメア抗体、 Ul-RNPやRNAポリメラーゼⅢ抗体は、勃起不全ED群で高率となっています。
より重症な臓器障害を有する強皮症では、勃起不全EDの有病率が高率になっています。 強皮症ED群では、改定Rodnan皮膚スコアの点数が高く、筋委縮が高率であり、強皮症腎クリーゼの既往を有したり、 肺高血圧症や拘束性換気障害を多く認めます。 強皮症ED群は、EULAR強皮症活動性スコアが、強皮症正常勃起機能群に比較し、高い点数を示しています。
今回の解析の結果では、年齢のみが、勃起不全EDの予測因子でした。
勃起不全EDの重症度と臓器障害についての解析では、年齢と肺機能が関係していることが分かりましたが、 これらは、肺高血圧症と強皮症の活動性を示す因子でもあります。

105名の強皮症ED患者から、勃起不全ED治療に関する情報が得られています。
72.2%が勃起不全EDに対して、なんらの治療も行っておらず、 残り27.8%がバイアグラシルデナフィル)等の フォスフォジエステラーゼ5阻害剤で治療を行っていました。
バイアグラ(シルデナフィル)が最も多く使用されたED治療薬で、15名のバイアグラ使用者のうち7名は、肺高血圧症を合併しています。
シアリスタダラフィル)は11名の強皮症ED患者が使用しています。 シアリス(タダラフィル)使用者の肺高血圧症合併率は、シアリス(タダラフィル)が肺高血圧症治療の適応承認を受ける前であったため、把握できてません。
2名の中等度ED患者は、アルプロスタジールの海綿体注射を行っており、 3名は、バイアグラ(シルデナフィル)+レビトラバルデナフィル)、バイアグラ(シルデナフィル)+シアリス(タダラフィル)、バイアグラ(シルデナフィル)+アルプロスタジール陰茎海面体注射の併用療法を行っております。 尿道内アルプロスタジール注入や吸引デバイスの利用は認められていません。 2名の患者は、陰茎プロステーシス挿入術を受けており、その1名は、IIEF5スコアの改善を認めましたが、 多発性硬化症を合併した残り1名には効果がありませんでした。

この研究報告では、他の小規模な報告と同等かそれ以上の、強皮症患者における勃起不全EDの有病率を示しました。 これは、強皮症男性では、一般人口に比較して、勃起不全EDの合併率が高率である事示しています。
一般人口を対象とした報告では、完全な勃起不全EDの有病率は、5-15%程度であるとの報告や、 糖尿病では37-75%、脳卒中では48%、高血圧では23-46%、慢性関節リュウマチでは48% に勃起不全EDが合併するとの報告がありますが、今回の強皮症患者における勃起不全EDの有病率は、 これらを凌ぐものです。

さらに、強皮症で勃起不全EDの場合、その重症度が、一般人口に比較し、より重症である事がわかります。 平均のIIEF5スコアは、同年代の一般人口の平均がが21.3であるのに対し、強皮症患者では13.3です。
今回の報告では、1/3の強皮症男性では、重症の勃起不全EDが認められます。 一般人口では、重度の勃起不全EDは8.5%ととする報告があります。
勃起不全EDの原因に糖尿病や高血圧、脳卒中がありますが、これらによる勃起不全EDと比較し、 強皮症男性の勃起不全EDは、より重症です。

多くの強皮症ED患者は、強皮症が発症した後、勃起不全EDを発症しております。 そして、強皮症の早期から(発症後平均2.7年)、勃起不全EDが認められています。
勃起不全EDは、一連の心血管系疾患の重要な前駆症状になりえるのに対し、 強皮症患者における勃起不全EDは、強皮症の予測因子にはなりません。
今回の報告では、強皮症における勃起不全EDの発現には、年齢が独立した危険因子であると断定していますが、 より重要なのは、勃起不全EDの重症度は、拘束性肺疾患、腎血管障害(強皮症腎クリーゼなど)、 肺血管障害(肺高血圧症など)などの強皮症の重症度ともいえる病態と関連があることです。

今回初めて、抗核抗体などの自己抗体と勃起不全EDの関係を解析していますが、 関連は指摘できませんでした。
勃起不全EDを修飾する危険因子として、アルコール消費量がありますが、、強皮症患者に対して注意を促す必要があります。 しかし、アルコールが、勃起不全EDの原因なのか、アルコール摂取量が勃起不全治療の治療戦略の一つになるのか、 勃起不全EDと関係があるのかどうか、断定するに至っておりません。
今回、強皮症患者では勃起不全EDの有病率が高率であり、年齢が危険因子として重要としましたが、 これをより確かなものにするためには、非強皮症の条件をマッチさせた対象群と比較する必要があります。

一般的な勃起不全ED治療のガイドラインでは、ライフスタイルや心因、併用薬剤の問題など、 改善しうる危険因子を軽減する、または、特異的な勃起不全ED治療と同様に重要視することが推奨されています。
今回、強皮症患者の場合、1/5の患者に少なくとも1つ以上のこれら危険因子があることを示しました。 2つ以上危険因子を有した場合、より勃起不全EDである確立が高くなっています。 このため、これら改善しうる危険因子は、一般人口における勃起不全EDの危険因子であるのと同様に、 強皮症患者においても勃起不全EDの危険因子であることが示され、より注目すべき問題である事が示されました。

一般的に、フォスフォジエステラーゼ5阻害剤は、勃起不全ED治療の第一選択薬として使用されますが、 強皮症ED患者におけるバイアグラ(シルデナフィル)の効果は、期待されるものでなかったとされています。 より長時間作用型であるシアリス(タダラフィル)の方が、僅かですが、より評価されています。
勃起不全EDの治療法のオプションである、吸引デバイスや、陰茎海綿体や尿道内へのアルプロスタジールの注入は、 一部の強皮症ED患者にしか使用されておらず、陰茎プロステーシスも同様です。

今回の研究は、代表的な強皮症における勃起不全EDを対象にした大規模なものであります。 得られた結果は意義のあるものですが、制限もございます。 大規模なゆえに、データの標準化を難しくする場合もあります。 また、被験者を選択するに当たり、バイアスが生じる可能性もあります。
うつ病の診断は、内科医が下したものであり、その他の問診による検査などは、行っておりません。

最後に、爪郭の毛細血管顕微鏡検査で認めた変化が、 勃起不全EDと関係していたことが興味深っかたのですが、 多くの被験者を対象にしたものでなかったことを、記載しておきます。


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