アボルブ(デュタステリド)はプロペシア以上のAGA男性型脱毛症改善効果を認める



第Ⅱ相臨床試験でみるアボルブのAGAに対する臨床効果

The importance of dual 5a-reductase inhibition in the treatment of male pattern hair loss: Results of a randomized placebo-controlled study of dutasteride versus finasteride
J Am Acad Dermatol 2006;55:1014-23.


先に、アボルブ(デュタステリド)による男性型脱毛症AGAに対する第Ⅲ相臨床試験をアップしておりましたが、 第Ⅱ相臨床試験の結果も知りたいとのお問い合わせがありましたため、アップいたします。
内容は、アボルブとプロペシア(フィナステリド)とどちらが発毛効果があるのか?というものです。
その理由や副作用についても考察されております。
内容は一部割愛しているところもございます。また、当方で解説を付け加えたところもございます。
詳しくは、ご来院頂くか、または、お電話ください。


テストステロンは、もっとも一般的な男性ホルモンですが、頭皮において作用する場合、 5α還元酵素により、テストステロンから、ジヒドロテストステロンDHTに変換される必要があります。
男性型脱毛AGAにおけるジヒドロテストステロンDHTの原因としての重要性は、 先天的に2型5α還元酵素が欠損した男性では、男性型脱毛症が発生しにくいことから、 また、選択的2型5α還元酵素阻害剤であるプロペシア(フィナステリド)により、 発毛が得られることからも、明らかです。
このことからも、男性型脱毛症の中心的な原因物質は、ジヒドロテストステロンDHTであり、 その鍵となる物質は、5α還元酵素といえます。

1型5α還元酵素も、2型同様にテストステロンをジヒドロテストステロンDHTに変換します。
1型5α還元酵素と2型5α還元酵素に違いは、至適pH域の違い、発現部位と組織によって、その発現量が異なることです。
毛包では、1型、2型5α還元酵素が発現しているとされます。
1型5α還元酵素の男性型脱毛症に対する影響は、評価されておりません。

アボルブ(デュタステリド)は、1型2型5α還元酵素のダブルブロック作用を有し、症候性前立腺肥大症に対し、 0.5mg/日の服用が承認されております。
アボルブ(デュタステリド)は、プロペシア(フィナステリド)と比較し、2型5α還元酵素に対し3倍程度の阻害作用、 1型5α還元酵素で100倍程度の阻害作用があると推測されております。


【試験デザイン】
この試験では、1型、2型5α還元酵素のダブルブロックが、男性型脱毛症AGAを改善するかどうか、 服用量別に客観的に評価しています。
この多施設無作為試験は、プロペシア(フィナステリド)とプラセボ(偽薬)と、 4段階の服用量を設定したアボルブ(デュタステリド)を比較。
頭髪の発毛数と頭皮内の男性ホルモン(テストステロン、ジヒドロテストステロンDHT)を測定しております。

21歳から45歳の、軽度~中等度の男性型脱毛症患者(Ⅲv、Ⅳ(Ⅳa含む)、Ⅴ:Hamilton-Norwood分類)で、、 また、5α還元酵素の服薬歴がないこと、最近6カ月以内に、何らかの脱毛症治療を行っていない男性を対象としています。
全ての男性被験者には、文書での同意を得ており、試験方法は、倫理委員会の承諾を得ております。
この試験は、米国内21施設で実施されました。

被験者をアボルブ(デュタステリド)を0.05mg/日、0.1mg/日、0.5mg/日、2.5mg/日とプロぺシア(フィナステリド)5mg/日、 プラセボ(偽薬)の各群にランダムに振分け、24週間服薬していただいております。
各群あたり45名の被験者を確保するために(トータル270名)、416名の被験者が登録され、ランダムに各群に振り分けられました。
試験期間中は、研究者、被験者には、どの治療群に当たっているかは伏せられています。

