『ホルモンの問題でEDになる?内分泌性の勃起不全に関わる代表的な4種のホルモンに関して日本性機能学会専門医が解説』

ホルモンの問題によるEDの解説

  • ホルモンの問題でもEDは発症します。
  • そうしたEDを 『内分泌性勃起不全』 と言います。
  • 内分泌性勃起不全に関わる代表的なホルモンは4種です。
  • それは 『テストステロン』 『甲状腺ホルモン』 『インスリン』 『プロラクチン』 です。
  • これらのホルモンに異常がある場合、EDになる事が有ります。


ホルモンの問題でもEDは発症します。


こうした、ホルモンに分泌亢進や低下などの問題があって発症するEDを 『内分泌性勃起不全』 と言います。 内分泌性の勃起不全は、インポテンツ全体の5~35%を占めると言われていて、実は比較的大きな原因の一角を占めています。


こうしたED発症に関わるホルモンは、代表的には 『テストステロン』 『甲状腺ホルモン』 『インスリン』 『プロラクチン』 の4種が有ります。


本稿では、日本性機能学会専門医が内分泌性の勃起不全症に関わる4種のホルモンの問題に関して、 それぞれ解説をしております。


宜しければご一読下さいませ。


<当ページの項目リスト>

  1. 【テストステロン】
  2. 【甲状腺ホルモン】
  3. 【インスリン】
  4. 【プロラクチン】

1.【テストステロン】

テストステロンの問題によるED

テストステロンは男性ホルモンの中心となるホルモンです。 このホルモンは男性の筋肉や認知機能以外にも、男性の性欲や性機能と密接な関わりが有る為、 分泌が低下する等の問題が生じると、EDつまり内分泌性の勃起不全が発症します。


テストステロンの分泌低下は、それを産生する 『精巣の問題』 (原発性性腺機能低下症) に起因する場合と、 テストステロンの分泌を指示するホルモンである 『ゴナドトロピンの問題』 (続発性性腺機能低下症) に起因する場合とに大別されます。


一言に精巣の問題、あるいはゴナドトロピンの問題と言っても、 こうした性腺機能低下症の詳細な原因は、他のホルモンの問題が介在していたりと、とても複雑です。


しかしテストステロンの低下による内分泌性勃起不全症自体は、 シンプルにテストステロンの補充療法で改善する事ができます。 ただテストステロンの補充は、血栓症の増加などの合併症リスクが少なくはないので、 この治療を受ける際はある程度の注意が必要です。


そうした副作用、また治療のコストなどを考えると、 EDの改善だけを主目的とした場合は、 バイアグラなどのPDE5阻害薬の方が導入しやすいという側面も有ります。


2.【甲状腺ホルモン】

甲状腺ホルモンの問題によるED

甲状腺ホルモンとは、糖蛋白や脂質などの代謝促進、また酸素の消費や熱の産生などを促進するホルモンです。 このホルモンの分泌に問題がある場合も、EDつまり内分泌性勃起不全が発症する可能性が有ります。


甲状腺ホルモンの場合は、その分泌が 『低下』 しても (甲状腺機能低下症) 、 『亢進』 しても (甲状腺機能亢進症) 、EDなどの性機能障害が引き起こされる可能性が有ります。


甲状腺機能低下症は、テストステロン分泌を指示するゴナドトロピンの低下によって、
一方、甲状腺機能亢進症は、活性のあるテストステロンの減少によって、
それぞれ別の機序で内分泌性勃起不全の発症に関わります。


甲状腺ホルモンが関連したEDの治療としては、 まずは内分泌内科での甲状腺機能障害自体の治療が優先されます。


甲状腺機能障害の改善・調整には時間がかかる事が多いです。 甲状腺機能障害の状況が落ち着くまでの間は、 EDに関してはバイアグラなどのPDE5阻害薬の併用が検討されます。


3.【インスリン】

インスリンの問題によるED

インスリンは主に血糖の、細胞への分配を指示するホルモンです。 このホルモンの問題の内、
『作用障害』 は内分泌性のEDを引き起こし、
『作用障害そして分泌低下』 は糖尿病の発症から二次的に血管性のEDを引き起こします。


元々、糖尿病は血管性EDの一大原因ですが、 実はインスリンの作用障害である、
『インスリン抵抗性』 という状態は、 この糖尿病とは別の機序から、内分泌性の勃起不全症を引き起こします。


インスリン抵抗性は、テストステロン分泌を指示するゴナドトロピンというホルモンの低下から、 テストステロン分泌の低下を引き起こし、 結果としてホルモンの問題に起因したEDである内分泌性勃起不全を発症させます。


この治療として、 『インスリン抵抗性』 自体は、体脂肪の削減筋肉の増加継続的な持久力運動など、 生活習慣上の工夫から改善する事が可能なので、 インスリンの作用障害に起因する内分泌性勃起不全症の場合、 まずは、こうした生活習慣改善を検討してみましょう。


また上記の生活習慣改善の内、筋肉の増加は、加齢に伴うテストステロンの分泌低下を抑制するとも言われていますので、 内分泌性勃起不全の改善・予防にとっては二重に望ましいとも言えます。


4.【プロラクチン】

プロラクチンの問題によるED

プロラクチンは、女性において母乳の分泌に関わるホルモンですが、実はこのホルモン、男性の体でも分泌されています。 このプロラクチンが男性において過剰分泌などの問題を来すと、 女性化乳房などの身体症状の他に、 内分泌性の勃起不全症も引き起こされてしまいます。


プロラクチンが体内で過剰になってしまうと、脳におけるドーパミン代謝が亢進し、 その結果、テストステロンの産生が低下してしまうので、 結果としてホルモンの問題に起因したED、 すなわち内分泌性の勃起不全が発症します。


男性でプロラクチンの過剰分泌が見られる場合は、 脳の下垂体に腫瘍ができて、それがプロラクチンを過剰生産しているケースがほとんどとされています。


こちらの治療に関して、こうしたホルモンを産生する腫瘍が原因となっている場合、 薬物療法 (ドパミン作動薬) ならびに外科的手術 (下垂体腺腫摘出術) が検討されます。



以上、ホルモンの問題によるED : 内分泌性勃起不全症に関わる代表的な4種のホルモンに関して解説させて頂きました。 ホルモンの問題によってEDが起きている場合、 ホルモンの問題の精査ならびに治療に関しては、保険診療下で内分泌内科にて受ける事が可能ですが、 一方EDに対してのバイアグラなどの勃起改善薬の処方に関しては、保険外での処方になりますので、 くれぐれもご注意くださいませ。



(記載:新宿ライフクリニック-日本性機能学会専門医:須田隆興、最終確認日:2020-07-21)


日本性機能学会専門医証
※日本性機能学会について詳しくはこちら
新宿ライフクリニック院内看板
※新宿ライフクリニックについて詳しくはこちら



 ―このページの内容に関連した記事―