【にんにく注射と“にんにく”による口臭】
にんにく注射は血管内に投与されても、
実際のにんにくを食べた時みたいに、人を不快にさせるいやな口臭は特に発生する事は有りません。
にんにく注射という医療技術は今や、非常に耳馴れした一般的な保険外診療のコンテンツであり、
その優れた滋養強壮効果は野球選手や芸能人など、
非常にワーカホリックで休みの確保が難しい職種で高い人気が有ります。
この一般に言われる「にんにく注射」の本態はビタミンB1の直接的な血液内への投与になります。
滋養強壮に良いとされる、この薬剤ですが、
ご興味の有る方は多くいらっしゃると思われます。
しかし、その中には口臭が心配でこうした薬剤の投与が出来ないという方も、
いらっしゃるのではないかと思います。
しかし、この薬剤は特に人を不快にさせる口臭の原因にはなりません。
「でも、にんにく注射はにんにくの注射なんだから、匂いそうだよね?」
このように思われる方もいらっしゃるかと思われますが、
この薬剤は、実はその製造上、特ににんにくを摩り下ろして作ったわけでは無く、
また注射による投与、すなわち非経口のビタミンB1摂取になるので、
もともとその摂取方法からも、口臭とは関連が希薄とも言うことが出来ます。
にんにく注射に口臭が発生しない事を説明するにあたっては
「何故に、にんにくで人は不快な口臭を引き起こすのか?」
を解説する事が直截と思われ、本稿ではこうした、にんにくとにんにく注射との違い、
にんにくによる口臭の発生原因、
また、この薬剤投与で口臭が起こらないそのロジックなどに関して記載しております。
どうぞご参照くださいませ。
【にんにく注射といわゆる“にんにく”との違い】
上記にも記載しましたが、にんにく注射とはあくまでも通称であり、
これは特に実際の“にんにく”をすりおろして作ったようなものでは有りません。
それでは、この薬剤はいったい何なのかと申しますと、
その本態は滋養強壮に重要とされるビタミンB1の経静脈による投与の事になります。
こうしたにんにく注射に主に用いられているの有効成分が、
ビタミンB1誘導体のフルスルチアミンという物質になります、
このフルスルチアミンは大量のコカルボキシラーゼを生成して、
激しい肉体疲労時のビタミンB1需要の増大に対して対応する事が出来る優れた有効成分です。
特にビタミンB1は調理時における損失分や
また消化管からの吸収ロスが大きいとされている必須栄養素にて、
消化管を介さない、また調理の必要のない注射による投与は非常に合目的とされています。
ビタミンB1誘導体のフルスルチアミンは禁忌(投与してはいけない状態・状況が禁忌と表現されます)
がほぼ過敏症すなわち、この有効成分へのアレルギーだけが登録されており、
その他に禁忌として指定されている項目が非常に希薄です。
すなわちビタミンB1誘導体のフルスルチアミンは安全域が非常に大きな有効成分と言えます。
一方の野菜の“にんにく”とは、もともとは中央アジア原産のネギ属の多年草であり、
その球根の部分が私たちが常日頃から親しんでいるものになります。
にんにくはビタミンB1を他の野菜類に比較して多量に含んでいると言えますが、
その分量は100㎎中にたった0.2mgくらいと、
にんにく注射が体内に投与できる分量に比べると、その量は微少量と言えます。
つまりにんにく注射と野菜の方との間には、似たような芳香を持つ事、
またにんにく注射も野菜の方も、一般的に滋養強壮に良いとされると言う事、
こうした共通点以外は、ほぼ、まったく違うもの同士と表現する事が出来ます。
【“にんにく”による口臭の原因】
それでは、野菜の方のにんにくによる不快な口臭は何故に発生するのでしょうか?
基本的に口臭は口腔由来のものが約80%と、そのほとんどを占めるとされています。
これは口腔内に残留した食物残渣、また細菌の繁茂などが、
口腔由来の口臭の原因となって発生するとされています。
つまりにんにくによる口臭も、微細な食物残渣が口腔内で引き起こしている可能性が高く、
その原因物質と目されているのがにんにくに内包されるアリシンという物質になります。
アリシンはにんにく内に含有されるアリインという有機化合物が、
にんにくが切断されたりと、調理されていく過程でアリナーゼと呼ばれる酵素によって、
アリシンに変換される事で発生すると言われています。
このアリシンがいわゆるにんにく独特な芳香を放つ為、
こうした微細な物質が口腔内に残留する事で、
人を不快にさせる口臭を作り上げるものと思われます。
【にんにく注射で口臭が発生しないロジック】
にんにく注射は野菜のにんにくの摂食後のように、口腔内にアリシンを残留する事は有りません。
もともとこの治療方法は経口での摂取では無い為に、
口腔内に何か物質を残留させる事が無いとも言えます。
また、にんにく注射には野菜の方のにんにくの口臭原因であるアリシンなどの物質は、
その成分内に内包されておりません。
にんにく注射の芳香はアリシンでは無く、
有効成分のビタミンB1もしくはその誘導体により発生しております。
ビタミンB1の香りとにんにくの香りを比べて嗅いで頂けると直截にわかりますが、
実は似ているようでこれらの香りは、実際には結構違うものです。
にんにく注射をしたときに、お鼻のあたりに、
例の独特な芳香が感じられる事が多々ありますが、
これは血液内に投与したビタミンB1もしくはその誘導体が全身を巡り、
鼻粘膜の血管内を通過するためと思われます。
しかし御本人が鼻で感じているこの香りを、
たとえば同室の方、同席の方は感じていません。
これは、あくまで血管内の出来事なので周囲の方には感じる事が出来ないのです。
ですので、にんにく注射を投与しても、
香りや口臭でその投与を気が付かれる事も特にありません。
安心して新宿ライフクリニックのにんにく注射をお受けくださいませ。
(記載:日本性機能学会専門医-須田隆興)