ここで、プロペシア(フィナステリド)は、男性型脱毛症AGAにすでに承認されている1mg/日ではなく5mg/日を選択していますが、 この試験が計画されたときに、市販品としてフィナステリド(プロペシア)1mgが利用できなかったためです。
フィナステリド(プロペシア)5mg/日は、1mg/日に比較して、男性型脱毛症に対して、より有効であることが示されています。

【判定法】
一次効果判定は、接写により調べられた、頭髪の増毛数です。
二次効果判定は、頭髪数の測定とベースラインからのエキスパートによるパネル評価、研究者による評価、 被験者による改善評価、modified Hamilton-Norwood分類を用いた病期判定としています。
毛髪数等の判定はは、開始時、12週後、24週後に計測しております。
血清テストステロン濃度、ジヒドロテストステロンDHT濃度を、開始時、12週後、24週後に加え、36週後にも測定しています。
頭皮のテストステロンとジヒドロテストステロンDHT濃度は、開始時と24週後に、組織生検を行い測定しています。
頭頂部の脱毛部位の辺縁、前側頭より組織生検し、採取した組織を撹拌した後、 テストステロンとジヒドロテストステロンDHTを測定しています。

【結果】
416名の参加被験者のうち、390名が12週間、374名が24週間の試験を完了、 平均年齢36.4歳±6.05、91%はコウカサス人、黒人2%、アジア系2%、スペイン系5%です。
脱毛症の病期は、modified Hamilton-Norwood分類で、Ⅲv 41%, Ⅳ31%, Ⅳa 5%, and Ⅴ23%です。
試験から脱落してしまった被験者の、脱落理由ですが、同意の撤回(20名)、副作用(11名)、 追跡困難(6名)、手法違反とその他の理由(5名)です。
試験から脱落してしまった被験者の割合は、各群で有意な差異は認めておりません。
服薬尊守率は、94-99%です。

観測部位(直径1インチ円形)の毛髪数は、902.1~1000.6本で、各群間で有意差は認めておりません。 24週間の試験期間中、プラセボ(偽薬)群では、32.3±59.2本の頭髪の減少を認めています。
デュタステリド(アボルブ)0.1-2.5mg/日とフィナステリド(プロペシア)5mg/日群は、 プラセボに比較して有意に発毛が得られています。

開始時に比べ、プラセボ群が12週後、24週後において-26.5本、-32.3本であるのに対し、 デュタステリド(アボルブ)0.1mg/日群で+55本、+78.5本、0.5mg/日群で+71.3本、+94.6本、 2.5mg/日群で+99.9本、109.6本の増毛を認めています。
フィナステリド(プロペシア)5mg/日群では、52.1本、75.6本の増毛を認めております。
試験開始24週後において、最低でも10%以上の増毛効果が得られた割合は、 プラセボ(偽薬)、デュタステリド0.05mg/日、0.1mg/日、0.5mg/日、2.5mg/日の順で、0%、17%、38%、48%、56%です。
フィナステリド(プロペシア)5mg/日群は、41%に増毛が認められております。

その他の評価結果についてはは割愛いたしますが、大方、同様の結果とお考えください。

血清ジヒドロテストステロンDHT濃度は、プラセボに比較しデュタステリド(アボルブ)群で、容量依存的に有意に低下しており、 24週時のデュタステリド(アボルブ)0.5mg/日、2.5mg/日群で、92%、96.4%低下しています。
デュタステリド(アボルブ)0.1mg/日群で69.8%、フィナステリド(プロペシア)5mg/日群でも73.0%の低下を認めています。
血中ジヒドロテストステロンDHT濃度は、評価部位の頭髪数、頭頂部のパネルによる評価、 研究者の頭頂部の評価と一致しております。
試験終了12週後(試験開始36週)では、デュタステリド(アボルブ)0.05mg/日、0.1mg/日、フィナステリド(プロペシア)5mg/日群では、 開始時と同様の血中濃度示しました。
しかし、デュタステリド(アボルブ)0.5mg/日、2.5mg/日群では、開始の値に、戻っていませんでした。
36週の時点で、開始時の25%にも達せず、25%以上になるまで、およそ2カ月おきに測定をしています。
試験終了後、デュタステリド(アボルブ)0.5mg/日群で86日(71-307日)、2.5mg/日群で、155日(72-421日)要しています。

