虚血性心疾患とED/勃起不全の関係



虚血性心疾患とED/勃起不全の重要な関連


【虚血性心疾患とED/勃起不全】
心臓病の一つである虚血性心疾患(ischemic heart disease;IHD)とは、 心筋梗塞や狭心症に代表される、心臓の虚血状態によって生じる疾患群です。

心臓の虚血状態とは、心臓を栄養する冠動脈への血液の供給が、著しく不足しているか、もしくは欠如した状態であり、 虚血状態が持続した場合は、組織障害が生じ、最終的には壊死に至ります。
心臓(冠動脈)への血液の供給が足りないという事は、酸素供給が不足していることを意味します。
この虚血性心疾患とEDは、密接な関連があります。


【原因】
虚血性心疾患は、主に、心臓を取り巻く冠動脈の動脈硬化による狭小化により、 心臓への血流が悪くなり発症します。
特に、心臓は生理的に絶えず運動状態の器官になりますので、 他の器官に比べて、酸素の必要量も多くなります。

EDが発生する一因子としても、動脈硬化による血流の悪化が挙げられます。
EDを発症するリスクファクターとして、高血圧・糖尿病・肥満・喫煙・加齢などがございますが、 これらは、そのまま虚血性心疾患を発症する危険因子でもあります。
つまり、ED/勃起不全が発症・進行している人は、 他の人に比べ、虚血性心疾患を発症または合併している可能性が高い、グループであると言えます。


【EDは虚血性心疾患発症前のサイン】
虚血性心疾患を発症する3年くらい前に、EDが発症しやすいとされ、 EDの発症自体が、虚血性心疾患発症前のサインとして活用出来る可能性があります。

その為、高血圧や肥満、喫煙などによる動脈硬化が原因となってEDを発症した人は、虚血性心疾患を警戒して、 心臓病の専門家への受診相談をすると、 虚血性心疾患の発症前に、予防的な対応が出来る可能性があります。

EDの発症原因は、動脈硬化以外にも多数ございますので、EDを発症する方が、必ずしも、 その後に、心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患を発症するわけではございません。
ストレスなどが原因となって発症する 心因性ED や、自律神経障害によって発症する器質性EDは、虚血性心疾患と原因を共有しない事もあります。


【虚血性心疾患と性行為】
往々にして誤解がありますが、バイアグラ、レビトラ、シアリスなどのED治療薬は、 直接的に虚血性心疾患を引き起こすわけではありません。
どちらかと言うと、性行為自体が運動負担となって、虚血性心疾患を引き起こす可能性が高いとされています。

虚血性心疾患の検査に、実際に運動して行う運動負荷試験というのものが有ります。
虚血性心疾患が、安静時は無症状で、運動時に発症しやすい、症状を自覚し易い傾向があるためです。
性行為は早歩きのお散歩~荷物を持って階段を登るのと、同じくらいの運動負荷とされてますので、 この程度の運動負荷で虚血性心疾患が誘発されてしまう方は、 性行為による虚血性心疾患発症の可能性があります。

純然たる性行為をきっかけにした、虚血性心疾患の発症自体は、高率と言うわけでは無く、また、 コントロールされた虚血性心疾患であれば、性行為によって増悪する事も少ないとされます。

興味深いことですが、婚外性交、いわゆる不倫などのセックスである場合、通常のパートナーとのセックスと違って、 心拍数が上昇しやすい傾向があるとされます。
性行為による虚血性心疾患発症の可能性は、通常のセックスに比較して、やや上昇いたします。
コントロールの悪い動脈硬化性疾患をお持ちで、EDに罹患されている方は、 婚外性交には気を付ける必要があると思われます。


【虚血性心疾患治療薬とED治療薬】
上記にてバイアグラ、レビトラ、シアリスなどのED勃起不全治療薬は、 直接的に心筋梗塞などの虚血性心疾患を引き起こす訳ではないと述べましたが、 心筋梗塞などの虚血性心疾患の急性期、慢性期の治療時には、勃起改善薬の使用は、 不都合が生じる事があります。
心筋梗塞などの虚血性心疾患の急性期、慢性期の治療時には、 ニトログリセリンなどの硝酸剤・NO供与剤と呼ばれる、心臓の冠動脈の拡張を目的とした薬剤を使用します。
これらは、バイアグラなどのPDE5阻害薬と呼ばれる勃起薬との相性が悪く、 勃起薬とニトログリセリンなどの硝酸剤・NO供与剤の併用は、降圧効果を増強してしまう可能性がございます。
もちろん、硝酸剤・NO供与剤を現在使用中の方はを使用できませんし、 硝酸剤・NO供与剤を使用していない方でも、勃起薬を使用している時に胸部痛などを感じて、 病院を受診される方は、必ず主治医に勃起療薬使用の旨を伝える必要があります。


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