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毛細血管の機能不全とインスリン抵抗性の関係が、様々な報告により指摘されています。
血管内皮からの一酸化窒素NOの合成減弱は、インスリン抵抗性症候群の患者の、インスリンに対する血管反応を低下させる事が示唆されています。
メサコリンにより誘発された一酸化窒素NOは、筋代謝に良好な影響を与えたり、肥満例では、筋の毛細血管血流が増加し、
糖吸収が亢進するとの報告があります。
つまり、一酸化窒素NOを増加させる事が、糖代謝に影響を及ぼすことが示されていますが、メサコリンは、治療薬としての使用はできませんので、
代わりとなる方法が必要です。
ED治療薬はPDE5を阻害する薬剤ですが、これにより一酸化窒素NOの増加をもたらし、血管機能も改善するとされています。
骨格筋代謝におけるPDE5阻害剤(ed治療薬)の効果を示した報告は、僅かにしかありません。
ここでは、選択的PDE5阻害剤であるシアリス(タダラフィル)が、
筋内の毛細血管を増加させ、糖吸収も増加するか否か、閉経後の2型糖尿病女性において検証しています。
ここでは7名の閉経後の2型糖尿病女性を対象とし、男性は除外しています。
55-65歳、BMI27-35、非喫煙者、ヘモグロビンA1c5-7.5%(標準値3.9-5.3%)、特筆すべき合併疾患、既往症が血液検査や身体検査、既往歴から認めないこと、
エストロゲン製剤や硝酸薬、β遮断薬、糖質コルチコイドの服用がない事、などが選択基準となっております。
また、既往疾患等なく、BMI18-25、75gブドウ糖負荷試験にて正常耐糖能、エストロゲンその他の常用薬がない、非喫煙者を、対照群としています。
実験は、一晩の絶食期間を設けた後、朝8時より開始としています。
室温は27度に維持され、被験者は仰向けに横たわったままです。
2型糖尿病女性群では、常用薬は、インスリン注射を除き、前日夕と当日朝分は、服用を控えていただいております。
カテーテルが肘前より右前腕の深部の静脈内に、また、左腕正中動脈にも挿入を行い、深部静脈血と動脈血のサンプルを得ています。
カテーテルは、左前腕の浅い部位に位置する静脈内にも挿入され、サンプリングに使用しています。
プレチスモグラフィーにより、血流の変化を調べています。
被験者は、プラセボ(偽薬)とシアリス20mgのいずれかを傾向服用していただき、4~6週間後に、今度は、初回とは異なった薬剤、
つまり、初回にプラセボを服用した場合はシアリス20mgを、初回にシアリスを服用していた場合はプラセボを服用し検査しています。
いずれの薬剤も、服用1時間前から服用後4時間まで15分おき、または、30分おきに血液サンプルを検査しています。
対照群では、プラセボと比較し、シアリス服用群は、表在静脈の血清グルコース透過率や糖吸収に有意差は認められておりませんでしたが、
2型糖尿病女性群では、これらのパラメーターは有意に増加しています。
シアリス服用群では、いずれにおいても、血流には影響を与えていません。
シアリス服用群とプラセボ群の表在静脈の血清グルコースの透過率の差異は、筋による糖吸収の差と相関していました。
多変量解析によると、表在静脈の血清グルコース透過率の変化量は、糖吸収の独立した予測因子となり、およそ70%がこれにより説明がつくとしています。
その他の測定された交絡因子は、実質この予測に影響を当てず、5%程度の付加的な変化量としています。
血清インスリンレベルは、両群間で有意差はなかったとのことです。
ここでは、シアリスが末梢微小循環を改善し、糖吸収を改善したことを示しています。
この報告は、PDE5阻害剤(ed治療薬)が、糖吸収を増加させる事を証明した初めての試験かもしれません。
この結果は、先に述べたメサコリンによるインスリン抵抗性改善作用と同様の機序かもしれません。
また、高脂質食を与えられたラットに、バイアグラ(シルデナフィル)
を定期的に与えることにより、インスリンシグナルの下流域を活性化することなく、
糖吸収が改善されたとする報告があり、興味がもたれます。
インスリンの作用とは関係のない、何か別の機序があるのでしょうか?
報告者は、改善された毛細血管血流と、筋肉内のサイクリックGMPの増加により、糖吸収が容易になるとしています。
この指摘は、このたびの報告にも当てはまるかもしれません。
メタボリック症候群の女性において、シアリスは、インスリン抵抗性改善作用は軽度であったが、
膵β細胞に影響を与える可能性があるとする報告があります。
代謝に対するシアリスの作用機序は、インスリン分泌とインスリン感受性の両方が関係しているかもしれません。
このたび観察された、表在静脈における透過率の亢進と、糖吸収の亢進の相関は、骨格筋における微小循環反応が糖吸収には重要としている、
先に発表された報告とも一致しています。
滋養する血流が、ブドウ糖の供給を増加させているのかもしれません。
今回の試験では、多変量解析の結果は、血流は、糖吸収に影響してはいません。
それ以上に、毛細血管血流に依存していると考えられます。
今回の試験は、あくまでPDE5阻害が糖尿病に影響を与えるか否か検証した、一つの試験でしかありません。
今後、血管に対する良好な影響があるのか、それとも膵β細胞に対する影響が存在するのか、食後の血糖変化に対しては、どのような影響を及ぼすのか、
様々な検討が必要です、と結ばれてます。
参考文献
Tadalafil increases muscle capillary recruitment and forearm glucose iutake in women with type2 diavetes.
Diabetologia(2010) 53:2205-2208