頭皮のDHT濃度は、デュタステリド(アボルブ)群で、用量依存性に抑制されています。
血清DHTと同様に、デュタステリド(アボルブ)0.1mg/日、フィナステリド(プロペシア)5mg/日群で、 同程度の抑制が認められています。(32%vs41%)
頭皮のDHT濃度は、デュタステリド(アボルブ)0.5mg/日群で51%減少し、2.5mg/日群で79%減少しています。
頭皮のDHT濃度は、評価部位の頭髪数、頭頂部のパネルによる評価、研究者の頭頂部の評価と逆相関を認めています。

【副作用】
プラセボを含むすべて治療群で、すべての副作用、重篤な副作用、副作用による中断の有意な差はありません。
11例が副作用により中断しております。
内訳は、プラセボ(偽薬)群の3例(過敏性腸症候群、勃起不全)、デュタステリド(アボルブ)0.1mg/日群の7例(性欲減退、易疲労、活力減少、感情障害、皮膚異常、外傷、胃腸と神経的な訴え)、デュタステリド0.5mg/日群の1例(胃腸障害と疼痛)です。
一部の被験者で、複数の訴えを有しておりました。
5α還元酵素阻害剤による性機能への影響に関する質問があり、この問題について詳しく調べられております。
性欲減退が、プラセボ群で2例、デュタステリド(アボルブ)0.05mg/日、0.1mg/日群で1例、0.5mg/日群で1例、 2.5mg/日群で9例、フィナステリド(プロペシア)5mg/日群で3例に認めております。
性欲減退を認めたデュタステリド(アボルブ)2.5mg/日群の9例のうち、4例は服薬は継続しており、1例は治療中断3週間後に、 他の1例は治療中断8週間後に改善しています。
1例で、治療後には性欲減退がストップし、被験者自身は、試験による投薬とは関係していないと推測しています。
2例は、試験終了時に、フィナステリド(プロペシア)に変更としましたが、その後の追跡ができませんでした。
9例のうち、副作用で服薬を継続できなかったものは1人もいません。
勃起不全の訴えは、すべての実薬群で発症の増加の報告はありません。
プラセボ群で3例、デュタステリド(アボルブ)0.05mg/日群で2例、フィナステリド(プロペシア)5mg/日群で1例に認めております。
これらの性機能に関する副作用は、多くは軽症~中等症で、デュタステリド0.1mg/日群の1例でのみ、 この副作用(性欲減退)のために服薬を中断しています。

【まとめ】
デュタステリド(アボルブ)は、初めての1型2型5α還元酵素をともに阻害する薬剤であり、 症候性の前立腺肥大症治療薬として承認されております。
フィナステリド(プロペシア)に比べ、およそ3倍の2型5α還元酵素阻害作用を有し、1型5α還元酵素阻害作用は、100倍以上とされております。
フィナステリド(プロペシア)5mg/日群が血清ジヒドロテストステロン濃度を70%程度低下させるのに対し、 デュタステリド(アボルブ)は90%以上の血清ジヒドロテストステロン濃度の低下が可能です。
この第Ⅱ相臨床試験では、容量による効果が調べられ、デュタステリド(アボルブ)2.5mg/日群は、 フィナステリド(プロペシア)5mg/日群よりも、21歳から45歳の男性型脱毛症の頭髪増毛効果があることが示されました。
研究者の評価では、フィナステリド(プロペシア)5mg/日群が、発毛効果発現に24週要したのに対し、 12週後に効果がすでに認められていました。
今回の報告では、男性型脱毛症に対し、デュタステリド(アボルブ)2.5mg/日群(1型2型5α還元酵素阻害剤)でより強力な発毛効果を示せたと言えます。

