バイアグラ、レビトラは、肝血流量を増加し門脈圧を低下させる傾向にある


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バイアグラ、レビトラは肝血流量を増加効果を有する

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ED治療薬は、血管拡張作用を有す薬剤であると、ご紹介してきましたが、 その作用が、肝臓の血流を改善する可能性が指摘されました。
肝臓の血流が改善されると、たとえばですが、肝臓移植時の再還流障害を低減するなど、 肝臓手術の成績の向上が期待できるかもしれません。
さらに、ここでは、門脈圧の増加を認めずに門脈血流の増加を認めているとの事ですので、 肝硬変症の門脈圧亢進症の治療に応用できるかもしれません。
あくまでラットを対象にした基礎研究ですが、興味深いものだったため、一部ご紹介いたします。
バイアグラレビトラの少量の投与は、 全身の循環動態に影響を与えず、肝血流を増加するとのことです。


肝洞様毛細血管は、肝臓の末梢血管抵抗の1/3に影響を及ぼし、内皮細胞、肝実質細胞、星状大食細胞の相互作用により、 制御されています。

一酸化窒素NOは、肝臓の微小血管血流に重要な役割を果たしています。
肝血管抵抗は、全身の血管抵抗と同様に、末梢血管の平滑筋の収縮と弛緩によって制御されています。 一酸化窒素NOは、この抵抗を低下させるように働きます。
また、洞様毛細血管周囲の星状大食細胞(クッパー細胞)は、洞様毛細血管の内皮由来の一酸化窒素NO濃度依存的に、 その緊張を制御しています。
一酸化窒素NOは、血管内皮細胞により生産され、星状細胞のグアニル酸環化酵素を活性化します。 この結果としてcGMPが増加し、星状細胞と洞様毛細血管の緊張を制御する事になります。
この作用は、PDE5によりcGMPが分解され終結されます。

門脈圧亢進症は、肝の正常な構造が破壊され、肝洞様毛細血管周囲の線維化、肝洞様毛細血管の変化により、 肝内の血管抵抗が増加する事により生じます。
血管内皮の一酸化窒素NOの合成が低下すると、星状細胞は、収縮性のある筋芽細胞に変化しますが、 一酸化窒素NO自体は、減少いたします。 肝硬変例における、これらの因子と、増加したPDE5活性は、結果として、肝洞様毛細血管の収縮をもたらします。
一酸化窒素NOの代謝は、肝臓手術時の虚血や再還流障害でも変化いたします。
一部の動物実験では、肝臓の一酸化窒素NOの代謝を変化させる事により、 肝硬変の肝内血管抵抗や門脈圧を減少させることに成功しています。

ED治療薬であるPDE5阻害剤が、肝洞様毛細血管を拡張し、血流を増加させうるか、興味がもたれます。
パイロット試験では、レビトラ(バルデナフィル)が、正常および肝硬変例の門脈血流を増加させ、 門脈圧と肝静脈の圧格差を低下させています。
門脈肺高血圧症の患者においては、PDE5阻害剤であるシアリスタダラフィル)は、 肺動脈圧および門脈圧を低下させたとの報告もあります。
最近では、バイアグラ(シルデナフィル)50mgの服用により、肝臓でのcGMPの産生が増加し、 肝類洞の抵抗を低下を来たすことも報告されています。
肝静脈門脈圧格差は、減少とするとしたものや、変化がなかったとする報告もあります。
動物実験や、ケースレポートでは、これとは反対に圧格差が増大したとするものもあります。

この相反する結果は、大規模臨床試験を行う前に、実験的な調査を行う必要性を示唆しています。
肝硬変例に対して、ED治療薬(PDE5阻害剤)が有効であるとする、適した用量、パラメーターは知られておりません。
そのため、まず、正常なラットを用い、バイアグラ(シルデナフィル)、レビトラ(バルデナフィル)による、肝血流、血管抵抗、 門脈圧、心拍出量などの全身の循環動態同様に肝局所の循環動態を正確に測定し、効果を確認しようと試みられております。

ラットに対し、イソフルレンにて全身麻酔を施行、人工呼吸管理とし、パンクロニウムにて筋弛緩させ、 バイアグラ(シルデナフィル)およびレビトラ(バルデナフィル)を1μg/kg~100μg/kg投与し、循環動態の変化を調べております。

詳細は割愛いたしますが、バイアグラ群およびレビトラ群ともに100μg/kg投与時に最も門脈血流が増加していますが、 10μg/kgの投与時が最も印象的な増加となっています。
門脈圧の変化は、いずれの用量でも、コントロール群に比較し、増加は認められておりません。
バイアグラ10μg/kg群、全てのレビトラ群ともに、全身の体血圧は軽度ながら有意に低下しております。
最も重要な事は、いずれの群でも、心拍数、心拍出量については、投与初期に増加が認められるものの、 その後は、有意な反化を認めないこととしています。

これにより、バイアグラ群もレビトラ群も、全身の循環動態には、大した影響を示していないことが、証明されます。
肝動脈血管抵抗は、バイアグラ1μ/kgを除く、全ての実薬投与群で減少。 これは、肝血流量が増加していることとも一致しています。
門脈血管抵抗も、有意に減少を示しています。
門脈血流は、有意に増加し、バイアグラ10μ/kg群、レビトラ10μ/kg群では、各々24.1%、29.2%の増加を示しています。 実質の肝血流量は、全てのバイアグラ群、レビトラ10μ/kg、100μ/kg群で増加を認めています。
総括すると、バイアグラ、レビトラの投与により、肝動脈および門脈血管抵抗は低下し、これらの血流量は増加を示しています。
最も重要なのは、実薬投与群では、門脈圧の増加は認めず、低下する傾向にあるということとしています。

この報告では、低用量のバイアグラ及びレビトラを使用して、肝と全身の循環動態の変化を精査しています。
結果として、門脈血流、肝動脈血流の増加を指摘し、それぞれの血管抵抗を減弱を認めています。
門脈圧は低下する傾向にあり、平均血圧は軽度低下するが、心拍数、心拍出量は変化せず、肝血流比は増加を認めました。 バイアグラ群、レビトラ群ともに10μ/kgの投与が、全身の循環動態を考慮すると、 肝血流に関しては、この用量が適している可能性があるとしています。

この報告をもってすぐに臨床応用されるわけではございませんが、興味深い報告である事には、変わりがないと思われます。 本邦では、C型肝炎から肝硬変を患っている方が、多数います。 さらには、食生活の欧米化から、脂肪肝からNASH、NAFLDなども増加し、C型肝炎に因らない肝硬変例の増加も考えられております。 肝硬変例では、門脈圧が亢進し、その結果から、食道静脈瘤や痔核からの出血のリスクが高まります。 これを抑制する薬剤は今のところ有効なものが存在しないのですが、ED治療薬の可能性が、こんなところにも見出されています。 様々な事を考え付く研究者達には頭が下がります。 これは基礎研究だとは思いますが、今後の報告を楽しみに待ちたいと思います。


参考文献
Phosphodiesterase-5 inhibitors have distinct effects on the hemodynamics of the liver.
BMC Gastroenterology 2009, 9:69


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