この試験では、男性型脱毛症の原因として、頭皮のジヒドロテストステロンに注目しております。
デュタステリド(アボルブ)2.5mg/日群は、デュタステリド(アボルブ)0.5mg/日群よりも優れた増毛効果を示しています。
デュタステリド(アボルブ)2.5mg/日群は、0.5mg/日群よりも、 頭皮中のジヒドロテストステロンの優れた抑制効果も認めています(79%vs51%)。
しかし、血清ジヒドロテストステロンの比較では、2.5mg/日群のほうが、若干優れた抑制効果を示すのみです。
デュタステリド(アボルブ)による頭皮ジヒドロテストステロンDHTの用量依存性の抑制効果の違いは、 頭皮の1型5α還元酵素の濃度の違いによると考えられます。
デュタステリド(アボルブ)に比較し、フィナステリド(プロペシア)5mg/日は、頭皮ジヒドロテストステロンDHTを41%しか抑制いたしません。
今回の研究報告は、デュタステリド(アボルブ)の用量依存性のDHT抑制効果が認められております。(0.05mgで26%~2.5mgで79%)
今回の結果では、フィナステリド(プロペシア)5mgは、デュタステリド(アボルブ)0.1mgと同程度のDHT抑制効果を認めています。
また、その他多くの臨床効果が、この2群間で似通っております。
これは、頭皮のDHTの抑制効果が似通っているからと考えます。

デュタステリド(アボルブ)、フィナステリド(プロペシア)ともに、第Ⅱ相臨床試験では、良好な認容性を示しております。
服用量をデュタステリド(アボルブ)を2.5mgへ増量したことによる、新たな副作用も認めておりません。
性的な副作用は重大な関心事項ですが、今回の試験では、勃起不全との因果関係は、明らかになっておりません。
デュタステリド(アボルブ)2.5mg/日群9名で、性欲減退の訴えを認めております(デュタステリド(アボルブ)0.5mg/日群で1名、フィナステリド(プロペシア)5mg/日群で3名)。 フィナステリド(プロペシア)の副作用は、軽度~中等度で、服薬を継続する事により軽減する事が、先の研究で明らかになっております。
デュタステリド(アボルブ)0.5mgの前立腺肥大症による4年間の追跡調査では、良好な認容性を示し、 性的な副作用は少なく、低減してゆく傾向でした。
前立腺肥大症に承認されている容量は0.5mg/日であり、これ以上の高容量を服用した場合の安全性を示すデータは、限られます。
デュタステリド(アボルブ)は、男性型脱毛症AGAには承認されておりませんが、前立腺肥大症で使用された場合に報告された副作用(女性化乳房、精子減少、 チトクロームP450-3A4の抑制による薬剤の相互作用)と比較しても、有益な発毛効果を有すると考えます。(米国におけるアボダート®の添付文書に記載)
血清半減期は、フィナステリド(プロペシア)が6~8時間であるのに対し、デュタステリド(アボルブ)はおよそ4週程度のです。
この半減期の長さは、服薬中止後もジヒドロテストステロンDHTが抑制されていたことからも明らかです。
血中濃度が高いため、服薬中止後最低6カ月は、献血ができません。これは、妊娠中の女性に輸血されてしまうことを防ぐためです。
1型2型5α還元酵素阻害剤であるデュタステリド(アボルブ)の2.5mg/日の服用はは、2型5α還元酵素阻害剤であるフィナステリド(プロペシア)5mg/日と比較し、より早く、より強力に発毛効果を認めました。
デュタステリド(アボルブ)は、一般的には良好な認容性を示します。
今回の試験では、2型5α還元酵素だけでなく1型5α還元酵素の両方をブロックする事は、 男性型脱毛症治療に、さらに有効であることを示しました。


アボルブとプロペシアの併用(ケースレポート)


アボルブ処方は新宿ライフクリニック


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